27 / 28
第3章 殲滅作戦始動編
25.深淵の入り口②
しおりを挟むコツコツとアスファルトの上を踊るハイヒール。
雨音の華麗な足捌きはその荒れた空間内ではより一層、華麗に映った。
パチパチと拍手の音が聞こえた。
その瞬間緑色の光がけたたましい唸り声をあげて手袋を食い破っていく。
『中火じゃあ済みそうもないからよお』勝呂の拍手が雨音のハイヒールがその一体に爆風をもたらして敵を迎え撃つ体勢を整え始めた。
しかしそれよりも早く無数のナイフが空から降り注いだ。
風を切るそのナイフは妙なオーラを放ちながら勝呂と雨音目掛けて落下する。
それは落下というより墜落が正しい。
目で追うのがやっとのスピードてナイフは突撃する。
黒いカラスが笑った。
それは表現として正しいのかと言われれば否だが、生き物のように見えてしまうほど生き生きときていた。
ドグマの黒い翼がナイフを抉っていく。
ただ落下するナイフではない。
無論殺傷能力の優れたナイフだ。
しかしドグマの翼の前にそのナイフは
皆無だ。
黒翼千龍型禁接人種のドグマ アルゴンティにとってこの程度のナイフの刃など大したことはなかった。
刃をを黒い翼に食いちぎれたナイフたちがバッタバッタと音を立てながらアスファルトや錆びついたトタン屋根へ落ちていく。
その中を雨音は水のバリアを作りながら進んでいく。その後に続いて緑色のうねった雷撃を纏いながら勝呂が進んでいく。
『つまらん。歯ごたえがねえ』
ドグマは黒い翼を折りたたみながら腕を組み深く息を吐いた。
勝呂と雨音のサポートをすることに専念したドグマのおかげでナイフの雨の無効化に成功はしたものの、これまでの任務で特攻を命じられてきたドグマにとって今回の任務はひたすら暇でしかなかった。
『歯ごたえあるやつが迎えに来てくれないかなあ…』
海の潮風が吹く。そんなもの来ないと退屈な返答をするかのようにその潮風は吹き続けた。
雨音のハイヒールの音がよく響く錆びたトタン屋根の上。
黒いスーツに防弾チョッキのようなものを見に纏った戦闘員達が一斉に銃を放った。
腰を捻り右脚で思い切り虚空を蹴り上げる雨音。
弾丸は雨音のすぐ側まできていたが
あっという間にその弾丸は雨音に届くことなく破裂し、その破裂したことで発生した火花が一瞬で火のカーテンを作り出し瞬時に煙が広がる。
『甘いわよ。この雨には敵わない』
戦闘員三人が一斉に翻った。
銃器はひしゃげ重い音を立てながら
戦闘員達を吹き飛ばした。
ハイヒールからは焦げたような臭いが漂い雨音が繰り出した蹴りによって皮膚が簡単に溶けてしまうほどの温度の雨の弾丸が戦闘員達へ飛んだことが他の戦闘員達に伝わった。
『おい。見ろ』
爆音があたり一体を包みその後いくつもの爆竹が炸裂したかの様な音と共に戦闘員達が宙を舞った。
勝呂の拍手だ。
緑色の電光は火のように畝り、五メートル先の煙突へ衝突した。
『あーらら、つまんないの。』
溜息を吐く雨音をよそに手から出る煙をパンパンと払う勝呂
『さーて、さっさと始末しようぜ。』
勝呂は砕け崩落した煙突の向こうに見える大きな倉庫を見た。
煌めく白銀。
気付いた時にはそれは発射された
『グレネードだッッッ』
勝呂はすぐさま後ろを振り向き雨音の元へ走った。
五秒後、コンテナが並ぶ区域一帯を消滅させた音がドグマの耳に届いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる