23 / 44
第1章 辺境編
第23話 領都コンコールズへ
しおりを挟む
結局、コンコルド辺境伯が引き連れて来た兵士の内、およそ一割の二○○名程度が黒魔術士へと転職を果たした。
しかし、魔術士になったからと言ってすぐに魔術が使える訳ではない。
キャリアポイントを消費して魔術を習得する必要があるのだ。
転職時に最初から能力を習得している場合もあるし、キャリアポイントをそこそこ持っている場合もあるようだが、強くなるにはやはり戦闘をこなす必要があるだろう。
ヴィックスに寄れば、コンコルド辺境伯は新しく黒魔術士に転職した兵士たちにノーアの大森林で訓練を積ませる気らしい。
辺境伯は長期間、領都を空けている訳にもいかず帰還すると言うので、スタリカ村に残す兵士はヴィックスと大魔術士のノルン・バルザンドに任せられると言う。
ヴィックスは自分の隊以外の軍勢を任せられて嬉しいのか、やる気に燃えている。
アスターゼはようやく厄介な辺境伯から逃れられるとホッとしていたのだが、静かに歓喜していたところに冷や水をかけられてしまう。
領都コンコールズに着いて来るように言われてしまったのだ。
目的は、魔術士の増強、つまり転職命令である。
一体どこまで魔術士の数を増強するつもりなのかとアスターゼはコンコルド辺境伯の野心に呆れてしまう。
それにこれまでは職業を変えることが不可能な世界であった上、必ず神から授かった職業に就くように厳しく国民を管理してきたドレッドネイト王国である。
今、辺境伯が行っている行為が明るみになれば、国自体と争いになりかねないのでは?と心配になるのだ。
この国の勢力状況が分からないので何とも言えないが、戦争になればヴィックスやニーナを始めアルテナやエルフィスたちの身に危険が及ぶのは間違いないだろう。
しかしそんなことを考えたところでどうにもならない。
ヴィックスに転職士としての将来を相談した時点で、既に降りられない電車へ乗車してしまったようなものだ。
この電車が止まる駅は存在しない。
広場にはヴィックス、ニーナ、ライラ、アルテナ、エルフィス、リュカなどがアスターゼを見送りに来ていた。
「アス、上手く取り入れよ?」
「ははは……僕に野心はありませんよ……」
ヴィックスは息子の栄達を望んでいるようだ。
確かに親子そろって辺境伯の重臣になれば、大きな権力と兵力を持つに至る可能性がある。
「アス、無理はしないようにね」
「分かりました。母さんもお元気で」
ニーナは心配そうな表情をしている。
聡明で情が深い彼女は早くからアスターゼが政治利用されることを恐れていた。
それに本来の巣立つ15歳よりも3年も早い息子の旅立ちである。
寂しい訳がない。
「兄貴、行ってら」
「おう。行ってくる。母さんを頼むぞ?」
「わーってる」
ライラは特に感情を表情に出していない。
あまり愛想のない彼女だが、決して冷たい人間ではない。
アスターゼは彼女がいれば母も大丈夫だろうと思っている。
「アス~行っちゃ嫌だよ~」
「大丈夫。心配しないで。アルテナもいずれ領都に来ることになる。また会えるよ」
アルテナは今にも泣きそうな顔になっている。
アスターゼは彼女に近づくと、その頭を優しく撫でる。
「今生の別れになる訳じゃない」
アルテナはそれを聞いてアスターゼの胸に頭を預けると、そっとその胸に寄り添った。そしてアスターゼにしか聞こえないような声で呟く。
「うん……すぐ行くよ……」
そんな雰囲気を感じて言葉を掛けづらかったのかエルフィスが遠慮がちに話しかける。
「アス、必ず戻れよな」
「ああ、この調子じゃいつになるか分からないけどな。再会するまで元気でな」
「おうよ。その時の俺は神官の職業熟練者だぜ」
相変わらず底なしの笑顔が眩しい男である。
アスターゼは右手を握り拳にして差し出すと、エルフィスはその意図に気付いたのか同様の仕草を見せる。二人の右拳がコツンとぶつかり合うと二人は、ガッシリと手と手を握り合った。
「アスターゼさん、僕はきっと将来世界を変えられるような人間になります! 待っていますよ!」
「ああ、必ずまた会おう」
リュカは寂しいと言うより将来が楽しみな様子である。
彼は頭のキレる子供だ。
将来は有望だろう。
きっとアスターゼの描く未来を助ける存在になるに違いないと思われた。
2人は握手をすると目を合わせてニヤリと笑った。
アスターゼは、辺境伯に「そろそろ出発するぞ」と促され馬車へと向かう。
長い間、暮らしてきた村から出る寂寥感と領都でのこれからに思いを馳せるとアスターゼは馬車へと乗り込んだのであった。
