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幼き王6
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「そ、それは家庭教師としてですか……?」
まさか、と思いつつ可能性の一つを声に乗せる。
「いえ……! 僕の妃候補として!」
ぐわん! と上から頭に石が落ちてきたような衝撃に、エステルは苛まされた。
「……駄目?」
上目遣いで、こちらをじっと見つめてくるアレシュ。
可愛いと思うが、彼を大人としてエステルは、どうしても見れない。
(――それに……彼は王よ! この国の最高権力者じゃない! 歳の差だけじゃなくて身分違いでもあるわ!)
そんな言い訳にエステルはハッとし、顔を赤らめた。
(嫌だ……! これでは、私はアレシュを恋愛対象として見ていたということじゃない……!)
自分の愚かさに、ますます身体が熱くなる。
「アレシュ様……! お待ちください。まず歳が離れております」
「エステルは二十歳だろう? 僕と八つほどしか変わらない」
「なら、アレンカの方がよほどに対象です!」
「アレンカは無邪気で可愛いと思うよ。……でも、彼女の母が、ずっとついて回るのは嫌だ。我慢できない」
ダリナは、自ら娘のチャンスを潰してしまったのだ。彼女はその事に気付いているのだろうか?
エステルはアレンカと婦人のことを思い出し、冷静さを取り戻す。
一つ深い呼吸をすると、アレシュの説得を続けた。
「今、この時は私は貴方のことを『王』として接します。どうか貴方も『王』としてお聞きください」
エステルは共に座っていた寝台から床に膝をつけ、真正面にいるアレシュを見上げる。
「アレシュ王、私には既に婚約者がおります。彼を愛しております。……それに王は、王に相応しい相手は、必ずおります」
「僕はエステル、君こそが僕に相応しい相手だと思っている。――駄目なの?」
アレシュの声が、絶望に震えている。
(でも、ここで抱き締めてはいけない……! 同情で受け入れてはいけない)
エステルは自分を律す。
「王は寂しさのあまりに、全てを受け入れてくれる母親の存在を求めているだけです。それを男女の愛と勘違いしてはなりません」
「……確かに僕は寂しかったかも知れない。でも! 寂しいからとエステルに甘えていたんじゃない! 母としてみていた訳じゃない! 最初から、初めて会ったときから僕は貴女を好きだった……!」
「王……それは、あの、行水の件を……?」
そうだ、とアレシュは頷くと両膝をつくエステルの手を握り締める。
「狡猾なことをしたけど、僕は自分が子供だということを最大限に利用した。そうした方が、エステルが躊躇いなく僕に接してくれると考えたから。僕はエステルが思うより、小賢しいよ」
アレシュの熱い眼差しは、絡める赤い糸のようにエステルの視線を彼に止まらせた。
幼い少年に、こんなに熱い想いを告げられるとは思いもよらないことだ。
「お願い。僕のために婚約を破棄して。僕の側にいてくれ」
「――です」
告白に頭が真っ白になっていたエステルだが、アレシュの、この願いにようやく頭が回転する。
「その願いは、聞き入れることは出来ません……。あまりにも我儘です」
「エステル……」
「今の王の願いは、あまりにも自分本意な身勝手なものです。私が下級貴族だから、絶対君主である王に逆らうことなどない、と確信して言っておられるのではないのですか? 私の気持ちなど、どうでも良いと? 私なら我儘を言っても良いと?」
「……そうじゃない……」
エステルの怒りを露にした表情に浮かんだ涙が頬を伝うのを見て、アレシュは項垂れた。
「ごめんなさい……エステルなら、僕の我儘を受け入れてくれると確信していた。でもそれは、傲慢なんだって気付いた……」
アレシュはポケットからハンカチを取り出して、エステルの涙を拭う。
「僕はエステルにしてみたら、子供だろうけど、貴女に対しての想いは子供騙しなんかではないよ。本当に好きなんだ。初恋なんだ。そんなに拒絶しないでほしい」
アレシュの想いが切ない。
だが、エステルは断るしか術がない。諦めてもらうしかないのだ。
「……アレシュ王。今大切なのは、王宮の改革ではありませんか? 先王と亡き王妃の目指していた王宮を作り上げることが、王妃を娶るより先に、すべきことではないかと思います」
そのエステルの言葉に、アレシュは唇を引き結ぶ。
「王が心身ともに成長し、ご立派な青年王におなりになったときに、隣に王妃が安心してお並びになれるように素晴らしい執政を行ってください」
「そうだったね……まずは、今の問題を解決しなければ……」
アレシュは、エステルを立ち上がらせる。
「ありがとう、エステル。僕は王としての責務に背中を向けていた。もう、叔父に執務は任せれば良いと考えていた。しかし、それでは何も変わらない。父と母が亡くなった意味が消えてしまう。僕が逃げるわけにはいかないんだ。――頑張るよ」
「……王」
「二つ、聞いて欲しいことがある。先程みたいな我儘じゃないから、安心してほしい」
「……はい」
躊躇ったエステルだったが、結局承諾した。
「もし……王宮が安定したら、その時にまだエステルが独身でいたら、王宮に呼んで良いよね?」
不思議な願いだ。それは自分の婚約が、立ち消えるかというのか?
「それは……どういう――」
「約束!」
強い口調で言葉を遮られ、エステルは戸惑いながら「はい」と了承する。
「二つ目は、僕にキスをさせて……」
「えっ?」
仄かに頬を染めて、恥じらうように笑うアレシュが可愛い。
「今までエステルからだったし、それに……もう、ここにはいられないだろう。このまま居座れば居座るほど、ブレイハ夫妻の関係は悪くなる気がするし、長く王宮を空けておいては、旧守派を付け上がらせるだけだ」
アレシュがエステルの指先を摘まむ。その紳士的な動作に胸の鼓動一つ跳ねた。
「だからここを去る思い出に……王宮で立ち向かえる勇気を欲しい」
幼い少年でありながら、王たる者としての大人びた仕草に言葉。
(王なのだわ……彼は、小さくても)
エステルは、これから腐敗した王宮内に戻るアレシュの励みになるような思い出になるならと
「光栄です……」
と彼を見つめ、瞼を閉じる。
額か頬か、それとも瞼か――そう考えたからだ。
しかし――最初にアレシュの柔らかな唇が触れたのは、エステルの耳だった。
歯を立てず、上唇と下唇のみで、まるで花びらを咬むように甘く優しく耳朶に口づけを繰り返す。
「は……あの……アレシュ様……?」
どうして良いか分からず、エステルは膝立ちのままの状態で硬直してしまう。
アレシュは、そのまま耳輪にそって唇を沿わしていく。
ただそれだけなのに、エステルの背中から感じたことのない痺れが走った。
「……あっ……!」
突然、途中で歯をたてられ、エステルは驚いて声を出す。
そして今、自分の出した声に、恥ずかしさに身体を熱くした。
出したことのない、甘い、蕩けるような声――本当に自分が出した声なのかと、疑いたくなるくらいに甘い声だった。
「耳に口付けされるの、初めて?」
更にアレシュに耳元で囁かれ、一層に身体を熱くした。
「そんな、こんな……ところ……! 普通はしません……!」
囁かれ、吐息が耳にかかる度にエステルの背中が痺れ、頭の中に霧がかかる。その中に埋もれたいという、変な欲求を彼女は必死に振り払っていた。
「そうなの? 酷い婚約者だね。耳に口付けするのは『自分だけのものにしたい』という意味が込められているんだよ」
「……えっ?」
では、この口付けはアレシュの気持ち? 諦めるつもりではなかったのか?
アレシュを見ようと顔を離すと、肩を掴まれた。
目が合ったと確認してすぐ、アレシュの顔が近付いて、唇が重なる。
「ん……、んん……!」
強引だ。押し付けるように唇を合わせてくる。
エステルは混乱の中、何とかアレシュを引きはなそうと彼の肩を押すが、動揺してなのか上手くできないでいた。
彼の腕はエステルの背中に回り、ガッチリと彼女を離さない。
「う……ア……レ……!」
僅かにずれた唇から、非難の声を出したエステルだが、また塞がれる。
「ん! ……うん……!」
口内に柔らかい何かが蠢く。それがアレシュの舌だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
自分の舌をつつき、誘い、それを受け入れないと分かると今度は、ぐるりと歯茎を蹂躙しだした。
(あ……、そんな……! こんなことどこで……?)
ハッと気付く。王宮でだ。
この幼い王に欲情してか、思い通りに動く人形にするためか、周囲の女達は彼を誘った――その結果なのだ。
「……ふっ! う、うん……!」
口内で軽く息を吐き出され、エステルは息の熱さに思わず背中を仰け反らせる。
拍子、身体が離れた。
膝立ちすら出来ず、エステルはその場に崩れた。
呆然としているエステルを見て、アレシュは、
「可愛い。エステルは可愛いね。そのままでいてね? 僕の語り部」
と大人びた微笑みを飾った。
まさか、と思いつつ可能性の一つを声に乗せる。
「いえ……! 僕の妃候補として!」
ぐわん! と上から頭に石が落ちてきたような衝撃に、エステルは苛まされた。
「……駄目?」
上目遣いで、こちらをじっと見つめてくるアレシュ。
可愛いと思うが、彼を大人としてエステルは、どうしても見れない。
(――それに……彼は王よ! この国の最高権力者じゃない! 歳の差だけじゃなくて身分違いでもあるわ!)
そんな言い訳にエステルはハッとし、顔を赤らめた。
(嫌だ……! これでは、私はアレシュを恋愛対象として見ていたということじゃない……!)
自分の愚かさに、ますます身体が熱くなる。
「アレシュ様……! お待ちください。まず歳が離れております」
「エステルは二十歳だろう? 僕と八つほどしか変わらない」
「なら、アレンカの方がよほどに対象です!」
「アレンカは無邪気で可愛いと思うよ。……でも、彼女の母が、ずっとついて回るのは嫌だ。我慢できない」
ダリナは、自ら娘のチャンスを潰してしまったのだ。彼女はその事に気付いているのだろうか?
エステルはアレンカと婦人のことを思い出し、冷静さを取り戻す。
一つ深い呼吸をすると、アレシュの説得を続けた。
「今、この時は私は貴方のことを『王』として接します。どうか貴方も『王』としてお聞きください」
エステルは共に座っていた寝台から床に膝をつけ、真正面にいるアレシュを見上げる。
「アレシュ王、私には既に婚約者がおります。彼を愛しております。……それに王は、王に相応しい相手は、必ずおります」
「僕はエステル、君こそが僕に相応しい相手だと思っている。――駄目なの?」
アレシュの声が、絶望に震えている。
(でも、ここで抱き締めてはいけない……! 同情で受け入れてはいけない)
エステルは自分を律す。
「王は寂しさのあまりに、全てを受け入れてくれる母親の存在を求めているだけです。それを男女の愛と勘違いしてはなりません」
「……確かに僕は寂しかったかも知れない。でも! 寂しいからとエステルに甘えていたんじゃない! 母としてみていた訳じゃない! 最初から、初めて会ったときから僕は貴女を好きだった……!」
「王……それは、あの、行水の件を……?」
そうだ、とアレシュは頷くと両膝をつくエステルの手を握り締める。
「狡猾なことをしたけど、僕は自分が子供だということを最大限に利用した。そうした方が、エステルが躊躇いなく僕に接してくれると考えたから。僕はエステルが思うより、小賢しいよ」
アレシュの熱い眼差しは、絡める赤い糸のようにエステルの視線を彼に止まらせた。
幼い少年に、こんなに熱い想いを告げられるとは思いもよらないことだ。
「お願い。僕のために婚約を破棄して。僕の側にいてくれ」
「――です」
告白に頭が真っ白になっていたエステルだが、アレシュの、この願いにようやく頭が回転する。
「その願いは、聞き入れることは出来ません……。あまりにも我儘です」
「エステル……」
「今の王の願いは、あまりにも自分本意な身勝手なものです。私が下級貴族だから、絶対君主である王に逆らうことなどない、と確信して言っておられるのではないのですか? 私の気持ちなど、どうでも良いと? 私なら我儘を言っても良いと?」
「……そうじゃない……」
エステルの怒りを露にした表情に浮かんだ涙が頬を伝うのを見て、アレシュは項垂れた。
「ごめんなさい……エステルなら、僕の我儘を受け入れてくれると確信していた。でもそれは、傲慢なんだって気付いた……」
アレシュはポケットからハンカチを取り出して、エステルの涙を拭う。
「僕はエステルにしてみたら、子供だろうけど、貴女に対しての想いは子供騙しなんかではないよ。本当に好きなんだ。初恋なんだ。そんなに拒絶しないでほしい」
アレシュの想いが切ない。
だが、エステルは断るしか術がない。諦めてもらうしかないのだ。
「……アレシュ王。今大切なのは、王宮の改革ではありませんか? 先王と亡き王妃の目指していた王宮を作り上げることが、王妃を娶るより先に、すべきことではないかと思います」
そのエステルの言葉に、アレシュは唇を引き結ぶ。
「王が心身ともに成長し、ご立派な青年王におなりになったときに、隣に王妃が安心してお並びになれるように素晴らしい執政を行ってください」
「そうだったね……まずは、今の問題を解決しなければ……」
アレシュは、エステルを立ち上がらせる。
「ありがとう、エステル。僕は王としての責務に背中を向けていた。もう、叔父に執務は任せれば良いと考えていた。しかし、それでは何も変わらない。父と母が亡くなった意味が消えてしまう。僕が逃げるわけにはいかないんだ。――頑張るよ」
「……王」
「二つ、聞いて欲しいことがある。先程みたいな我儘じゃないから、安心してほしい」
「……はい」
躊躇ったエステルだったが、結局承諾した。
「もし……王宮が安定したら、その時にまだエステルが独身でいたら、王宮に呼んで良いよね?」
不思議な願いだ。それは自分の婚約が、立ち消えるかというのか?
