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1幕 白峰高校殺人事件
5話 第二の犯行
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一晩が明けて家から出ると外は雨がポツポツと降っていた。
雨は嫌いだからと早く現場に向かう。
校門の前に来た時、1人の男子生徒が学校の中に入っていった。
まだ、学生が来るには早すぎる時間だった。
ただ、部活かなんかだろうと思い見逃していた。
「おはようございます」
朝一で聞いたのは予想をしていた通りに奈津子さんだった。
でもお互いに朝だからか、静かに挨拶を交わした。
「それなんですか?」
やはり、犬やら猫やらは鼻がいいようで、持っていた紙袋に目をやった。
「見ます?犬は柑橘苦手だと思いますけど」
「犬じゃない、馬鹿にすんな」
そういうもんだから、紙袋を開けて中を見せた。
「何ですかこれ、レモンですか?」
柑橘は少しだけ苦手なようだ。顔が酸っぱそうだ。
「レモンだよ。食べたくなったんだ」
「にしても量が多くはないですか?何十個入ってるんですか?」
紙袋を指でツンツンしている。一体なにをしたいのかは分からないが、なんとなく可愛い。
「8個だよ」
「へぇ、そんなに食べるんですか」
そういうと、また現場の検証に戻っていった。
昨日、俺が気絶していた間に松原さん達が推理材料を探していてくれたようで、その内容を昨夜メールで送ってくれていた。
今日も学校は通常通りに開校するようで、体育館には立ち入り規制がかかっていたので安心だった。
体育館は為の打つ音が拡張されて響いている。
事情聴取も終わり、残すはこの現場にある物だけだ。この事件に関しては捜査一課もお手上げだろう。それほど、完璧に近かった。
「解きますか」
体育館の真ん中に座り込み、目を瞑る。
ビデオを再生させるように事件に推理を立てていく。
「やっぱダメですね」
俺が諦めたのは一分も経たなかった。
逃走の足取りが取れなければ何も手がつけられなかった。
松原さんと話をしていると、学校のチャイムが鳴った。
学校の予定表を貰っているから時間を見ると、始業の時間だった。
「チャイムも鳴ったし、気を入れ直して証拠を探すか」
松原さんの音頭で再び探し始める。
ステージの上に吊るされている金網の橋を改めて調べると、ホコリのついていないところがあった。
橋の側面に値するところだった。
背景より壁側にはホコリが付いており、コントロール室に向けて所々ホコリが無かった。
「松原さん、犯人はやはりココを通って逃げたみたいです。不規則にホコリがないところがあります」
「そうか、でもまず仮にそこを通ったとして、そこからどうやって鍵を開けたっていうんだ?」
脚立の下から松原さんが聞いてくる。
「犯行がコントロール室にいた東君である確率があります」
「いや、それは不可能だ。コントロール室と繋がるドアは特殊で内鍵がない。外から開けるにも、うちから開けるにも先生が所持していた鍵が必要だ」
鍵が必要か。また厄介な。先生は校長先生と常に隣にいたと聞いている。周りの人間も証言しているから、先生の関与はない。
誰かが鍵を盗んだとも言い難い。
物思いに耽っている時、体育館の入り口から男性の先生が走って来た。
「警察の方!生徒が死体で見つかりました!」
「なんだって!いま行きます!」
松原さんが警察らしく言うと、奈津子さんと1番に駆けて行った。
僕もすぐに後をついて行く。体力的問題ですぐに差が開いたが、かろうじて見失わなかった。
集まる生徒達を掻き分けて、案内されたのは、教室が1つもない5階の男子トイレだった。
「ここの1番奥です」
先生達がトイレの前に集まっており、恐怖で震えていた。
「奈津子、警察を呼べ。名探偵、一緒に来てくれ」
「分かりました」
そう言うと、松原さんは白い手袋をはめてトイレの中に入って行った。
「これは、悲惨だな。個室いっぱいに血飛沫が飛んでいる。」
1番奥の個室は洋式トイレで、便座の上に座り込むように死体があり、まるでペイントされたように個室が赤くなっていた。
そして、殺されていたのは今朝見かけた男子学生だった。
「でも、この現場おかしくないですか?なんで、犯人のいたであろう場所にも血飛沫が付いてるんだろう。これじゃあ、犯行は人じゃない」
「言われてみれば、そうだな。じゃあなんだ、この壁の血は。血じゃないのか?」
しかし、壁に着く色は血の色だった。生臭い鉄の匂いもそのままにする。
「松原さん、ハンカチを貸してもらえませんか?」
「なんだ?気持ち悪くなったのか?」
「いえ、そういうわけでは」
松原さんからハンカチを受け取ると、ハンカチで壁の一部を拭き取った。
「おい、あんまり現場をいじるな」
そんな警告も無視して元の色が見えるまで擦る。
こんなもんかな?
ハンカチに付着した匂いを嗅ぐと、それは血の匂いじゃなかった。
「これ、血糊ですね。全部が血なわけじゃないと思います」
「なんで、わざわざ血糊を塗る」
確かにそうなんだ。被害者のダイレクトメッセージでもあるのだろうか。でも、こうもなっては血と血糊を分けるのが大変だ。
もし、ダイレクトメッセージじゃなかったとして、だとしたら、捜査の撹乱。
「分からないです。でも、いま分かるのは、恐らくこの被害者がビデオテープの持ち主です」
「なんで分かる」
「この被害者の左手には盗まれたのと同じサイズのメモリーの形だけ血がない」
皮の厚い彼の手には唯一皮膚が見えるようにメモリーの形があった。
「犯人はメモリーを奪うために殺したということか?」
「そう考えるのが妥当でしょう」
メモリーの行き場は分からないので、まずはこの人の人間関係を洗うのが良いだろう。
そうすると、恐らくは東君が捜査線上に浮上するはずだ。
雨は嫌いだからと早く現場に向かう。
校門の前に来た時、1人の男子生徒が学校の中に入っていった。
まだ、学生が来るには早すぎる時間だった。
ただ、部活かなんかだろうと思い見逃していた。
「おはようございます」
朝一で聞いたのは予想をしていた通りに奈津子さんだった。
でもお互いに朝だからか、静かに挨拶を交わした。
「それなんですか?」
やはり、犬やら猫やらは鼻がいいようで、持っていた紙袋に目をやった。
「見ます?犬は柑橘苦手だと思いますけど」
「犬じゃない、馬鹿にすんな」
そういうもんだから、紙袋を開けて中を見せた。
「何ですかこれ、レモンですか?」
柑橘は少しだけ苦手なようだ。顔が酸っぱそうだ。
「レモンだよ。食べたくなったんだ」
「にしても量が多くはないですか?何十個入ってるんですか?」
紙袋を指でツンツンしている。一体なにをしたいのかは分からないが、なんとなく可愛い。
「8個だよ」
「へぇ、そんなに食べるんですか」
そういうと、また現場の検証に戻っていった。
昨日、俺が気絶していた間に松原さん達が推理材料を探していてくれたようで、その内容を昨夜メールで送ってくれていた。
今日も学校は通常通りに開校するようで、体育館には立ち入り規制がかかっていたので安心だった。
体育館は為の打つ音が拡張されて響いている。
事情聴取も終わり、残すはこの現場にある物だけだ。この事件に関しては捜査一課もお手上げだろう。それほど、完璧に近かった。
「解きますか」
体育館の真ん中に座り込み、目を瞑る。
ビデオを再生させるように事件に推理を立てていく。
「やっぱダメですね」
俺が諦めたのは一分も経たなかった。
逃走の足取りが取れなければ何も手がつけられなかった。
松原さんと話をしていると、学校のチャイムが鳴った。
学校の予定表を貰っているから時間を見ると、始業の時間だった。
「チャイムも鳴ったし、気を入れ直して証拠を探すか」
松原さんの音頭で再び探し始める。
ステージの上に吊るされている金網の橋を改めて調べると、ホコリのついていないところがあった。
橋の側面に値するところだった。
背景より壁側にはホコリが付いており、コントロール室に向けて所々ホコリが無かった。
「松原さん、犯人はやはりココを通って逃げたみたいです。不規則にホコリがないところがあります」
「そうか、でもまず仮にそこを通ったとして、そこからどうやって鍵を開けたっていうんだ?」
脚立の下から松原さんが聞いてくる。
「犯行がコントロール室にいた東君である確率があります」
「いや、それは不可能だ。コントロール室と繋がるドアは特殊で内鍵がない。外から開けるにも、うちから開けるにも先生が所持していた鍵が必要だ」
鍵が必要か。また厄介な。先生は校長先生と常に隣にいたと聞いている。周りの人間も証言しているから、先生の関与はない。
誰かが鍵を盗んだとも言い難い。
物思いに耽っている時、体育館の入り口から男性の先生が走って来た。
「警察の方!生徒が死体で見つかりました!」
「なんだって!いま行きます!」
松原さんが警察らしく言うと、奈津子さんと1番に駆けて行った。
僕もすぐに後をついて行く。体力的問題ですぐに差が開いたが、かろうじて見失わなかった。
集まる生徒達を掻き分けて、案内されたのは、教室が1つもない5階の男子トイレだった。
「ここの1番奥です」
先生達がトイレの前に集まっており、恐怖で震えていた。
「奈津子、警察を呼べ。名探偵、一緒に来てくれ」
「分かりました」
そう言うと、松原さんは白い手袋をはめてトイレの中に入って行った。
「これは、悲惨だな。個室いっぱいに血飛沫が飛んでいる。」
1番奥の個室は洋式トイレで、便座の上に座り込むように死体があり、まるでペイントされたように個室が赤くなっていた。
そして、殺されていたのは今朝見かけた男子学生だった。
「でも、この現場おかしくないですか?なんで、犯人のいたであろう場所にも血飛沫が付いてるんだろう。これじゃあ、犯行は人じゃない」
「言われてみれば、そうだな。じゃあなんだ、この壁の血は。血じゃないのか?」
しかし、壁に着く色は血の色だった。生臭い鉄の匂いもそのままにする。
「松原さん、ハンカチを貸してもらえませんか?」
「なんだ?気持ち悪くなったのか?」
「いえ、そういうわけでは」
松原さんからハンカチを受け取ると、ハンカチで壁の一部を拭き取った。
「おい、あんまり現場をいじるな」
そんな警告も無視して元の色が見えるまで擦る。
こんなもんかな?
ハンカチに付着した匂いを嗅ぐと、それは血の匂いじゃなかった。
「これ、血糊ですね。全部が血なわけじゃないと思います」
「なんで、わざわざ血糊を塗る」
確かにそうなんだ。被害者のダイレクトメッセージでもあるのだろうか。でも、こうもなっては血と血糊を分けるのが大変だ。
もし、ダイレクトメッセージじゃなかったとして、だとしたら、捜査の撹乱。
「分からないです。でも、いま分かるのは、恐らくこの被害者がビデオテープの持ち主です」
「なんで分かる」
「この被害者の左手には盗まれたのと同じサイズのメモリーの形だけ血がない」
皮の厚い彼の手には唯一皮膚が見えるようにメモリーの形があった。
「犯人はメモリーを奪うために殺したということか?」
「そう考えるのが妥当でしょう」
メモリーの行き場は分からないので、まずはこの人の人間関係を洗うのが良いだろう。
そうすると、恐らくは東君が捜査線上に浮上するはずだ。
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