しかし、魔術士になったからと言ってすぐに魔術が使える訳ではない。
キャリアポイントを消費して魔術を習得する必要があるのだ。
転職時に最初から能力を習得している場合もあるし、キャリアポイントをそこそこ持っている場合もあるようだが、強くなるにはやはり戦闘をこなす必要があるだろう。
ヴィックスに寄れば、コンコルド辺境伯は新しく黒魔術士に転職した兵士たちにノーアの大森林で訓練を積ませる気らしい。
辺境伯は長期間、領都を空けている訳にもいかず帰還すると言うので、スタリカ村に残す兵士はヴィックスと大魔術士のノルン・バルザンドに任せられると言う。
ヴィックスは自分の隊以外の軍勢を任せられて嬉しいのか、やる気に燃えている。
アスターゼはようやく厄介な辺境伯から逃れられるとホッとしていたのだが、静かに歓喜していたところに冷や水をかけられてしまう。
領都コンコールズに着いて来るように言われてしまったのだ。
目的は、魔術士の増強、つまり転職命令である。
一体どこまで魔術士の数を増強するつもりなのかとアスターゼはコンコルド辺境伯の野心に呆れてしまう。
それにこれまでは職業を変えることが不可能な世界であった上、必ず神から授かった職業に就くように厳しく国民を管理してきたドレッドネイト王国である。
今、辺境伯が行っている行為が明るみになれば、国自体と争いになりかねないのでは?と心配になるのだ。
この国の勢力状況が分からないので何とも言えないが、戦争になればヴィックスやニーナを始めアルテナやエルフィスたちの身に危険が及ぶのは間違いないだろう。
しかしそんなことを考えたところでどうにもならない。
ヴィックスに転職士としての将来を相談した時点で、既に降りられない電車へ乗車してしまったようなものだ。
この電車が止まる駅は存在しない。
広場にはヴィックス、ニーナ、ライラ、アルテナ、エルフィス、リュカなどがアスターゼを見送りに来ていた。
「アス、上手く取り入れよ?」
「ははは……僕に野心はありませんよ……」
ヴィックスは息子の栄達を望んでいるようだ。
確かに親子そろって辺境伯の重臣になれば、大きな権力と兵力を持つに至る可能性がある。
「アス、無理はしないようにね」
「分かりました。母さんもお元気で」
ニーナは心配そうな表情をしている。
聡明で情が深い彼女は早くからアスターゼが政治利用されることを恐れていた。
それに本来の巣立つ15歳よりも3年も早い息子の旅立ちである。
寂しい訳がない。
「兄貴、行ってら」
「おう。行ってくる。母さんを頼むぞ?」
「わーってる」
ライラは特に感情を表情に出していない。
あまり愛想のない彼女だが、決して冷たい人間ではない。
アスターゼは彼女がいれば母も大丈夫だろうと思っている。
「アス~行っちゃ嫌だよ~」
「大丈夫。心配しないで。アルテナもいずれ領都に来ることになる。また会えるよ」
アルテナは今にも泣きそうな顔になっている。
アスターゼは彼女に近づくと、その頭を優しく撫でる。
「今生の別れになる訳じゃない」
アルテナはそれを聞いてアスターゼの胸に頭を預けると、そっとその胸に寄り添った。そしてアスターゼにしか聞こえないような声で呟く。
「うん……すぐ行くよ……」
そんな雰囲気を感じて言葉を掛けづらかったのかエルフィスが遠慮がちに話しかける。
「アス、必ず戻れよな」
「ああ、この調子じゃいつになるか分からないけどな。再会するまで元気でな」
「おうよ。その時の俺は神官の職業熟練者だぜ」
相変わらず底なしの笑顔が眩しい男である。
アスターゼは右手を握り拳にして差し出すと、エルフィスはその意図に気付いたのか同様の仕草を見せる。二人の右拳がコツンとぶつかり合うと二人は、ガッシリと手と手を握り合った。
「アスターゼさん、僕はきっと将来世界を変えられるような人間になります! 待っていますよ!」
「ああ、必ずまた会おう」
リュカは寂しいと言うより将来が楽しみな様子である。
彼は頭のキレる子供だ。
将来は有望だろう。
きっとアスターゼの描く未来を助ける存在になるに違いないと思われた。
2人は握手をすると目を合わせてニヤリと笑った。
アスターゼは、辺境伯に「そろそろ出発するぞ」と促され馬車へと向かう。
長い間、暮らしてきた村から出る寂寥感と領都でのこれからに思いを馳せるとアスターゼは馬車へと乗り込んだのであった。
10
あなたにおすすめの小説
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる