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1幕 白峰高校殺人事件
4話 音響く個室
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Q.平幕くんはどんな子でした?
「頼りがいある奴」
「リーダー的存在かな」
「陽キャ? チャラかったな」
Q.平幕くんの事で噂とか聞いたことある?
「あるぜ、女の扱い方は酷いってことを聞いた」
「女子の間だと、女垂らしっていうのは常識になってるね」
「いじめもあったみたいだけど、やる事が小さ過ぎたな」
犯行との関係性の薄い生徒から順に生徒全員に聞いてみたが、皆おなじ様な答えが帰ってきた。
ただ、少数派の意見も少なからずあった。
演劇で助演を担当していた鬱峰修斗はこの様に供述している。
「あいつは表じゃ陽キャだったけど、俺以上にマイナス思考の塊だったな」
ヒロイン役を演じていた田村さんはこう言った。
「平幕くんは、いじめたい人には虐めるよ。他の奴らはその事実を隠してるけどね」
「イジメがあったってことだね?」
「はい。私も去年まではイジメられてましたから」
「アイツは特定の人を順番にこき使うな。そういう精神はブラック企業の社長そっくりだ。そういえば、最近は東《あづま》が標的だったはずだ」
酒井という裏方は顎を抑えながらそう答えた。
「東くん?その人はどんな人?」
「俺と同じく裏方やってんだけどさ、髪の毛がツンツンとんがってるヤツさ」
「そうですか。本名は」
「本名は東奈留。」
ここまでの間で考えるとイジメを引き金とした犯罪であるというのが合ってそうだ。
ただ、話を聞く限り特定の人物だけではなく、色々な人を虐めていたところを考えると犯人を絞るのは難しい。だが、1番犯人の可能性があるとすれば今も受けていた東くんなのだろう。
ビデオカメラのデータが見つかれば何の問題もないのだが、探しても見つかることも少ない。
現場を見ても鑑識からの情報を見ても、犯人の足跡は死体の側までしか続いておらず、天井に釣り上げられている背景の指紋確認もしたが証拠が残っていない。
まず、東という男子生徒に話を聞く他なさそうだ。
「松原さん、東くんをお願いします」
松原さんが軋むドアを開けて呼びに行く。
学校側が用意してくれたホコリの積もった教室を使い、事情聴取を行なっている。
僕はホコリに強くない為、マスクを着用しているが、目に沁みてくるほどホコリがあるようだ。
今日だけで何十回と聞いた軋む音と共にドアが開く。
「失礼します。東です」
「どうぞ」
彼は今日、事情聴取した人達の中でずば抜けて小柄で痩せている。
声は体に反して太いようだ。
「東くん、平幕君はどんな人でしたか」
現段階で彼に容疑をかけている事をバレたくないので他人と同じように言う。
「手当たり次第に人をこき使っていく嫌なヤツでしたね。でも、誰かが殺してくれたので清々してます」
「そうか、東くんは確か裏方の仕事でしたよね。犯行時刻どこにいましたか?」
「ナレーションの台詞があったのでコントロール室の方にいました」
「コントロール室ですか。その時、他に誰か一緒にいましたか?」
「アリバイってヤツですか?誰とも一緒にはいなかったけど、僕は犯行当時に丁度、台詞が入っていましたよ」
「そうですよね。ありがとうございました。以上になります」
東くんは静かに教室を出て行った。
事情聴取をすべき人は一通り終わり、僕も部屋を出ようと立ち上がった。
だけど、長時間座り続けていたので、腰と肩が凝り壁を這うようにしてドアを開けた。
廊下から見える外は静かに星が光っている。
いつの間にやら陽が沈んでしまっていた。
窓を開けると肌寒い風がふわりと室内に入ってくる。
ただ、久方ぶりの外の空気に唆られてマスクを外し目一杯に息を吸い込んだ。
「ああ、レモン食べたい」
漏れた言葉も乾いた匂いのする風に溶けていった。
僕の足元を照らすために玄関までの廊下は全て蛍光灯で照らされている。
自分の為に灯されている蛍光灯に優越感を感じて、ニヤニヤと口角を上げて歩いて行った。
東君にはアリバイがあるか。彼が犯行に及んだ可能性は高かったけど違うのか。
では、誰が犯行に及んだのだろうか。
気絶させられているという男子生徒が鍵を握っているのかも知れない。
だとすれば、彼がもう一度被害に遭う、口封じされる事も警戒しないとなんだな。
松原さんに頼もう。
玄関に着けば、缶コーヒーで手を温めている松原さん達が待っていた。
外から静かに風が吹き抜ける。
ああ、確かに暖かい缶コーヒーが飲みたくなるな。
月が地を照らし、地で静かに夜は更けていく。
「頼りがいある奴」
「リーダー的存在かな」
「陽キャ? チャラかったな」
Q.平幕くんの事で噂とか聞いたことある?
