28 / 28
第3章 殲滅作戦始動編
26.深淵の入り口③
しおりを挟む『グレネードだッッッ』
勝呂が叫ぶ。
トタン屋根が震え始めた。
轟音が迫る。
鼓膜が引きちぎれそうな高音が周囲へ襲来する。
透明な水によって保たれていた筈の強固な囲いが消えたことを意味するように肌に突き刺さる強風と大量の煙。
それは雨音のバリアが消えたことを意味する
『え?』
勝呂は気付いた。
自らが両手に纏っていた雷光が消えた直後…大きな白銀のボディがこちらへ迫って来るのを…
巨大な銀色の弾丸が発射された事によるギミックなのかはたまた偶然の脅威か。
勝呂と雨音の異能は機能を失った。
倒れている敵の戦闘員達を跨ぎながら勝呂は走った。
状況が飲み込めていない雨音の元へ駆けるその足は雷光を帯びていない。
人間の疾走は殺戮兵器の速度を超えることはできない。
そして白銀の凶弾は着弾した。
橙色の烈火が夥しい粉塵と共にあたり一帯を燃やし尽くして悲惨。
トタン屋根はみるみるうちに黒く焦げ灰となり朽ちる。
倒れこむ戦闘員達が黒い煙に包まれ嗚咽や悲鳴があちらこちらへ聞こえたかと思うと爆音によって掻き消された。
臓器が一瞬で潰れたかと思うほどの圧が無論、二人を襲う。
トラックにでも轢かれたのかと思うほどの衝撃は継続的に二人の体へ浴びせられる。『ぁあぁぁぁあッッッがっ?!』
あまりの衝撃と迫り来る熱風と炎が勝呂の背中を襲う。
しかし勝呂は雨音の身体をしっかりと抱きしめそのまま走り出していた。
それは逃避というよりも衝撃と炎によって吹き飛ばされているに等しいが、
雨音の身の安全は確保していた。
瓦礫が…破れたトタンが。コンクリートの礫が津波のように押し寄せその一帯を飲み込んでいく。
痛みとも形容しがたい重力による暴力によって勝呂と雨音は呼吸ができない。
弾丸に仕込まれていた無数の釘のような刃物達が2度目の爆発と共に花開いた。
360度を見渡すかのようにその刃物達は綺麗に並び一斉に開花宣言を果たす。
『どうなってんだいこりゃあ』
アロハシャツが黒い羽の隙間から見え隠れした。
大きな翼が屋根から落下する勝呂を包む。
ドグマは無事、勝呂と雨音を救出すると無数の刃を薙いだ。
前方100メートル程だろうか。
再び飛来した悪魔は笑っているかのようだった。
グレネードは一つではなかったのだ。
『ちっ…また遠距離かよ。』
ドグマは察知した。黒い翼が消えていく感覚を。
『やばいんだな!あれが迫れば迫る程、
能力が消失するってわけか』
ドグマは大きな翼を4枚生やすと上空へ飛び立った。
銀色の悪魔はドグマを追撃せんと追尾し始める。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる