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第四章 ヴィエナの狂信者
4-05 相談事
しおりを挟む学校で新しい魔法を覚えて喜びに満ち溢れているレヴィンである。
今日は、以前からベネディクトに頼んでいたマッカーシー卿との会談の日であった。会談と言っても堅苦しいものではなく、領都ナミディアの建造や中鬼族の移住についての相談と言った方が良いかも知れない。
マッカーシー家の馬車がレヴィン宅の前に停車する。
今日は野次馬がいない。周辺住民は、もう慣れたのだろうか。
いざ乗り込もうとした時、横手から声がかかった。
アリシアである。
「レヴィン、貴族街に行くの?」
「うん。マッカーシー卿に相談事があってね」
「そうなんだ? 今日はお茶会じゃないんだね」
「うん。そう思っていたんだけど、お茶会っぽくなるかも……」
レヴィンは言葉を濁した。
馬車の中にベネディクトとクラリスの姿を確認したからだ。
馬車の入り口からベネディクトがアリシアに顔を見せる。
「やぁ、アリシアさん。ちょっとレヴィンを借りていくよ」
「え……そんなのいいよ。べ、別にあたしのものじゃないんだからねッ!」
最近ちょっとツンを覚えたアリシアであった。
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
そう言うとレヴィンはアリシアに別れを告げ、馬車に乗り込んだ。
「しかし、何で君達がいんの?」
「それは心外だな。相談事があるなら僕も話を聞かなきゃなと思ってね」
「わたくしもお兄様に同じですわ」
「まぁいいけどさ……」
こいつら俺の事好き過ぎだろと心の中で突っ込むレヴィン。
馬車に揺られること、小一時間。
王都の中の城壁を抜けて、王城近くのマッカーシー家までは意外と時間がかかるのだ。
邸宅に到着すると、一人の従者らしき青年が出迎えてくれた。
ずっと待っていたのだろうか?
貴族の家来も大変そうだとレヴィンは少し同情した。
青年に応接室へと通される。
部屋のソファーに当然のように腰を下ろすベネディクトとクラリス。
レヴィンはマッカーシー卿が座るであろう席の前へと腰かける。
レヴィンから見て右側にベネディクトが、左側にクラリスがいる形だ。
執事のアルフレッドが紅茶とお茶請けを持ってくる。
そこへマッカーシー卿が足早に部屋に入ってくる。
「すまんな。待ったかな?」
相変わらず、貴族らしからぬ謙虚な姿勢は尊敬すべきところだ。
レヴィンが「いえ、大丈夫です」と返事をすると、彼の向かいのソファーに座る。アルフレッドはお茶を入れた後、マッカーシー卿の後ろに立ったまま控えている。
「本日は、貴重な時間を割いて頂きありがとうございます。領地の開拓村についてご相談と進捗確認がしたいです」
「堅苦しい挨拶はいらんよ。気軽な感じで話してくれればよい」
「解りました。領都の場所については、エクス公国に赴いた時に、おおよその見当をつけてあるんですが、出発はいつ頃になるんでしょう? 僕としても学生なので春休み頃かなと思っているんですけど……」
「うむ。私も春休みに合わせて段取りをしている。最初の派遣は三百人規模程度になるだろう。農民や建築技師、警備兵が主だな。後は測量士などの技術者などだ。もちろん、その後も第二、第三の開拓団が続く事になるだろう」
「最初は食糧調達などはどうしたら良いでしょうか?」
「商人には声をかけてある。古代遺跡に行った事があるそうだな? あそこと同じような感じになると思ってくれて構わない」
古代遺跡には、たくさんの屋台や商人が食べ物や日用品を売りに来ていたことをレヴィンは思い出す。
確か、ウェリタスと言う名前がつけられたはずである。
「最初から複数の拠点を作っても良いものでしょうか? 領都と村ですね」
「ん? いきなり領都以外の村も作るのかね? 人員は回せないと思うのだが?」
「ええ、そちらには小鬼族を住まわせようと思っています。大体八十人くらいだと思います」
