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山芋とアスパラガスは仲良くなれない#4
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タケオと正気を取り戻したナグカワは
屋台船に乗っていた。
中には長い掘りごたつのようなものが広がっており、タケオたちの他に数人が真ん中の小さなカゴの中にこれでもかも言うほどに詰められたみかん達を囲んで座っていた。
タケオはナグカワと話していない。
なぜ正気を失い自分を斬って来たかも聞いていないタケオは恐らく、何も知りたくないのではなく、今のナグカワにこれ以上、謝らせたくないのだろう。
タケオ達以外の者達はなにやら思い空気で一番小粒なみかんを凝視していた。
『甘い香りがする』
『恐らく当たりはアレだ』
『彼女は私が食らう』
『よし食ったわもう匂いは食ったからごちそうさまでした。はい次おれが身を食いますからみなさん直ちに死去してくださあーい』
各々が決め台詞のようなものを言った後、掘りごたつから身を乗り出し出し抜刀した。
空中で刃たちがぶつかる音が屋形船の中に響いたかと思うと小さなカゴの中に詰められていたはずの小さなみかんの皮が綺麗に向かれた。
それもたった一瞬の出来事だ。
そのみかんの中身はなく
皮だけが残っていた。
『いやぁぁあ、やっぱつえーっ』
男3人が掘りごたつに
いつの間にか戻っている。
『まだまだだな。てめえら。まあいい線入ってた。キリトリ
線くらいいい線だった』
女はみかんを咀嚼しながらなにやら意味不明なことを呟いて
掘りごたつに入っていく。
女の名は 十六夜 誘 (イザヨイ・イザナ)
タケオとナグカワを救いこの屋形船へ招待した命の恩人だ。
十六夜誘との出会いは数時間前に遡る。
5時間前ーーーーーーーーーーーーーー
山田アンソニーは逃亡した。
あと一歩のところで目の前に現れたワニ頭にタケオは敗北した。
素手でパラオを掴みそのままタケオごとぶっ飛ばしたのだ。
毎日鍛えた後に鏡の前で自らの筋肉に話しかけては微笑んで話しかけてはほくそ笑んでいるのだろうなと安易に想像できるほど鍛え上げられた筋肉とどういう経緯でそうなったのか不明なワニ頭…。
間違いなく肉体からして男なのだが声は明らかに女のものだった。
『ちょっとまってください。アンソニーをお許しください。』
そう一言言ってワニ頭は瀕死寸前の山田アンソニーを軽々と肩に背負いあげると一瞬で空の彼方へと姿を消した。
土煙が舞い、そのあとには
目を真っ赤にしたナグカワ。
そのあとタケオはナグカワを連れて家まで送ろうとしていた
が…
突如現れた長髪の
サラリーマンによる急襲。
パラオはただアスパラガスに戻ってしまい刀にはなれない。
パラオが刀化できる時間は決まっているようだが、どのようなシステムなのかタケオ自身も未だにわかっていない。
このままでは長髪リーマンに撲殺されかねない。
正気を取り戻したものの、自分がタケオを斬ろうとした事実を理解できていない不安定な精神状態のナグカワは
刀を振れない。
丸腰のタケオが長髪リーマンに撲殺されようとされていたその時だった。
空からなにかが降って来た。
アスファルトが悲鳴をあげ砕ける。
軽い地鳴りがした直後再び空から何かが飛来し、身構える長髪リーマンを二度三度アスファルトへ叩きつけた。
『大丈夫か。同士よ。』
凛々しい目と強くたくましいものの高く清らかな声。
目の前には桃色の髪を肩まで伸ばし、緑々しい刀を後ろに回した両腕に引っ掛けて堂々とポーズを決める女が居た。
そしてその後ろには長髪リーマンの上に佇む男が3人。
これがタケオとナグカワが十六夜誘が出会った瞬間であった。
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