アニンバイツ

飲杉田楽

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第3章 殲滅作戦始動編

26.深淵の入り口③

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『グレネードだッッッ』
勝呂が叫ぶ。
トタン屋根が震え始めた。
轟音が迫る。
鼓膜が引きちぎれそうな高音が周囲へ襲来する。
透明な水によって保たれていた筈の強固な囲いが消えたことを意味するように肌に突き刺さる強風と大量の煙。
それは雨音のバリアが消えたことを意味する
『え?』
勝呂は気付いた。
自らが両手に纏っていた雷光が消えた直後…大きな白銀のボディがこちらへ迫って来るのを…

巨大な銀色の弾丸が発射された事によるギミックなのかはたまた偶然の脅威か。
勝呂と雨音の異能は機能を失った。
倒れている敵の戦闘員達を跨ぎながら勝呂は走った。
状況が飲み込めていない雨音の元へ駆けるその足は雷光を帯びていない。
人間の疾走は殺戮兵器の速度を超えることはできない。

そして白銀の凶弾は着弾した。
橙色の烈火が夥しい粉塵と共にあたり一帯を燃やし尽くして悲惨。
トタン屋根はみるみるうちに黒く焦げ灰となり朽ちる。
倒れこむ戦闘員達が黒い煙に包まれ嗚咽や悲鳴があちらこちらへ聞こえたかと思うと爆音によって掻き消された。
臓器が一瞬で潰れたかと思うほどの圧が無論、二人を襲う。
トラックにでも轢かれたのかと思うほどの衝撃は継続的に二人の体へ浴びせられる。『ぁあぁぁぁあッッッがっ?!』
あまりの衝撃と迫り来る熱風と炎が勝呂の背中を襲う。

しかし勝呂は雨音の身体をしっかりと抱きしめそのまま走り出していた。
それは逃避というよりも衝撃と炎によって吹き飛ばされているに等しいが、
雨音の身の安全は確保していた。
瓦礫が…破れたトタンが。コンクリートの礫が津波のように押し寄せその一帯を飲み込んでいく。
痛みとも形容しがたい重力による暴力によって勝呂と雨音は呼吸ができない。
弾丸に仕込まれていた無数の釘のような刃物達が2度目の爆発と共に花開いた。
360度を見渡すかのようにその刃物達は綺麗に並び一斉に開花宣言を果たす。

『どうなってんだいこりゃあ』

アロハシャツが黒い羽の隙間から見え隠れした。
大きな翼が屋根から落下する勝呂を包む。
ドグマは無事、勝呂と雨音を救出すると無数の刃を薙いだ。

前方100メートル程だろうか。
再び飛来した悪魔は笑っているかのようだった。
グレネードは一つではなかったのだ。
『ちっ…また遠距離かよ。』
ドグマは察知した。黒い翼が消えていく感覚を。
『やばいんだな!あれが迫れば迫る程、
能力が消失するってわけか』
ドグマは大きな翼を4枚生やすと上空へ飛び立った。
銀色の悪魔はドグマを追撃せんと追尾し始める。
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