アニンバイツ

飲杉田楽

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第3章 殲滅作戦始動編

25.深淵の入り口②

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コツコツとアスファルトの上を踊るハイヒール。
雨音の華麗な足捌きはその荒れた空間内ではより一層、華麗に映った。
パチパチと拍手の音が聞こえた。
その瞬間緑色の光がけたたましい唸り声をあげて手袋を食い破っていく。
『中火じゃあ済みそうもないからよお』勝呂の拍手が雨音のハイヒールがその一体に爆風をもたらして敵を迎え撃つ体勢を整え始めた。

しかしそれよりも早く無数のナイフが空から降り注いだ。
風を切るそのナイフは妙なオーラを放ちながら勝呂と雨音目掛けて落下する。
それは落下というより墜落が正しい。
目で追うのがやっとのスピードてナイフは突撃する。

黒いカラスが笑った。
それは表現として正しいのかと言われれば否だが、生き物のように見えてしまうほど生き生きときていた。
ドグマの黒い翼がナイフを抉っていく。
ただ落下するナイフではない。
無論殺傷能力の優れたナイフだ。
しかしドグマの翼の前にそのナイフは
皆無だ。

黒翼千龍型禁接人種のドグマ アルゴンティにとってこの程度のナイフの刃など大したことはなかった。
刃をを黒い翼に食いちぎれたナイフたちがバッタバッタと音を立てながらアスファルトや錆びついたトタン屋根へ落ちていく。

その中を雨音は水のバリアを作りながら進んでいく。その後に続いて緑色のうねった雷撃を纏いながら勝呂が進んでいく。

『つまらん。歯ごたえがねえ』
ドグマは黒い翼を折りたたみながら腕を組み深く息を吐いた。

勝呂と雨音のサポートをすることに専念したドグマのおかげでナイフの雨の無効化に成功はしたものの、これまでの任務で特攻を命じられてきたドグマにとって今回の任務はひたすら暇でしかなかった。
『歯ごたえあるやつが迎えに来てくれないかなあ…』

海の潮風が吹く。そんなもの来ないと退屈な返答をするかのようにその潮風は吹き続けた。


雨音のハイヒールの音がよく響く錆びたトタン屋根の上。
黒いスーツに防弾チョッキのようなものを見に纏った戦闘員達が一斉に銃を放った。

腰を捻り右脚で思い切り虚空を蹴り上げる雨音。

弾丸は雨音のすぐ側まできていたが
あっという間にその弾丸は雨音に届くことなく破裂し、その破裂したことで発生した火花が一瞬で火のカーテンを作り出し瞬時に煙が広がる。

『甘いわよ。この雨には敵わない』

戦闘員三人が一斉に翻った。
銃器はひしゃげ重い音を立てながら
戦闘員達を吹き飛ばした。
ハイヒールからは焦げたような臭いが漂い雨音が繰り出した蹴りによって皮膚が簡単に溶けてしまうほどの温度の雨の弾丸が戦闘員達へ飛んだことが他の戦闘員達に伝わった。

『おい。見ろ』

爆音があたり一体を包みその後いくつもの爆竹が炸裂したかの様な音と共に戦闘員達が宙を舞った。
勝呂の拍手だ。
緑色の電光は火のように畝り、五メートル先の煙突へ衝突した。

『あーらら、つまんないの。』
溜息を吐く雨音をよそに手から出る煙をパンパンと払う勝呂

『さーて、さっさと始末しようぜ。』
勝呂は砕け崩落した煙突の向こうに見える大きな倉庫を見た。

煌めく白銀。
気付いた時にはそれは発射された
『グレネードだッッッ』
勝呂はすぐさま後ろを振り向き雨音の元へ走った。


五秒後、コンテナが並ぶ区域一帯を消滅させた音がドグマの耳に届いた。

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