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「気を付けて」
ヴェルナーのエスコートを受けてリベルナはコツリと石畳を踏む。「ありがとうございます」
ヴェルナーは耳を赤くするとリベルナの腰を抱き寄せた。
「歩きづらいか」
「いいえ」
リベルナはヴェルナーの言葉にそっと彼に寄り添う。(こんな日が来るなんて……)リベルナはうっとりとヴェルナーを見上げる。すると彼もリベルナを見ていたようで、目が合うと耳を真っ赤に染めた。
「……す、すまん」
「え?だ、大丈夫でございます…………」リベルナも赤くなった頬に手を添えて、俯いた。ヴェルナーは(こちらを見るとは予想外!)と己のデレデレとだらしない顔を引き締めるため、頬の内側の肉を噛みしめる。
ヴェルナーはリベルナが可愛くて可愛くて堪らなかった。ちょうど斜め上から眺めると、彼女の長いまつ毛が瞬きでパサパサ揺れるのが見える。
ヴェルナーはまたデレデレと目尻を下げた。
まあ、他の人から見れば彼の表情はあまり変わっているようには見えなかったのだけれど。
(な……なんて恐ろしい顔をしてらっしゃるのかしら!)
一方リベルナは、己を律するヴェルナーを見て恐れおののいていた。(怒ってらっしゃるのかしら……)リベルナがしょんぼりと身を小さくすると「なんと情けないんだ!俺は!妻が可愛いからと言ってデレデレと!」と大きな声がした。
(え?)
リベルナが声がした方……つまりヴェルナーを見上げると彼もまた、口を押さえて不安げな顔をしている。
リベルナは不思議な気分になり、眉を少し顰めた。
「な……なんだ?思いの丈が強すぎて口に出してしまったのか?」そんな中、ヴェルナーの声が再びする。
それに対してリベルナは目を丸くし、ヴェルナーも顔を青くした。
二人は顔を見合わせて……「な、なんだ?なんだこれは!」とヴェルナーが言ったが……彼の口もとは1ミリも動いてはいない。
「旦那様……」リベルナはヴェルナーを見つめてそう呟く。ヴェルナーは耳を真っ赤にして「なんて可愛らしいんだ。俺の妻が困惑する姿は」と呟くように言ったが、勿論彼の口もとは微動だにしなかった。
「…………」
「可愛らしい……いやいや、そんなことを言ってる場合では」リベルナは耳をそばだてて声の出どころを探す。
それは胸の辺りからしたので、胸に触れる。
「ど、ど、どうしたんだ妻は!きゅ……急に触れてくるとは!」
「え?す、すみません。そんなつもりは……」
次は腹部辺りから声が……
リベルナはプチプチとヴェルナーのシャツのボタンを外す。「妻!?せ、積極的なのは悪くないがここではちょっと……ぐぬぬ……限界だ!早く抱き「や、やめろやめろ!なんだこれは!」
「え!?ち、違います……!誤解です!ごめんなさい」
リベルナがヴェルナーのシャツの前を勢いよく開いた。
ヴェルナーの胸に、口が付いていた。
「……え?」
「どうした妻よ「ギャー!」
口はヴェルナーに気付かれるとスルスルと泳ぐように場所を変え次は腹部辺りで「なんだこれは!」と口をパクパクさせた。
歯もしっかり生え揃い、舌もある。
声が出るということは……恐らく声帯もあるのだろう。
「旦那様……お身体にお口が付いてらっしゃいます」リベルナは少し瞳を揺らしながらヴェルナーを見上げた。正直……怖い。得体の知れないこの状況に……リベルナは恐怖した。
「え?」ヴェルナーが困惑に声を漏らした瞬間「ああ、可愛いなぁ……キスした「おい!やめろやめろ!なんなんだこれは!」下のお口がペラペラと話し出したので、それをかき消すように大きな声を出す。
その時、人の気配にリベルナは慌ててヴェルナーのシャツを閉めた。祭りだからか街にはたくさんの人が集まってくるようだ。
ふ……っと明かりが消えるように街全体が暗くなっていく。日が沈み始めたのだ。
「祭りが……」この祭りのメインは夜、暗闇が訪れてから。「あ、あの……どうしましょう?」リベルナはヴェルナーのボタンを閉めながら尋ねる。
今起きている状況が飲み込めず、手が震えて上手くボタンが閉められない……
「こ、こ、こ、告白をここでしたいから帰りたくないのだが……「頼む……ネタバレをやめてくれ」ヴェルナーはリベルナの手を握り締め、やんわりと止めると自身でボタンをせっせと閉めている。
「え?ふふ……」ボタンを締め終えたヴェルナーに両手を包むように握られて、リベルナはなんだか心が落ち着くのを感じ思わず笑う。
「どうやらこれは本音が飛び出しているのかもしれん「確かにそう思ったが頼むから黙っていてくれ……」腹部から漏れる自分の声に、ヴェルナーは泣きそうな顔をした。
「お腹が本音を話していますか?」リベルナは目をパチパチしながら聞く。「……ん?ま、まあ……「あー!まずい!俺が情けない男だと妻にバレ「ゴホゴホゴホゴホ」ヴェルナーは勝手にペラペラと話し出す声をかき消そうとしているのか、嘘くさい咳を繰り返している。
リベルナはそれを見てクスクス笑う。
いつも寡黙で、何を考えているのかよくわからないヴェルナーが先ほどから本音を話しているのだ、と気付き嬉しくなったのだ。
彼は先ほどから「かわいい」「キスをしたい」とリベルナに対して感じているようだ。
「何を笑っているんだ妻は……かわい「ゴホゴホ」
「ふふ……」
「くそ……余計なことをペラペラ話してしまう……」ヴェルナーは耳を真っ赤にしながら頭を抱えた。
辺りは既に真っ暗になる。
星一つない夜空は、この日だけ特別に訪れる。
月が陰り益々辺りは真っ暗だ。
リベルナはその様子が恐ろしく身を小さくしていると、ヴェルナーが優しく抱き寄せた。
「なんて細くて柔らか「ゴホゴホ」
「ふふ……」
リベルナはそっとヴェルナーに寄り添い、身を寄せる。
「妻よ……」
「旦那様」リベルナがヴェルナーを見上げると「なんて美しく可愛らしいんだ、君は……」とヴェルナーが言った。
隠れていた月が少しずつまた、夜の空を照らし始める。
ヴェルナーはリベルナの前に跪きポケットから小さな箱を出した。
彼が箱を開けるとそこには小さな宝石が付いた指輪が入っていて、リベルナは「……私にですか?」と控えめに尋ねる。ヴェルナーは「ああ」とリベルナを見つめて答えた。
「これを付けてもらえば安心だ!」リベルナがうっとりとヴェルナーを見上げていると、下のお口が不穏なセリフを話し出す。
「え?」
「ゴホゴホゴホゴホ」ヴェルナーが再び嘘くさい咳をしたので、リベルナは少し目を細めて彼を見つめる。
「妻は可愛らしくて心配だからな!」気まずそうに目を逸らすヴェルナーを尻目にお口は饒舌だ。
「え?」
「ゴホゴホゴホゴホ!」
月の光が、まるでスポットライトのように暗闇を照らす。「この指輪さえはめてもらえば――――――モゴモゴ」リベルナはシャツの上からヴェルナーの下のお口を押さえると「……旦那様ご説明を」と彼を見つめた。
「…………」
「私、旦那様から聞きたいです……」リベルナはじっ……っとヴェルナーを見つめた。彼の目が揺れる。
「モゴモゴ」下のお口が何やら言いたげに動いているが、リベルナが押さえた手がそれを言葉にはしなかった。ヴェルナーは眉を寄せ、悩ましげに唸ると少々沈黙した後……観念したように口を開いた。
「…………く……指輪には呪いが込められている」ヴェルナーは非常に言いにくそうに小さな声で言った。リベルナは一瞬ギョッとしたけれど……(今の旦那様を見て……私に何か害を成そうとしているようには見えないわ)と気持ちを整える。
「呪い?わ、私にかかりますか?」リベルナは探るようにヴェルナーの顔を覗き込みながら尋ねた。
「いや」
「いや?」
「君に触れた男が呪われる呪術だ」
ヴェルナーはそう言うと自身の手をリベルナに見せる。
その薬指には指輪がハマっている。
「……あの……?」
「お揃いだ、俺も君以外の女性に触れると相手が呪われる仕様になっている」月明かりに照らされたヴェルナーはギラギラした視線をリベルナに向けている。
「……オリビア様は」リベルナはそんな彼から目が離せない。
「彼女は聖なる力が強いから大丈夫。それに最近は剥がしてから聖食をしているから」ヴェルナーは目をギラギラさせたままリベルナに顔を寄せる。「……なるほど……」リベルナはその目を見つめたまま、そう呟いた。
ヴェルナーのエスコートを受けてリベルナはコツリと石畳を踏む。「ありがとうございます」
ヴェルナーは耳を赤くするとリベルナの腰を抱き寄せた。
「歩きづらいか」
「いいえ」
リベルナはヴェルナーの言葉にそっと彼に寄り添う。(こんな日が来るなんて……)リベルナはうっとりとヴェルナーを見上げる。すると彼もリベルナを見ていたようで、目が合うと耳を真っ赤に染めた。
「……す、すまん」
「え?だ、大丈夫でございます…………」リベルナも赤くなった頬に手を添えて、俯いた。ヴェルナーは(こちらを見るとは予想外!)と己のデレデレとだらしない顔を引き締めるため、頬の内側の肉を噛みしめる。
ヴェルナーはリベルナが可愛くて可愛くて堪らなかった。ちょうど斜め上から眺めると、彼女の長いまつ毛が瞬きでパサパサ揺れるのが見える。
ヴェルナーはまたデレデレと目尻を下げた。
まあ、他の人から見れば彼の表情はあまり変わっているようには見えなかったのだけれど。
(な……なんて恐ろしい顔をしてらっしゃるのかしら!)
一方リベルナは、己を律するヴェルナーを見て恐れおののいていた。(怒ってらっしゃるのかしら……)リベルナがしょんぼりと身を小さくすると「なんと情けないんだ!俺は!妻が可愛いからと言ってデレデレと!」と大きな声がした。
(え?)
リベルナが声がした方……つまりヴェルナーを見上げると彼もまた、口を押さえて不安げな顔をしている。
リベルナは不思議な気分になり、眉を少し顰めた。
「な……なんだ?思いの丈が強すぎて口に出してしまったのか?」そんな中、ヴェルナーの声が再びする。
それに対してリベルナは目を丸くし、ヴェルナーも顔を青くした。
二人は顔を見合わせて……「な、なんだ?なんだこれは!」とヴェルナーが言ったが……彼の口もとは1ミリも動いてはいない。
「旦那様……」リベルナはヴェルナーを見つめてそう呟く。ヴェルナーは耳を真っ赤にして「なんて可愛らしいんだ。俺の妻が困惑する姿は」と呟くように言ったが、勿論彼の口もとは微動だにしなかった。
「…………」
「可愛らしい……いやいや、そんなことを言ってる場合では」リベルナは耳をそばだてて声の出どころを探す。
それは胸の辺りからしたので、胸に触れる。
「ど、ど、どうしたんだ妻は!きゅ……急に触れてくるとは!」
「え?す、すみません。そんなつもりは……」
次は腹部辺りから声が……
リベルナはプチプチとヴェルナーのシャツのボタンを外す。「妻!?せ、積極的なのは悪くないがここではちょっと……ぐぬぬ……限界だ!早く抱き「や、やめろやめろ!なんだこれは!」
「え!?ち、違います……!誤解です!ごめんなさい」
リベルナがヴェルナーのシャツの前を勢いよく開いた。
ヴェルナーの胸に、口が付いていた。
「……え?」
「どうした妻よ「ギャー!」
口はヴェルナーに気付かれるとスルスルと泳ぐように場所を変え次は腹部辺りで「なんだこれは!」と口をパクパクさせた。
歯もしっかり生え揃い、舌もある。
声が出るということは……恐らく声帯もあるのだろう。
「旦那様……お身体にお口が付いてらっしゃいます」リベルナは少し瞳を揺らしながらヴェルナーを見上げた。正直……怖い。得体の知れないこの状況に……リベルナは恐怖した。
「え?」ヴェルナーが困惑に声を漏らした瞬間「ああ、可愛いなぁ……キスした「おい!やめろやめろ!なんなんだこれは!」下のお口がペラペラと話し出したので、それをかき消すように大きな声を出す。
その時、人の気配にリベルナは慌ててヴェルナーのシャツを閉めた。祭りだからか街にはたくさんの人が集まってくるようだ。
ふ……っと明かりが消えるように街全体が暗くなっていく。日が沈み始めたのだ。
「祭りが……」この祭りのメインは夜、暗闇が訪れてから。「あ、あの……どうしましょう?」リベルナはヴェルナーのボタンを閉めながら尋ねる。
今起きている状況が飲み込めず、手が震えて上手くボタンが閉められない……
「こ、こ、こ、告白をここでしたいから帰りたくないのだが……「頼む……ネタバレをやめてくれ」ヴェルナーはリベルナの手を握り締め、やんわりと止めると自身でボタンをせっせと閉めている。
「え?ふふ……」ボタンを締め終えたヴェルナーに両手を包むように握られて、リベルナはなんだか心が落ち着くのを感じ思わず笑う。
「どうやらこれは本音が飛び出しているのかもしれん「確かにそう思ったが頼むから黙っていてくれ……」腹部から漏れる自分の声に、ヴェルナーは泣きそうな顔をした。