「それは……どういう――」
「約束!」
強い口調で言葉を遮られ、エステルは戸惑いながら「はい」と了承する。
「二つ目は、僕にキスをさせて……」
「えっ?」
仄かに頬を染めて、恥じらうように笑うアレシュが可愛い。
「今までエステルからだったし、それに……もう、ここにはいられないだろう。このまま居座れば居座るほど、ブレイハ夫妻の関係は悪くなる気がするし、長く王宮を空けておいては、旧守派を付け上がらせるだけだ」
アレシュがエステルの指先を摘まむ。その紳士的な動作に胸の鼓動一つ跳ねた。
「だからここを去る思い出に……王宮で立ち向かえる勇気を欲しい」
幼い少年でありながら、王たる者としての大人びた仕草に言葉。
(王なのだわ……彼は、小さくても)
エステルは、これから腐敗した王宮内に戻るアレシュの励みになるような思い出になるならと
「光栄です……」
と彼を見つめ、瞼を閉じる。
額か頬か、それとも瞼か――そう考えたからだ。
しかし――最初にアレシュの柔らかな唇が触れたのは、エステルの耳だった。
歯を立てず、上唇と下唇のみで、まるで花びらを咬むように甘く優しく耳朶に口づけを繰り返す。
「は……あの……アレシュ様……?」
どうして良いか分からず、エステルは膝立ちのままの状態で硬直してしまう。
アレシュは、そのまま耳輪にそって唇を沿わしていく。
ただそれだけなのに、エステルの背中から感じたことのない痺れが走った。
「……あっ……!」
突然、途中で歯をたてられ、エステルは驚いて声を出す。
そして今、自分の出した声に、恥ずかしさに身体を熱くした。
出したことのない、甘い、蕩けるような声――本当に自分が出した声なのかと、疑いたくなるくらいに甘い声だった。
「耳に口付けされるの、初めて?」
更にアレシュに耳元で囁かれ、一層に身体を熱くした。
「そんな、こんな……ところ……! 普通はしません……!」
囁かれ、吐息が耳にかかる度にエステルの背中が痺れ、頭の中に霧がかかる。その中に埋もれたいという、変な欲求を彼女は必死に振り払っていた。
「そうなの? 酷い婚約者だね。耳に口付けするのは『自分だけのものにしたい』という意味が込められているんだよ」
「……えっ?」
では、この口付けはアレシュの気持ち? 諦めるつもりではなかったのか?
アレシュを見ようと顔を離すと、肩を掴まれた。
目が合ったと確認してすぐ、アレシュの顔が近付いて、唇が重なる。
「ん……、んん……!」
強引だ。押し付けるように唇を合わせてくる。
エステルは混乱の中、何とかアレシュを引きはなそうと彼の肩を押すが、動揺してなのか上手くできないでいた。
彼の腕はエステルの背中に回り、ガッチリと彼女を離さない。
「う……ア……レ……!」
僅かにずれた唇から、非難の声を出したエステルだが、また塞がれる。
「ん! ……うん……!」
口内に柔らかい何かが蠢く。それがアレシュの舌だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
自分の舌をつつき、誘い、それを受け入れないと分かると今度は、ぐるりと歯茎を蹂躙しだした。
(あ……、そんな……! こんなことどこで……?)
ハッと気付く。王宮でだ。
この幼い王に欲情してか、思い通りに動く人形にするためか、周囲の女達は彼を誘った――その結果なのだ。
「……ふっ! う、うん……!」
口内で軽く息を吐き出され、エステルは息の熱さに思わず背中を仰け反らせる。
拍子、身体が離れた。
膝立ちすら出来ず、エステルはその場に崩れた。
呆然としているエステルを見て、アレシュは、
「可愛い。エステルは可愛いね。そのままでいてね? 僕の語り部」
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