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第1章 辺境編
第11話 魔物襲来
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ヴィックスは暇なように見えて、実は様々な業務をこなしている。
アスターゼが生まれる前に滞在していた領都からスタリカ村へ赴任してからは、交代番での村の警備、ノーアの大森林付近の見回りと魔物の討伐、村で起こる事件や諍いへの介入や仲裁がそれに当たる。
アスターゼは将来のことについて両親に相談した後、ヴィックスの言う通り、彼を騎士から聖騎士へと転職させた。
自分の状態を確認したヴィックスの喜びようは天を衝かんばかりの勢いで、アスターゼはそんな父親を見たのは初めてのことであった。
ヴィックスが領都へ出かけたのは、その翌日のことであった。
ヴィックスに剣術の稽古をつけてもらっていたアスターゼ、アルテナ、エルフィスは剣術の師匠がいなくなったので、その時間を乱取りに当てていた。
交代でお互い戦い合う。
剣と剣がぶつかり合い火花を散らしていた。真剣でのやり取りだが、誰も手を抜く者はいない。
最近はエルフィスも騎士へと転職して、稽古に加わっていたが、やはりダントツの実力を持つのは聖騎士のアルテナであった。
稽古を始めた当初から聖騎士として剣を振るっているだけあって動きは飛びぬけている。自身も転職できると知ってすぐに騎士へと転職したアスターゼもアルテナに着いて行くのが精一杯だ。そんな感じであるから、エルフィスなどは簡単にあしらわれている。
そんなところに、同い年のコロッサスがやってきた。何やら叫んでいるようだが、余程慌てているようで何を言っているのか分からない。彼は3人の下まで来ると、膝に手を置いて上がった息を整えようとしている。
確か彼の職業は農民だったはずだが、丸々と太った彼にそれ程の体力はないようだ。ゲーム的に言えば、アスターゼの感覚では職業ごとに体力や力などに補正が掛かっているはずなのだ。農民はきつい労働だけあって体力に大きく補正が掛かっているとアスターゼは感じていた。彼は農民に転職したこともあるのだ。
「そんなに急いでどうしたんだ?」
コロッサスとも仲が良いエルフィスが心配そうな声色で尋ねるも息の上がったコロッサスは中々答える素振りを見せない。
と言うか疲労で話せないのだろう。
アスターゼは持っていた皮の水袋を手渡してやるとコロッサスはそれを奪い取るように受け取り、ゴクゴクと一気に流し込む。そしてようやく落ち着きを取り戻したのか、ことの詳細を話始めた。
要約すると、北に広がるノーアの大森林から魔物の群れが押し寄せてきたらしい。ヴィックスが領都へ発ったばかりだと言うのにタイミングが悪いこともあるものだ。
「村に駐屯している守備兵がいるんじゃないのか?」
「皆、森の方へ向かったらしい。戦える者は武器を持って村の入り口に集まるようにだってよ」
「戦えない者は?」
「村の集会所へ集まれって……」
その話からすれば、ニーナはライラを預けて前線へ向かっているだろう。
アルテナ騎士団のメンバーはどうしているだろうかとアスターゼは心配になる。
彼らはまだまだ幼く、団員は10歳以下ばかりなのだ。
「だってさ。アルテナ、行くぞ!」
「うん分かった!」
アルテナは即答する。
彼女も聖騎士としての自覚が出てきたものだ。
「ええ? お前らも行くのか?」
当然のように参戦を決めたアスターゼに驚きの声を上げたのはコロッサスであった。
「当たり前だろ。戦える者は村の入り口に集まれって言ったのはお前だろ?」
「そうだけど……」
「エル、お前はどうする?」
「俺も行くぜ。今の力を試してみたいと思ってたんだ!」
「そう言う訳だ。俺たちは現場へ向かう。お前は避難してろ」
「エルは神官だろ? 危ないんじゃないのか?」
コロッサスはエルフィスが現在、騎士に転職していることなど知らない。
アスターゼとはそれ程、仲は良くないがエルフィスの心配をする辺り悪い奴ではないのかも知れない。
「心配すんなって! じゃあ行こうぜ!」
エルフィスの掛け声と共に三人が村の入り口に向かって走り出した。
コロッサスはただ茫然とそれを見送るのみである。
3人は全力疾走で村内を駆け抜けていく。
1番速いのはアルテナだ。
ゲームのようなパラメータがあるとすれば、恐らく全ての能力が突出しているのは間違いないだろう。
やがて村の入り口にたどり着くと、そこでは村長が大声で指示を飛ばしていた。
その指示に従ってノーアの大森林の方角へ走って行く者、回復薬を運んでいる者など様々だ。普段の姿からは想像もつかないこともあって3人が3人共にポカンとした表情になってしまう。
「お主らッ! どうして来た? 子供は避難しておるがよい!」
「僕たちはいつも父のヴィックスに剣術の稽古を受けています。3人共戦えます!」
「もしかするとノーアの護り神が出たのかも知れん。それにアルテナ以外は戦えまい。特にエルフィス。お主は神官じゃろう?」
「エルについても心配無用です。無理だと判断すれば撤退しますよ。行くぞッ!」
村長の制止を無視してアスターゼは2人に合図を送る。
今までは広大な村内に出没する獣やはぐれの亜人くらいしか相手にしたことはない。
初めての魔物戦にアスターゼは胸の高鳴りを抑えきれなかった。
こんな高揚感はいつ以来だろうか?