「ご、小鬼族!?」
流石にこの提案は予想外だったのか、マッカーシー卿もベネディクトもクラリスも驚いている。
マッカーシー卿はレヴィンが小鬼族とつるんでいる事は知っているはずなのに、それほど驚く事だろうかとレヴィンは思う。
「小鬼族とな? 君が交流を持っている部族かね?」
「そうです。王都の冒険者ギルド副マスターの精霊族に目をつけられたようで、精霊の森から移住させようと思いまして……」
「お父様? 何普通に話を進めておりますの? 交流ってなんなのです?」
クラリスがたまらず声を上げた。
ベネディクトの方も同じように疑問に頭の中が支配されている感じである。
「ああ、レヴィン殿は精霊の森の小鬼族と以前から仲良くしておってな。その事だろう」
「はい。もうあちらにも移住の話はしてあるので、おそらく問題ないと思いますが、小鬼族は人間からしたら脅威に思われますかね?」
「そうだな。基本魔物は好かれてはおらんだろう。小鬼族は脅威度こそ低いが魔物であることに変わりはないからな」
「もちろん、カルマや近隣の冒険者ギルドに話を通しておこうと思います。最初は人間と離れて暮らさせて、仲良くなれたら領都の規模を大きくしていって一緒に住まわせるのがいいですね」
「そこまで考えているのなら、私は何も言わんが……。私からもギルドに口添えしておこう」
「レヴィン、君のする事だからもう何も驚かないと思ってたけど、まさか魔物と仲良くしているなんて……」
ベネディクトが沈痛な面持ちで額に手を当てながらそう言った。
「マッカーシー卿は以前からご存知でしたよね?」
「ああ、知っていたぞ。後、マッカーシー卿などと……是非クライヴと呼んでくれ給え。」
「解りました。クライヴ様、彼等には獣狩りと農耕をさせようと思っています」
レヴィンはあっさりと呼び方を変えた。別に呼び方にこだわりはない。
「狩りはともかく、小鬼族に農耕など可能なのか?」
「やってみないと僕にも解りません。ですが、試してみる価値はあります」
「その小鬼族と言うのはレヴィン様のご家来衆ですの?」
「家来じゃないかな。いや、領内に住まわせるんだから、支配することになるのか? まぁ友達みたいなもんだよ」
「すごいですわ! 魔物とまで仲良くするなんて聞いた事がございませんわ!」
クラリスが憧憬の眼差しでレヴィンを見つめてくる。
レヴィンはこの娘も偏見とかなさそうだな、とクラリスの評価を上げる。
いや変に染まってないだけか、とも思ったのであるが。
「多分だけど、精霊の森に住んでいたからじゃないかな? 他の小鬼族は人間を嫌悪して話にならなかったしね。もちろん、豚人や鬼なんかも好戦的で話を聞いてくれなかったよ」
「旅の途中で魔物にやたらと声をかけていたのは、そういう訳か」
ベネディクトは合点がいったと膝を打つ。
「そうだね。それで、農耕に必要な農具を手配したいのですが、どうしたら良いのでしょうか?」
「君も御用商人を持った方がいいかも知れんな。いずれ商人らとの顔つなぎの場も用意しよう。農具は私が手配しておく」
レヴィンは特定の商人だけを優遇するつもりはなかったが一応考えてみる事にした。
「よろしくお願いします」
「社交界にレヴィンがデビューするのか。これは面白いな」
横でベネディクトが嬉しそうにしている。
「まぁ! わたくしがダンスのお相手を致しますわ!」
「ダンスなんてやった事がないから助かるよ。よろしくクラリス」
「わたくしにお任せください!」
その後も、領都と開拓村の件で詳細を詰め、夕食までごちそうになった。
テーブルマナーに慣れているなと変な勘繰りをされそうになったが、適当にごまかしておいた。
貴族の正装の手配もお願いする事になった。
以前より身長が伸びたレヴィンである。採寸もしてもらう。
最後に、領都の名前を決めたのかと聞かれたため、ドヤ顔で言ってやった。
「ナミディアです。理想郷と言う意味さ」
と。
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