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第三章 死霊都市レムレース
閑話 マッカッシー家
しおりを挟むベネディクトは、クライヴ・フォン・マッカーシー侯爵の長男である。
最近、クライヴは本領である、領都マッカスに中々帰れないでいた。
なので、今も王都の邸宅で、クライヴ、ベネディクト、クラリスで夕食後のティータイムを楽しんでいた。
「父上、マッカスに戻られなくてよろしいのですか?」
マッカスの街はマッカッシー領の領都である。
「戻りたいところなんだがな。レヴィン君の件もある。色々根回しも必要だしな」
「きっとお母様も寂しがっておいでですわ」
「そうだな。ハリエットともしばらく会っていない……一旦、帰郷するか」
クラリス、ベネディクトも学校に通うため、王都に滞在している。そして今はクライヴも長期に渡って家を空けている状態だ。
一応、マッカスには、7歳と4歳になる、幼い子供がいるが、それでも寂しいだろうとクラリスは母親を思いやっているのだ。
「レヴィンの件ですが、どのような状況なんでしょうか?」
「うん? 気になるのか?」
「それはそうですよ。父上が気にいる男ですから、当然です」
「私はお前から、あれほど話を聞いてなかったら興味など持たなかったぞ?」
そうなのである。ベネディクトが気になるヤツがいると散々、クライヴに吹き込んだのである。
「わたくしだってそうですわ。お兄様」
クラリスが負けじと張り合ってくる。
彼女ももうすぐ12歳。男の子が気になるお年頃なのだ。
先のお茶会でレヴィンと実際会って、ますます気になっているクラリスなのであった。
「まぁ、まだ決まって日も経っていないからな。大した事は進んでいない……と言いたいところだが、カルマの東に開拓村を造る話は以前からあったからな。人員は結構集まってきている」
「そうなのですね。しかし、一体どこで募集をかけているのですか?」
「王都を中心に我が領都や、近しい貴族が主だな。一応、一大プロジェクトだからな。派閥など関係なしに募っている」
元々、かなり以前に発足した開拓プロジェクトなのだが、魔の森の近くとあって中々、人員が集まらなかったのである。
「しかし、自領の民が引き抜かれるのを黙って見ているものでしょうか? 特に父上の派閥以外の貴族は」
「食い詰めた次男坊、三男坊などを集める分には文句はあまり出んな。むしろ、その、やさぐれた者達が治安を悪化させている場合もある。やっかい払いできてせいせいしているのではないか?」
最初は集まらなかったので、レヴィンが領主になる事が決まって、募集する人員を工夫したのだ。
また、今回はレヴィンと言う英雄の存在がある。客寄せパンダには十分なのだ。
「なるほど。家の後を継げない者を集めているのですね。」
「まぁ、これはレヴィン殿の発案なんだがな。最初は、主に農民だな。後はその村の個性をどう決めていくかが領主の腕の見せ所だ」
「流石はレヴィン様! もう領地経営について意見を出されているのですね!」
クラリスが賞賛の声を上げる。
「レヴィンの発案ですか。後は、村をどう発展させていくか、レヴィンの器量が問われるという事ですね?」
「まぁそうだな。だが、今回は魔の森の近くという事もあって、民を護る者を用意する必要がある。一時的に冒険者を雇うだけでは金が出て行く一方だし、その都市の市民で警備するのが理想的だな」
「腕の立つ者が必要ですね……父上の領地からはどういう者を参加させるのですか?」
「騎士や、経営を任せられる文官は出すつもりだ。家を取り仕切る家宰や、執事、使用人なんかも必要だな。うーむ、改めて挙げるとやはり必要な者は多いな」
「父上の息のかかった者ばかりでは、あらぬ疑いをかけられるのでは?」
レヴィンをクライヴの傀儡と見る者も現れるかも知れないとベネディクトは考えているのだ。
「しかし、色々なところから集めすぎて、いきなり派閥が出来てしまうのも問題だからな……」
貴族の息のかかった者ばかり採用していては、経営に差し障りが出るのである。
あくまでもレヴィンに忠誠を誓う者が必要なのだ。
「我が領にも燻っている者がいるだろうしな」
「わたくしもレヴィン様の作った街に行ってみたいですわ……何かお手伝いできる事はないかしら?」
物憂げな顔をしてクラリスがため息をついている。
「ははは。我が家のお姫様までもレヴィンにご執心とは、レヴィン殿も随分な人たらしだな」
「もう……お父様ったら!」
マッカッシー家は皆、レヴィンを贔屓にしている。
平民上がりの彼にとって侯爵家である、クライヴのバックアップはありがたい事であろう。
「それでレヴィン様は、いつ頃行ってしまわれるんですの? お父様」
「行ってしまうと言っても彼は学生だからな? 初めの一歩は春休みになるんじゃないか?」
「ははははは。冒険者活動ができずに悔しがる彼の顔が浮かぶようだよ。彼は魔物を狩るのが大好きだからね」
「しかし、彼には慈悲の心も備わっている。魔物を狩るだけの男ではないぞ?」
クライヴは配下の草の者にレヴィンを監視させている。
小鬼族と交流を持っていることもそれで知ったのだった。
後に、レヴィンが領地に小鬼族を住まわせるための相談に来たときは、流石に驚く事になるクライヴである。
「もう……そんな事は百も承知ですわ、お父様!」
マッカッシー家の食卓に笑い声が響く。
こうしてティータイムは幕を降ろした。
クライヴは執事のアルフレッドに呼び止められている。何か用事ができたらしい。
ベネディクトとクラリスは思い思いに自分の部屋へと戻って行った。
そして、二人は登校の準備に勤しむのであった。
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