「お腹が本音を話していますか?」リベルナは目をパチパチしながら聞く。「……ん?ま、まあ……「あー!まずい!俺が情けない男だと妻にバレ「ゴホゴホゴホゴホ」ヴェルナーは勝手にペラペラと話し出す声をかき消そうとしているのか、嘘くさい咳を繰り返している。
リベルナはそれを見てクスクス笑う。
いつも寡黙で、何を考えているのかよくわからないヴェルナーが先ほどから本音を話しているのだ、と気付き嬉しくなったのだ。
彼は先ほどから「かわいい」「キスをしたい」とリベルナに対して感じているようだ。
「何を笑っているんだ妻は……かわい「ゴホゴホ」
「ふふ……」
「くそ……余計なことをペラペラ話してしまう……」ヴェルナーは耳を真っ赤にしながら頭を抱えた。
辺りは既に真っ暗になる。
星一つない夜空は、この日だけ特別に訪れる。
月が陰り益々辺りは真っ暗だ。
リベルナはその様子が恐ろしく身を小さくしていると、ヴェルナーが優しく抱き寄せた。
「なんて細くて柔らか「ゴホゴホ」
「ふふ……」
リベルナはそっとヴェルナーに寄り添い、身を寄せる。
「妻よ……」
「旦那様」リベルナがヴェルナーを見上げると「なんて美しく可愛らしいんだ、君は……」とヴェルナーが言った。
隠れていた月が少しずつまた、夜の空を照らし始める。
ヴェルナーはリベルナの前に跪きポケットから小さな箱を出した。
彼が箱を開けるとそこには小さな宝石が付いた指輪が入っていて、リベルナは「……私にですか?」と控えめに尋ねる。ヴェルナーは「ああ」とリベルナを見つめて答えた。
「これを付けてもらえば安心だ!」リベルナがうっとりとヴェルナーを見上げていると、下のお口が不穏なセリフを話し出す。
「え?」
「ゴホゴホゴホゴホ」ヴェルナーが再び嘘くさい咳をしたので、リベルナは少し目を細めて彼を見つめる。
「妻は可愛らしくて心配だからな!」気まずそうに目を逸らすヴェルナーを尻目にお口は饒舌だ。
「え?」
「ゴホゴホゴホゴホ!」
月の光が、まるでスポットライトのように暗闇を照らす。「この指輪さえはめてもらえば――――――モゴモゴ」リベルナはシャツの上からヴェルナーの下のお口を押さえると「……旦那様ご説明を」と彼を見つめた。
「…………」
「私、旦那様から聞きたいです……」リベルナはじっ……っとヴェルナーを見つめた。彼の目が揺れる。
「モゴモゴ」下のお口が何やら言いたげに動いているが、リベルナが押さえた手がそれを言葉にはしなかった。ヴェルナーは眉を寄せ、悩ましげに唸ると少々沈黙した後……観念したように口を開いた。
「…………く……指輪には呪いが込められている」ヴェルナーは非常に言いにくそうに小さな声で言った。リベルナは一瞬ギョッとしたけれど……(今の旦那様を見て……私に何か害を成そうとしているようには見えないわ)と気持ちを整える。
「呪い?わ、私にかかりますか?」リベルナは探るようにヴェルナーの顔を覗き込みながら尋ねた。
「いや」
「いや?」
「君に触れた男が呪われる呪術だ」
ヴェルナーはそう言うと自身の手をリベルナに見せる。
その薬指には指輪がハマっている。
「……あの……?」
「お揃いだ、俺も君以外の女性に触れると相手が呪われる仕様になっている」月明かりに照らされたヴェルナーはギラギラした視線をリベルナに向けている。
「……オリビア様は」リベルナはそんな彼から目が離せない。
「彼女は聖なる力が強いから大丈夫。それに最近は剥がしてから聖食をしているから」ヴェルナーは目をギラギラさせたままリベルナに顔を寄せる。「……なるほど……」リベルナはその目を見つめたまま、そう呟いた。
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