武者震いで震える手を握りしめながらアスターゼは森へ向かって走った。
この戦いで、この世界の理解がまた少し進むだろう。
魔物とはどんな存在で、どの程度の強さなのか。
自分がしてきた修行に意味はあって、その強さが魔物に通じるのか。
3人はそれぞれの胸に色々な感情を秘めながら魔物を抑えている守備兵たちの下へと急いだ。
アスターゼが生まれる前に滞在していた領都からスタリカ村へ赴任してからは、交代番での村の警備、ノーアの大森林付近の見回りと魔物の討伐、村で起こる事件や諍いへの介入や仲裁がそれに当たる。
アスターゼは将来のことについて両親に相談した後、ヴィックスの言う通り、彼を騎士から聖騎士へと転職させた。
自分の状態を確認したヴィックスの喜びようは天を衝かんばかりの勢いで、アスターゼはそんな父親を見たのは初めてのことであった。
ヴィックスが領都へ出かけたのは、その翌日のことであった。
ヴィックスに剣術の稽古をつけてもらっていたアスターゼ、アルテナ、エルフィスは剣術の師匠がいなくなったので、その時間を乱取りに当てていた。
交代でお互い戦い合う。
剣と剣がぶつかり合い火花を散らしていた。真剣でのやり取りだが、誰も手を抜く者はいない。
最近はエルフィスも騎士へと転職して、稽古に加わっていたが、やはりダントツの実力を持つのは聖騎士のアルテナであった。
稽古を始めた当初から聖騎士として剣を振るっているだけあって動きは飛びぬけている。自身も転職できると知ってすぐに騎士へと転職したアスターゼもアルテナに着いて行くのが精一杯だ。そんな感じであるから、エルフィスなどは簡単にあしらわれている。
そんなところに、同い年のコロッサスがやってきた。何やら叫んでいるようだが、余程慌てているようで何を言っているのか分からない。彼は3人の下まで来ると、膝に手を置いて上がった息を整えようとしている。
確か彼の職業は農民だったはずだが、丸々と太った彼にそれ程の体力はないようだ。ゲーム的に言えば、アスターゼの感覚では職業ごとに体力や力などに補正が掛かっているはずなのだ。農民はきつい労働だけあって体力に大きく補正が掛かっているとアスターゼは感じていた。彼は農民に転職したこともあるのだ。
「そんなに急いでどうしたんだ?」
コロッサスとも仲が良いエルフィスが心配そうな声色で尋ねるも息の上がったコロッサスは中々答える素振りを見せない。
と言うか疲労で話せないのだろう。
アスターゼは持っていた皮の水袋を手渡してやるとコロッサスはそれを奪い取るように受け取り、ゴクゴクと一気に流し込む。そしてようやく落ち着きを取り戻したのか、ことの詳細を話始めた。
要約すると、北に広がるノーアの大森林から魔物の群れが押し寄せてきたらしい。ヴィックスが領都へ発ったばかりだと言うのにタイミングが悪いこともあるものだ。
「村に駐屯している守備兵がいるんじゃないのか?」
「皆、森の方へ向かったらしい。戦える者は武器を持って村の入り口に集まるようにだってよ」
「戦えない者は?」
「村の集会所へ集まれって……」
その話からすれば、ニーナはライラを預けて前線へ向かっているだろう。
アルテナ騎士団のメンバーはどうしているだろうかとアスターゼは心配になる。
彼らはまだまだ幼く、団員は10歳以下ばかりなのだ。
「だってさ。アルテナ、行くぞ!」
「うん分かった!」
アルテナは即答する。
彼女も聖騎士としての自覚が出てきたものだ。
「ええ? お前らも行くのか?」
当然のように参戦を決めたアスターゼに驚きの声を上げたのはコロッサスであった。
「当たり前だろ。戦える者は村の入り口に集まれって言ったのはお前だろ?」
「そうだけど……」
「エル、お前はどうする?」
「俺も行くぜ。今の力を試してみたいと思ってたんだ!」
「そう言う訳だ。俺たちは現場へ向かう。お前は避難してろ」
「エルは神官だろ? 危ないんじゃないのか?」
コロッサスはエルフィスが現在、騎士に転職していることなど知らない。
アスターゼとはそれ程、仲は良くないがエルフィスの心配をする辺り悪い奴ではないのかも知れない。
「心配すんなって! じゃあ行こうぜ!」
エルフィスの掛け声と共に三人が村の入り口に向かって走り出した。
コロッサスはただ茫然とそれを見送るのみである。
3人は全力疾走で村内を駆け抜けていく。
1番速いのはアルテナだ。
ゲームのようなパラメータがあるとすれば、恐らく全ての能力が突出しているのは間違いないだろう。
やがて村の入り口にたどり着くと、そこでは村長が大声で指示を飛ばしていた。
その指示に従ってノーアの大森林の方角へ走って行く者、回復薬を運んでいる者など様々だ。普段の姿からは想像もつかないこともあって3人が3人共にポカンとした表情になってしまう。
「お主らッ! どうして来た? 子供は避難しておるがよい!」
「僕たちはいつも父のヴィックスに剣術の稽古を受けています。3人共戦えます!」
「もしかするとノーアの護り神が出たのかも知れん。それにアルテナ以外は戦えまい。特にエルフィス。お主は神官じゃろう?」
「エルについても心配無用です。無理だと判断すれば撤退しますよ。行くぞッ!」
村長の制止を無視してアスターゼは2人に合図を送る。
今までは広大な村内に出没する獣やはぐれの亜人くらいしか相手にしたことはない。
初めての魔物戦にアスターゼは胸の高鳴りを抑えきれなかった。
こんな高揚感はいつ以来だろうか?
武者震いで震える手を握りしめながらアスターゼは森へ向かって走った。
この戦いで、この世界の理解がまた少し進むだろう。
魔物とはどんな存在で、どの程度の強さなのか。
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