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第1章 辺境編
第2話 就職の儀①
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音無静がアスターゼとして転生してから6年の時が流れた。
結論からはっきり言ってしまおう。
この世界は静が暮らしていた地球上の世界ではなく、想像の斜め上を行くファンタジーな世界であった。様々な国家が存在しているのはな同じだが、人間以外にもハイエルフ族やエルフ族、亜人や獣人、魔物、魔獣と呼ばれる知的生物が存在し、生命の多様性は地球以上だと言えよう。更には映画や小説の中でしか見たことのない、魔術などと言う不可思議なものも存在している。
世界は6つの大陸に分かれており、アスターゼはその内の1つオラリオン大陸にあるドレッドネイト王国の辺境の村に暮らす騎士の子供として生まれたのだ。
読み書きを覚えるのは大変であったが、時間だけは十分にあったので何とか現地の言葉を習得することができた。
もちろん現在進行形で勉強中ではあるのだが。
アスターゼがこの世界が地球ではない――所謂異世界だ――と漠然と思い始めたのは、父親のヴィックスに地図を見せてもらった時だ。
どう見ても知っている世界地図とは異なっていたし、世界地図のない国が地球上に存在するのか大いに疑問だったからである。
そして村を訪れた神官が"神聖術"と呼ばれるものを使用した時、それは確信に変わった。
神聖術とは神の奇跡を体現した術式で神官や司祭、司教など聖職に就く者にしか扱えないらしい。主に外傷の治癒が可能で、悪魔や魔神などに特効のダメージを与える術だと言う。
術が発達しているからか、機械のような武器や道具はあるものの、科学は未成熟である。
それと大事なことがもう一つある。
それは、この世界に住む人間は職業と呼ばれる、どこかシステムめいたものに組み込まれているのである。かつての地球に存在した生業としての職業とは少し意味合いが異なり、言わばゲーム的なものを想像してもらえば良いだろう。
村の幼馴染たちと遊ぶ中で、彼らは将来何々になりたい!などと言うのは子供にありがちな言動であるが、この世界ではより現実味を帯びているのだ。
どんな職業が神から与えられるかで将来が決まってしまうと言っても過言ではない重要な要素なのである。
それが、本日行われる就職の儀と呼ばれるものであった。
今現在、この地方の領主の領都コンコールズにある、とある建物の大広間に集められた6歳児たちがこの儀式を受けるところなのである。
今日はスタリカ村からもアスターゼと同い年の7名の子供がその親に連れられて領都を訪れていた。ちなみに、アスターゼの母親ニーナは2歳になる妹ライラの面倒を見る必要があるため来ていない。
「6歳で就職ってブラックってレベルじゃねーぞ……」
アスターゼが思わず呟くと、それを耳聡くも聞きつけた幼馴染のエルフィスが言った。
「ぶらっくって何だよ。アス」
「いや、何でもねーよ。エル。どんな職業になるか心配になっただけだよ」
「はいはーい! あたしは学者さんになりたい~」
少し間延びした声を上げたのは、幼馴染のアルテナだ。
髪は脱色したような感じになっており、仄かな桜色になっている。
アスターゼは、前世で髪を紫に染めたおばちゃんくらいしか見たことがなかったので、彼女の髪色を初めて見た時は思わず二度見してしまった程だ。
辺境とは言ってもこの地方はドレッドネイト王国にとって隣国、テメレーア王国との境界となる重要な場所なので、それなりの兵力と人口が集まっている。
当然、この場にも儀式を受けるために集まった多くの6歳児が、自分の順番を今か今かと待ちわびている様子であった。
その保護者たちは部屋の後方で儀式を見守っている。
「アルテナ、学者なんてつまらねぇよ。ここは格好良く勇者とかになるのがいいんだ」
「え~? 勇者になったら亜人とか魔物とかと戦わなきゃいけないんでしょ? そんなの嫌だよ~」
「男は黙って戦いに向かうんだよ!」
「あたし、男じゃないもん!」
幼馴染の二人がわきゃわきゃと騒いでいる中、いつまで経っても始まらない儀式に会場は騒がしくなっていく。
6歳児に騒ぐなと言う方が無理なのだ。
「静粛に!」
大広間に立派な白い顎鬚を生やした司教がよく通る声を張り上げる。
同時に手に持った錫杖を勢いよく地面に叩きつけると、大きな音が響き渡り、子供たちは皆静かになった。
「これより就職の儀を執り行う。名前を呼ばれた者は前へ来るように」
司教はそう言うと、儀式の説明を始めた。
前の方が良く見えないので、アスターゼは近くにあった台の上に昇ってどんな状況なのか確認しようとする。部屋の前はステージのようになっており、そこには神官たちがズラリと並んでいた。
神官服を着ていない大人もいるようだが、彼らがどんな身分の者なのかまでは分からない。ステージ上には前世で言う魔法陣のような紋様が書かれた何かがあり、そのサークルへ一人ずつ入って儀式を執り行うようだ。
最初の子供の名前が呼ばれ、その子が魔法陣の上に乗った。
そして司教を中心に周囲にいる神官たちが何やら祈り始める。
すると、魔法陣が光り輝いたかと思うと、強烈な光で彼の姿は見えなくなった。
結論からはっきり言ってしまおう。
この世界は静が暮らしていた地球上の世界ではなく、想像の斜め上を行くファンタジーな世界であった。様々な国家が存在しているのはな同じだが、人間以外にもハイエルフ族やエルフ族、亜人や獣人、魔物、魔獣と呼ばれる知的生物が存在し、生命の多様性は地球以上だと言えよう。更には映画や小説の中でしか見たことのない、魔術などと言う不可思議なものも存在している。
世界は6つの大陸に分かれており、アスターゼはその内の1つオラリオン大陸にあるドレッドネイト王国の辺境の村に暮らす騎士の子供として生まれたのだ。
読み書きを覚えるのは大変であったが、時間だけは十分にあったので何とか現地の言葉を習得することができた。
もちろん現在進行形で勉強中ではあるのだが。
アスターゼがこの世界が地球ではない――所謂異世界だ――と漠然と思い始めたのは、父親のヴィックスに地図を見せてもらった時だ。
どう見ても知っている世界地図とは異なっていたし、世界地図のない国が地球上に存在するのか大いに疑問だったからである。
そして村を訪れた神官が"神聖術"と呼ばれるものを使用した時、それは確信に変わった。
神聖術とは神の奇跡を体現した術式で神官や司祭、司教など聖職に就く者にしか扱えないらしい。主に外傷の治癒が可能で、悪魔や魔神などに特効のダメージを与える術だと言う。
術が発達しているからか、機械のような武器や道具はあるものの、科学は未成熟である。
それと大事なことがもう一つある。
それは、この世界に住む人間は職業と呼ばれる、どこかシステムめいたものに組み込まれているのである。かつての地球に存在した生業としての職業とは少し意味合いが異なり、言わばゲーム的なものを想像してもらえば良いだろう。
村の幼馴染たちと遊ぶ中で、彼らは将来何々になりたい!などと言うのは子供にありがちな言動であるが、この世界ではより現実味を帯びているのだ。
どんな職業が神から与えられるかで将来が決まってしまうと言っても過言ではない重要な要素なのである。
それが、本日行われる就職の儀と呼ばれるものであった。
今現在、この地方の領主の領都コンコールズにある、とある建物の大広間に集められた6歳児たちがこの儀式を受けるところなのである。
今日はスタリカ村からもアスターゼと同い年の7名の子供がその親に連れられて領都を訪れていた。ちなみに、アスターゼの母親ニーナは2歳になる妹ライラの面倒を見る必要があるため来ていない。
「6歳で就職ってブラックってレベルじゃねーぞ……」
アスターゼが思わず呟くと、それを耳聡くも聞きつけた幼馴染のエルフィスが言った。
「ぶらっくって何だよ。アス」
「いや、何でもねーよ。エル。どんな職業になるか心配になっただけだよ」
「はいはーい! あたしは学者さんになりたい~」
少し間延びした声を上げたのは、幼馴染のアルテナだ。
髪は脱色したような感じになっており、仄かな桜色になっている。
アスターゼは、前世で髪を紫に染めたおばちゃんくらいしか見たことがなかったので、彼女の髪色を初めて見た時は思わず二度見してしまった程だ。
辺境とは言ってもこの地方はドレッドネイト王国にとって隣国、テメレーア王国との境界となる重要な場所なので、それなりの兵力と人口が集まっている。
当然、この場にも儀式を受けるために集まった多くの6歳児が、自分の順番を今か今かと待ちわびている様子であった。
その保護者たちは部屋の後方で儀式を見守っている。
「アルテナ、学者なんてつまらねぇよ。ここは格好良く勇者とかになるのがいいんだ」
「え~? 勇者になったら亜人とか魔物とかと戦わなきゃいけないんでしょ? そんなの嫌だよ~」
「男は黙って戦いに向かうんだよ!」
「あたし、男じゃないもん!」
幼馴染の二人がわきゃわきゃと騒いでいる中、いつまで経っても始まらない儀式に会場は騒がしくなっていく。
6歳児に騒ぐなと言う方が無理なのだ。
「静粛に!」
大広間に立派な白い顎鬚を生やした司教がよく通る声を張り上げる。
同時に手に持った錫杖を勢いよく地面に叩きつけると、大きな音が響き渡り、子供たちは皆静かになった。
「これより就職の儀を執り行う。名前を呼ばれた者は前へ来るように」
司教はそう言うと、儀式の説明を始めた。
前の方が良く見えないので、アスターゼは近くにあった台の上に昇ってどんな状況なのか確認しようとする。部屋の前はステージのようになっており、そこには神官たちがズラリと並んでいた。
神官服を着ていない大人もいるようだが、彼らがどんな身分の者なのかまでは分からない。ステージ上には前世で言う魔法陣のような紋様が書かれた何かがあり、そのサークルへ一人ずつ入って儀式を執り行うようだ。
最初の子供の名前が呼ばれ、その子が魔法陣の上に乗った。
そして司教を中心に周囲にいる神官たちが何やら祈り始める。
すると、魔法陣が光り輝いたかと思うと、強烈な光で彼の姿は見えなくなった。
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