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33話 sideリク
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サフィ様が城に呼ばれた。
サフィ様は拾ってきて養っている者達を仲間と呼んでいる。俺も含め、ビタ一文得にもならない人間なのに、仲間だと呼ばれ対等に扱われているのだ。
血の繋がった家族よりも、今までの生活を共にしてきた使用人達よりも信頼してると言われて、命をかけてサフィ様にお仕えしようと思っている人間は数知れず。
そんな仲間の前では気丈にしていても、夜、部屋で2人きりになるとサフィ様は擦り寄るように俺の胸に顔を埋めて肩を落とした。
「なんで呼ばれたのか理由も聞かされなかったから、これが慶事なのか凶事なのかわかんないだろ?」
「いいことに決まってます」
俺は少しでもサフィ様の気が楽になるように即答した。
それにしても、サフィ様から不安そうに近づいてくるなんて。
頼られてるのか?頼られてるんだよな?
俺が……サフィ様に、頼られて、いる!
俺もサフィ様に頼られるようになったんだなあ。
あああ、この感慨を直接的な歓喜表現したい。
ではなくて!
サフィ様の話をしっかり聞かなくては!!
今こそ、サフィ様からの信頼を確固たるものにするのだ!!
「王命って言われたら、さすがに無視するわけにはいかないよなー」
俺の肩に頭を寄せて、心細そうに涙目で愚痴る姿がかわいい。
「大丈夫です。サフィ様、いい報せに決まってます、が、万が一違っても、俺が全て退けますから。一緒についていきます。必ずお守りしますからね」
「うん。ごめん。ありがとう、へへっ。不安になっちゃった」
あああああ、抱きしめたい。
ダメだダメだ。
ただでさえ不安で押し潰されそうになってるのに、ここでさらに悩ませるとかダメだ。
言うだけ言ったから、少しは気が済んだのだろう。
サフィ様から規則的な寝息が聞こえてきた。
腕を頭の下にそっと差し込む。
ふわりと抱きしめてもサフィ様が気づかないことを確かめる。徐々に力を強め、首元に鼻を突っ込むと柔らかな甘い匂いがしてきた。
思わず腰をサフィ様に押し付けて揺らしてしまう。
あああ、何でもいい、小さなことでいい。
サフィ様の不安を取り除いて差し上げたい。
この腕の中の温もりを、守って差し上げたい。
温かい幸せに、俺の目もゆっくりと閉じた。
☆☆☆
さて、どうしたらよいか。
相談する相手は、サフィ様の従僕の位置にいるカランを選んだ。
もっとも危険なライバルで鼻持ちならない相手ではあるが、サフィ様を第一に考えられる上、俺の知らない知識もある。
サフィ様の呟きを知らせると、カランは直ぐ動いた。
結局カランも一緒に行くことになってしまったが、カランの二枚舌でもなかったらサフィ様の父上を説得できなかっただろうから、まあ、仕方ない。
サフィ様は譲れないが、カランの黒さは敵に回したくない腹黒さだからな。
いざ城についてみると、どんな理由があっても会見の場にはサフィ様しか連れて行けないと言われた。
当然抗議したが、決まりを覆すだけの力などない下っ端役人にいくら脅しをかけたところで意味などあるわけもない。
俺とカランとで、3人ほど意識混濁で会話を不可能にしたところで、サフィ様が青い顔で立ち上がった。
「俺、1人で行くよ。リクもカランも心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だからね。これ以上は別の意味で危険になっちゃうんじゃないかと……」
と1人で行ってしまわれたのだ。
もうあと何人か不能にすれば上役が出てきただろうし、そうなればこちらの要求も通ったかもしれないのに。
なかなか帰ってこないサフィ様に、もう少し強引に全員を威圧してもよかったかもしれないと後悔したが、あれから部屋に誰も長居しないから、脅しようもない。
来る役人、来る役人が俺の顔を見るなり『え!?』とか『はっ?』とか言葉を発して、慌てて飛び出て行ってしまうのだ。
うーむ、なんだ?
