【R18】前世が良くないもので

mokumoku

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「どこに行っていた」
「す、すみません……ちょっと診療所に」
リベルナが帰宅すると、玄関ホールにちょうど夫がいて話しかけられてしまった。
リベルナは極力自分が占い師のところに行っていたことがバレたくなくて嘘をつく。


いつも彼と会うのはなんだか居心地が悪かったけれど……今はなんだか脇腹が痛むような気さえする。
(前世からの業が深かったからだったのね……)

「医者?体調が悪いのか?呼べばいいだろう」
「あの、定期診断といいますか……結婚前からお世話になっているお医者様がいらっしゃいまして……」リベルナはゾゾゾ……と湧き上がるような怖気に逃げ出してしまいたい気分になった。
前世の記憶のせいだ。
(ああ……今日に限って……なんで会ってしまったのかしら!結婚して1ヶ月……あまりプライベートでは会わなかったのに……)

「……夕食の準備が整っている」
夫はリベルナの頭からつま先までをジロ……と観察すると、興味をなくしたようにホールから出て行った。

(はー……)

リベルナは夫が出ていくのを確認して……肩の力を抜く。
夫のヴェルナー・グレイハルトは聖騎士だ。
リベルナの国は今現在、聖堂が政治を担っているので……聖騎士と言っても彼は肉体派の聖騎士であり、聖なる力……等は恐らくないだろう。


そこで働いているリベルナの夫ヴェルナーはかなりエリートだと言ってもいい。


(それは嫌よね……)
元々のルーツを貴族に持つリベルナとの結婚は……聖騎士のヴェルナーにはかなりの屈辱を伴うものだったであろう。

(かと言って……私に冷たくされても困るのですが……)

リベルナの身体は上位の聖職者の型と一致する部分が多いそうで……結婚前は聖職者のスペアとして全身を捧げることがほぼ決まっていたのだ。
しかしそんなリベルナの身体と同じ遺伝子を増やした方がいい、と判断したのだろうか?直前にヴェルナーと結婚することが決まった。


リベルナは外出着を脱ぎ、室内着に着替えると少し肌寒さを感じたのでカーディガンを羽織る。
ヒールを脱いで室内履きに足を入れると……一気に疲れがどっと押し寄せてきた。

(食堂に行かなきゃ……)

リベルナはソファに横になると少しだけ、のつもりで目を瞑る。




――――――――――――――――


裸にされて神殿に並ぶ。
貴族をルーツに持つ子どもたちは皆、10歳になるとこうして聖職者のために役立つかどうか身体をチェックする。

それを洗礼、なんて呼んでいた。

リベルナは全身をくまなくチェックされ、手首を執拗に確認される。(眩しい……目がつぶれそう)リベルナはそんな風に感じ目を閉じる。


――――――――――――――――


(うーん…………)
リベルナは手首に違和感を感じて目を開けた……
ぼんやりとした思考と暗闇に(夕飯をいただかずに寝てしまった……)と思う。
その時……誰かが自分の手首に触れているのに気付いて……リベルナは飛び起きた。

「な……なんですか?」
暗闇に浮かぶ姿は……夫のヴェルナーだ。
「……それはなんだ」
ヴェルナーはリベルナのブレスレットを指さし言った。かなり怪しんでいる……(何か感じるのかしら……私の前世が知られてしまえば……また殺されてしまうのでは!?無駄死にはいや!)
リベルナはヴェルナーが何やら自分に疑いを持っていることに気付き……冷や汗をかく。

「こ、これは……ブ……ブレスレットです」
「誰に貰った?自分で買ったにしては請求が来ていない」ヴェルナーはリベルナが逃げないようにするためか、手首をガッチリと握りながら顔を寄せてくる。

力が強い……

「お医者様に……け、健康になるブレスレットだと……」
リベルナはヴェルナーを見つめてそう言った。
できるだけ目が泳がないように……

ヴェルナーは目が合うと、ギラギラとした目をリベルナに向けてきたので(キャー……旦那様、深層で私に殺意を抱いているのでは!?前世が悪いせいで……私の!)と顔をそらした。
「……本当だろうな」
リベルナはコクコク頷きながら「ほ、本当です」と必死に肯定する。
(でも私もこのブレスレットの役割はよくわからないし……これ以上疑われたとして、本当のことは答えられないのだけど……)

ヴェルナーは納得したのかしないのか……無言で立ち上がると部屋に灯りをともす。
部屋に明るさが戻ると、テーブルの上に食事が用意されているのにリベルナは気付いた。
(もしかして……旦那様はこれを持ってきてくれたのかしら?)リベルナがお礼を言おうとヴェルナーを見ると、そっぽを向いた彼は「早く食え、使用人が困る」と面倒くさそうに言ったので、リベルナは慌てて食事を摂った。
(ああ……やっぱり仲良くなれない……前世のせい前世のせい。いや……これは私のルーツのせいかしら……)







「す、すみません……遅くなりました」
リベルナは風呂上がり、髪を拭きながらベッドの端に座るヴェルナーに謝罪する。
月経以外毎日の子作りは強制だ。
リベルナとヴェルナーは子どもができるまでは基本毎晩身体を重ねなければならない。

そういう契約だ、と結婚当初にヴェルナーから言われた。恐らく聖堂はリベルナの身体がたくさん欲しいのだ。


「別に待ってない」


ヴェルナーは不機嫌そうに腕を組んだままそう言うとカタカタと貧乏ゆすりをしている。(そ、そうですよね……本当は来ない方がよかったと思われているかも……)リベルナはなんだか自分が自意識過剰な発言をした気がして頬を染める。
(でも私も……本当はあまり乗り気じゃないんだけど……)
お互い乗り気ではないのに子作りはしなければいけない……リベルナは憂鬱な気分になり、内心深いため息をついていた。


「……すみません」






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