「あるぜ、女の扱い方は酷いってことを聞いた」
「女子の間だと、女垂らしっていうのは常識になってるね」
「いじめもあったみたいだけど、やる事が小さ過ぎたな」
犯行との関係性の薄い生徒から順に生徒全員に聞いてみたが、皆おなじ様な答えが帰ってきた。
ただ、少数派の意見も少なからずあった。
演劇で助演を担当していた鬱峰修斗はこの様に供述している。
「あいつは表じゃ陽キャだったけど、俺以上にマイナス思考の塊だったな」
ヒロイン役を演じていた田村さんはこう言った。
「平幕くんは、いじめたい人には虐めるよ。他の奴らはその事実を隠してるけどね」
「イジメがあったってことだね?」
「はい。私も去年まではイジメられてましたから」
「アイツは特定の人を順番にこき使うな。そういう精神はブラック企業の社長そっくりだ。そういえば、最近は東《あづま》が標的だったはずだ」
酒井という裏方は顎を抑えながらそう答えた。
「東くん?その人はどんな人?」
「俺と同じく裏方やってんだけどさ、髪の毛がツンツンとんがってるヤツさ」
「そうですか。本名は」
「本名は東奈留。」
ここまでの間で考えるとイジメを引き金とした犯罪であるというのが合ってそうだ。
ただ、話を聞く限り特定の人物だけではなく、色々な人を虐めていたところを考えると犯人を絞るのは難しい。だが、1番犯人の可能性があるとすれば今も受けていた東くんなのだろう。
ビデオカメラのデータが見つかれば何の問題もないのだが、探しても見つかることも少ない。
現場を見ても鑑識からの情報を見ても、犯人の足跡は死体の側までしか続いておらず、天井に釣り上げられている背景の指紋確認もしたが証拠が残っていない。
まず、東という男子生徒に話を聞く他なさそうだ。
「松原さん、東くんをお願いします」
松原さんが軋むドアを開けて呼びに行く。
学校側が用意してくれたホコリの積もった教室を使い、事情聴取を行なっている。
僕はホコリに強くない為、マスクを着用しているが、目に沁みてくるほどホコリがあるようだ。
今日だけで何十回と聞いた軋む音と共にドアが開く。
「失礼します。東です」
「どうぞ」
彼は今日、事情聴取した人達の中でずば抜けて小柄で痩せている。
声は体に反して太いようだ。
「東くん、平幕君はどんな人でしたか」
現段階で彼に容疑をかけている事をバレたくないので他人と同じように言う。
「手当たり次第に人をこき使っていく嫌なヤツでしたね。でも、誰かが殺してくれたので清々してます」
「そうか、東くんは確か裏方の仕事でしたよね。犯行時刻どこにいましたか?」
「ナレーションの台詞があったのでコントロール室の方にいました」
「コントロール室ですか。その時、他に誰か一緒にいましたか?」
「アリバイってヤツですか?誰とも一緒にはいなかったけど、僕は犯行当時に丁度、台詞が入っていましたよ」
「そうですよね。ありがとうございました。以上になります」
東くんは静かに教室を出て行った。
事情聴取をすべき人は一通り終わり、僕も部屋を出ようと立ち上がった。
だけど、長時間座り続けていたので、腰と肩が凝り壁を這うようにしてドアを開けた。
廊下から見える外は静かに星が光っている。
いつの間にやら陽が沈んでしまっていた。
窓を開けると肌寒い風がふわりと室内に入ってくる。
ただ、久方ぶりの外の空気に唆られてマスクを外し目一杯に息を吸い込んだ。
「ああ、レモン食べたい」
漏れた言葉も乾いた匂いのする風に溶けていった。
僕の足元を照らすために玄関までの廊下は全て蛍光灯で照らされている。
自分の為に灯されている蛍光灯に優越感を感じて、ニヤニヤと口角を上げて歩いて行った。
東君にはアリバイがあるか。彼が犯行に及んだ可能性は高かったけど違うのか。
では、誰が犯行に及んだのだろうか。
気絶させられているという男子生徒が鍵を握っているのかも知れない。
だとすれば、彼がもう一度被害に遭う、口封じされる事も警戒しないとなんだな。
松原さんに頼もう。
玄関に着けば、缶コーヒーで手を温めている松原さん達が待っていた。
外から静かに風が吹き抜ける。
ああ、確かに暖かい缶コーヒーが飲みたくなるな。
月が地を照らし、地で静かに夜は更けていく。
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