しかし、まだ保護者の管轄にあるはずの子供に対しての今回の扱い。
呼ばれた案件はよほどのことなのだと皆が感じているのに、サフィ様のクソ弟の母親が、クソ弟こそが至高であるのに王に面会できないとはなにごとか!?と喚き立てるのでうるさかった。
何故だかクソ弟までもが、実の母親を疎んじるように見ていた。
汚物か?お前の母親、汚物なのか?と心配するぐらいの視線だったのに、あの女はまるで感じていなかったみたいだ。
あの母親、相当ヤバいんだろうな。
クソ弟に少しだけ同情することになった。
それにしても、さっきからチラチラと見に来るヤツが増えている気がする。
やっぱり見られてるの、俺、だよな?
「お前、何かやらかしたのか?やたらと見られてないか?」
俺に興味などなさそうなカランにまで小声で聞かれる始末だ。
「やはり気のせいではなかったか?」
しかしなんだろう?
今まで殺しこそしてないが、暴力も盗みも恐喝も心当たりがあり過ぎる。
は!
もしかして、それが原因でサフィ様が怒られているとか?!
い、いや、落ち着け、俺。
もしそうなら、俺に直接問うに決まってる。
いくら主人だとはいえ、サフィ様だけを呼び付けてあれこれ問い質すことなどあるわけがない。
あいつらが俺の顔を見てはハッとした表情を浮かべ、あれ?と考えこまれることを繰り返して2時間。
そろそろ本格的に居心地が悪くなってきたな、と思っていた時、サフィ様が帰ってきたのだ。
「リク、カラン、どんなことが起こっても許可するまで動くな、喋るな。 それができないようなら、今後、俺にお前たちは必要がない」
サフィ様は帰ってくるなり、とんでもない爆弾を口にした。
「はい!」
なんとか返事はしたけど何が起きているのか、混乱の中、こめかみがドクドクと音を立てている。
言いつけ通り、間違っても言葉を発しないように奥歯を噛み締めると、いきなりサフィ様がクリスの前で膝をつき平伏した。
なぜ!?
しかも、それに驚くだけでは済まなかった。
「大っ変申し訳ありませんでしたあああ!!」
サフィ様がクリスに謝辞を述べたではないか。
なぜ!?
サフィ様!?
問い質したいけど、口にはできない。
試されているのだ。
俺たちは理不尽な場面でもサフィ様の命令を遂行できるかを試されているのだ。
サフィ様の命に危険が迫っているわけではなく、いけ好かない相手ではあってもアレはサフィ様の弟。
これほど基本の場面で、サフィ様の思惑を読み取り主人の意のままに愚者を演じられるかを試されているのだ。
これをクリアできなければ、サフィ様にとって無要な人間になってしまう。
声にならない呻き声を上げてクリスを睨んで、ぐっと吐き出したい暴言を堪えた。
「王様に王立学院の入学を勧められたんだけど、俺、勉強したくないていうか、家業を継ぎたくないというか……。商会を継ぐの弟なんで貴族との顔繋ぎしたいのはクリスですって、俺の代わりにクリスが入学することになっちゃったんだけど」
続いてサフィ様が口にした言葉に父上殿が目を見開いて驚いている。隣でカランも両手で口を押さえて言葉が飛び出ないように押さえているし、クリスの母親だけが満面の笑みだ。
クリスに至っては困惑しているように見える。
つまり、なんだ?
サフィ様は家を継ぎたくない。
つまり家に帰りたくないってことだよな……俺と、一緒にいたいってことか?
え、マジで?
さっきまでの絶望とは違う熱い何かが腹から迫り上がってくる。
そのまま歓喜の思いでサフィ様達に視線をやれば、サフィ様の様子にクリスが頬を染めたのがわかった。
サフィ様、上目遣いはダメです。
ああっ!そんな風に首を可愛らしく傾げるのもダメです。
クリスなんかにそんな可愛いことしなくていいのです!
サフィ様の様子に頬を染めたり眉間にシワを寄せたりしていたクリスは、少し考えるとサフィ様に質問した。
「ねえ、兄さん。シルベール様にもお会いしたの?」
「ん?シルベール様って誰だ?」
シルベールと言うと、この国のただひとりの姫様だったかな?
あんまり評判は良くない姫君だよな?
まあ、確かに王族だもんな。クリスが夢を見るくらいの美貌を持っているのは確かだろうけど。
「シルベール様を知らないの?」
「??」
この様子だと、クリスはシルベール様に好意があるのか?
ならいいか。
身分差ありすぎだろうがなんだろうが、サフィ様に近づかなければいい。
なんなら応援してやろう。
ちょっとだけクリスの評価を上げてやった。
「あ、あのさ、クリス。それで、ゆ、許してくれるか?」
さあ、クリス。許してやれ。
ここまでサフィ様に言わせて、許すこともできないとか、何様のつもりだ。
さあ許せ。
「んー、許してあげてもいいけど、僕のお願いを1つ……いや、3つ、無条件で聞いてくれるならいいよ」
「む、無条件で?」
な、なんだと!!
サフィ様、ダメです!罠ですよ!!
「うん、それが嫌なら、許さないってことで。兄さんが学院に通うしかないね」
「わ、わかった。3つお願いを聞けばいいんだな。わかった。そ、それで、許してくれる?」
ダメです!!
サフィ様!
ああああああ!
「……仕方ないなあ。約束だからね」
「う、はい」
何が『仕方ない』だ、くそクリス!!
あのくそクリスから、サフィ様をなんとしても守らなければ。
しかし、その前にだ。
その前にやらねばならないことがある。
俺とカランは目を見合わせた。
こんな状況でなければ、クリスからサフィ様を守れたのだ。
こんな状況でなければ、もっと良い提案もできたのだ。
頼られていると思っていたのに、そうでもなかったという事実。
信頼されていると思っていたのに、簡単に切り捨てられる程度の関係だと思われていた事実。
そんなこと、許せるはずが、ない。
サフィ様の口から2度と『要らない』などと言えないようにしておかなければ。
サフィ様は拾ってきて養っている者達を仲間と呼んでいる。俺も含め、ビタ一文得にもならない人間なのに、仲間だと呼ばれ対等に扱われているのだ。
血の繋がった家族よりも、今までの生活を共にしてきた使用人達よりも信頼してると言われて、命をかけてサフィ様にお仕えしようと思っている人間は数知れず。
そんな仲間の前では気丈にしていても、夜、部屋で2人きりになるとサフィ様は擦り寄るように俺の胸に顔を埋めて肩を落とした。
「なんで呼ばれたのか理由も聞かされなかったから、これが慶事なのか凶事なのかわかんないだろ?」
「いいことに決まってます」
俺は少しでもサフィ様の気が楽になるように即答した。
それにしても、サフィ様から不安そうに近づいてくるなんて。
頼られてるのか?頼られてるんだよな?
俺が……サフィ様に、頼られて、いる!
俺もサフィ様に頼られるようになったんだなあ。
あああ、この感慨を直接的な歓喜表現したい。
ではなくて!
サフィ様の話をしっかり聞かなくては!!
今こそ、サフィ様からの信頼を確固たるものにするのだ!!
「王命って言われたら、さすがに無視するわけにはいかないよなー」
俺の肩に頭を寄せて、心細そうに涙目で愚痴る姿がかわいい。
「大丈夫です。サフィ様、いい報せに決まってます、が、万が一違っても、俺が全て退けますから。一緒についていきます。必ずお守りしますからね」
「うん。ごめん。ありがとう、へへっ。不安になっちゃった」
あああああ、抱きしめたい。
ダメだダメだ。
ただでさえ不安で押し潰されそうになってるのに、ここでさらに悩ませるとかダメだ。
言うだけ言ったから、少しは気が済んだのだろう。
サフィ様から規則的な寝息が聞こえてきた。
腕を頭の下にそっと差し込む。
ふわりと抱きしめてもサフィ様が気づかないことを確かめる。徐々に力を強め、首元に鼻を突っ込むと柔らかな甘い匂いがしてきた。
思わず腰をサフィ様に押し付けて揺らしてしまう。
あああ、何でもいい、小さなことでいい。
サフィ様の不安を取り除いて差し上げたい。
この腕の中の温もりを、守って差し上げたい。
温かい幸せに、俺の目もゆっくりと閉じた。
☆☆☆
さて、どうしたらよいか。
相談する相手は、サフィ様の従僕の位置にいるカランを選んだ。
もっとも危険なライバルで鼻持ちならない相手ではあるが、サフィ様を第一に考えられる上、俺の知らない知識もある。
サフィ様の呟きを知らせると、カランは直ぐ動いた。
結局カランも一緒に行くことになってしまったが、カランの二枚舌でもなかったらサフィ様の父上を説得できなかっただろうから、まあ、仕方ない。
サフィ様は譲れないが、カランの黒さは敵に回したくない腹黒さだからな。
いざ城についてみると、どんな理由があっても会見の場にはサフィ様しか連れて行けないと言われた。
当然抗議したが、決まりを覆すだけの力などない下っ端役人にいくら脅しをかけたところで意味などあるわけもない。
俺とカランとで、3人ほど意識混濁で会話を不可能にしたところで、サフィ様が青い顔で立ち上がった。
「俺、1人で行くよ。リクもカランも心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だからね。これ以上は別の意味で危険になっちゃうんじゃないかと……」
と1人で行ってしまわれたのだ。
もうあと何人か不能にすれば上役が出てきただろうし、そうなればこちらの要求も通ったかもしれないのに。
なかなか帰ってこないサフィ様に、もう少し強引に全員を威圧してもよかったかもしれないと後悔したが、あれから部屋に誰も長居しないから、脅しようもない。
来る役人、来る役人が俺の顔を見るなり『え!?』とか『はっ?』とか言葉を発して、慌てて飛び出て行ってしまうのだ。
うーむ、なんだ?
しかし、まだ保護者の管轄にあるはずの子供に対しての今回の扱い。
呼ばれた案件はよほどのことなのだと皆が感じているのに、サフィ様のクソ弟の母親が、クソ弟こそが至高であるのに王に面会できないとはなにごとか!?と喚き立てるのでうるさかった。
何故だかクソ弟までもが、実の母親を疎んじるように見ていた。
汚物か?お前の母親、汚物なのか?と心配するぐらいの視線だったのに、あの女はまるで感じていなかったみたいだ。
あの母親、相当ヤバいんだろうな。
クソ弟に少しだけ同情することになった。
それにしても、さっきからチラチラと見に来るヤツが増えている気がする。
やっぱり見られてるの、俺、だよな?
「お前、何かやらかしたのか?やたらと見られてないか?」
俺に興味などなさそうなカランにまで小声で聞かれる始末だ。
「やはり気のせいではなかったか?」
しかしなんだろう?
今まで殺しこそしてないが、暴力も盗みも恐喝も心当たりがあり過ぎる。
は!
もしかして、それが原因でサフィ様が怒られているとか?!
い、いや、落ち着け、俺。
もしそうなら、俺に直接問うに決まってる。
いくら主人だとはいえ、サフィ様だけを呼び付けてあれこれ問い質すことなどあるわけがない。
あいつらが俺の顔を見てはハッとした表情を浮かべ、あれ?と考えこまれることを繰り返して2時間。
そろそろ本格的に居心地が悪くなってきたな、と思っていた時、サフィ様が帰ってきたのだ。
「リク、カラン、どんなことが起こっても許可するまで動くな、喋るな。 それができないようなら、今後、俺にお前たちは必要がない」
サフィ様は帰ってくるなり、とんでもない爆弾を口にした。
「はい!」
なんとか返事はしたけど何が起きているのか、混乱の中、こめかみがドクドクと音を立てている。
言いつけ通り、間違っても言葉を発しないように奥歯を噛み締めると、いきなりサフィ様がクリスの前で膝をつき平伏した。
なぜ!?
しかも、それに驚くだけでは済まなかった。
「大っ変申し訳ありませんでしたあああ!!」
サフィ様がクリスに謝辞を述べたではないか。
なぜ!?
サフィ様!?
問い質したいけど、口にはできない。
試されているのだ。
俺たちは理不尽な場面でもサフィ様の命令を遂行できるかを試されているのだ。
サフィ様の命に危険が迫っているわけではなく、いけ好かない相手ではあってもアレはサフィ様の弟。
これほど基本の場面で、サフィ様の思惑を読み取り主人の意のままに愚者を演じられるかを試されているのだ。
これをクリアできなければ、サフィ様にとって無要な人間になってしまう。
声にならない呻き声を上げてクリスを睨んで、ぐっと吐き出したい暴言を堪えた。
「王様に王立学院の入学を勧められたんだけど、俺、勉強したくないていうか、家業を継ぎたくないというか……。商会を継ぐの弟なんで貴族との顔繋ぎしたいのはクリスですって、俺の代わりにクリスが入学することになっちゃったんだけど」
続いてサフィ様が口にした言葉に父上殿が目を見開いて驚いている。隣でカランも両手で口を押さえて言葉が飛び出ないように押さえているし、クリスの母親だけが満面の笑みだ。
クリスに至っては困惑しているように見える。
つまり、なんだ?
サフィ様は家を継ぎたくない。
つまり家に帰りたくないってことだよな……俺と、一緒にいたいってことか?
え、マジで?
さっきまでの絶望とは違う熱い何かが腹から迫り上がってくる。
そのまま歓喜の思いでサフィ様達に視線をやれば、サフィ様の様子にクリスが頬を染めたのがわかった。
サフィ様、上目遣いはダメです。
ああっ!そんな風に首を可愛らしく傾げるのもダメです。
クリスなんかにそんな可愛いことしなくていいのです!
サフィ様の様子に頬を染めたり眉間にシワを寄せたりしていたクリスは、少し考えるとサフィ様に質問した。
「ねえ、兄さん。シルベール様にもお会いしたの?」
「ん?シルベール様って誰だ?」
シルベールと言うと、この国のただひとりの姫様だったかな?
あんまり評判は良くない姫君だよな?
まあ、確かに王族だもんな。クリスが夢を見るくらいの美貌を持っているのは確かだろうけど。
「シルベール様を知らないの?」
「??」
この様子だと、クリスはシルベール様に好意があるのか?
ならいいか。
身分差ありすぎだろうがなんだろうが、サフィ様に近づかなければいい。
なんなら応援してやろう。
ちょっとだけクリスの評価を上げてやった。
「あ、あのさ、クリス。それで、ゆ、許してくれるか?」
さあ、クリス。許してやれ。
ここまでサフィ様に言わせて、許すこともできないとか、何様のつもりだ。
さあ許せ。
「んー、許してあげてもいいけど、僕のお願いを1つ……いや、3つ、無条件で聞いてくれるならいいよ」
「む、無条件で?」
な、なんだと!!
サフィ様、ダメです!罠ですよ!!
「うん、それが嫌なら、許さないってことで。兄さんが学院に通うしかないね」
「わ、わかった。3つお願いを聞けばいいんだな。わかった。そ、それで、許してくれる?」
ダメです!!
サフィ様!
ああああああ!
「……仕方ないなあ。約束だからね」
「う、はい」
何が『仕方ない』だ、くそクリス!!
あのくそクリスから、サフィ様をなんとしても守らなければ。
しかし、その前にだ。
その前にやらねばならないことがある。
俺とカランは目を見合わせた。
こんな状況でなければ、クリスからサフィ様を守れたのだ。
こんな状況でなければ、もっと良い提案もできたのだ。
頼られていると思っていたのに、そうでもなかったという事実。
信頼されていると思っていたのに、簡単に切り捨てられる程度の関係だと思われていた事実。
そんなこと、許せるはずが、ない。
サフィ様の口から2度と『要らない』などと言えないようにしておかなければ。
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