ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

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第36話 水を飲まない猫

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「おおっ、仔猫のお医者さん! また再びこの集落しゅうらくおとずれてくれるとは、とてもありがたいナォ! また我々を助ける為に活躍かつやくしてくれることを、期待きたいしているナォッ!」

 ぼくが来たと聞きつけて、集落のおさけつけてきた。
 集落のおさは、期待きたいちたキラキラした目でぼくを見つめてくる。

「もうはなさない」とばかりに、ぼくの手を両手でギュッとにぎりしめた。
 正直、このおさは苦手なんだよなぁ……。
 集落のなやみをぼくが全部解決かいけつしちゃったもんだから、ぼくにたよりっきりになっちゃったんだ。
 依存心いぞんしん(何かにたよる気持ち)が強いヤツは、ちょっとでも優しくするとこうなるんだよね。

 ぼくは困っている人がいたら誰彼だれかれかまわず助けちゃう性格だから、こういうことがよくあるんだ。
「助ける相手は選べ」って、良く言われるけどさ。
 お医者さんは相手が誰であろうとも、患者さんがいたら助けなければならない。

 集落のおさは、ぼくがいなくなったら変わってくれるかと思っていたんだけど変わらなかったようだ。
 それとも、ぼくがまた来ちゃったから元に戻っちゃったのかな。
 なつかしさでつい立ちっちゃったけど、間違まちがいだったかも。

 実はこの集落の猫たとが安全にらせているかどうか、ずっと気になっていたんだよね。
 キランソウの群生地ぐんせいち(たくさん生えている場所)まで猫たちを、ここまで導いて来たのはぼくだから。
 もしここに連れてきたせいで猫たちが苦労くろうしているとしたら、責任せきにんを取らなくてはならない。

「ここでらし始めて、いかがですミャ? 何か困っていることは、ありませんミャ?」
「いやはや、ここに来てからというもの毒虫にされる被害ひがいもなくなりましたナォ。ケガも病気もキランソウで治せるようになって、みんな元気にらしているナォ。それもこれも全部、君のおかげナォ」

 おさは、ニコニコと笑いながら答えた。
 ここの心地ごこちは良いらしく、猫たちは平和にらせているようだ。
 それを聞いて、心の底から良かったと安心した。

 と、安心したのもつか
 おさは、問題点を話し始める。

「ここの心地ここちは、良いんだけどナォ。最近、冷たいお水を飲んでおなかを壊す猫が増えてきたナォ」

 冬が近付いてきたのか、このところ冷え込むようになってきた。
 川を流れる水もとても冷たくて、飲むとおなかが冷えてしまう。
 猫はぽんぽんおなかがぺいんぺいいたいいたいになりやすいから、水が冷たすぎると水を飲まなくなっちゃうんだよね。

 猫は寒いのが苦手だから、「水飲み場まで行くのが寒い」という理由で、水を飲まなくなる猫もいるらしい。
 もともと猫は砂漠さばくんでいたから、あまり水を飲まない動物だと言われている。
 猫が水をガブガブ飲むようになったら、それはそれで病気だけど。
 逆に全然飲まないと、また別の病気になってしまう。
 水を飲んだり水を飲まなかったりが原因で、病気になっている可能性があるな。

「すみません、病気になっていないかどうか診察しんさつさせてもらっていいですミャ?」
「おおっ、もちろんナォ! ぜひ、全員調べて欲しいナォッ!」

 おさは大喜びで大声を張り上げ、集落の猫を呼び集めてくれた。
 今のはおさを調べるつもりで、声をかけたんだけど。  
 確かに集団健康診断しゅうだんけんこうしんだんということで、全員調べた方が良いか。
 集まってくれた11匹の猫たちを、順番に1匹ずつ『走査そうさ』していく。

走査そうさ』してみると、ほとんどの猫が「下部尿路疾患かぶにょうろしっかん」にかかっていた。
 下部尿路疾患は、猫がかかりやすい病気トップ3に入っている。
 下部尿路疾患は、水を飲まなくておしっこが出なくなることで起こる病気のことをす。

 特に寒い冬に、猫が水を飲まなくなることで起こりやすい。
 下部尿路疾患は、ちゃんと毎日新鮮しんせんな水を飲んでいれば予防出来る病気なんだけど。
 冷たい水を飲んでゴロゴロおなかをピーちゃんこわしているや、ぽんぽんおなかがぺいんぺいんいたいいたいになっている猫も多かった。
 ぼくもゴロゴロピーちゃんになった時に、冷たい水を飲んでさらにおなかを冷やしたことがあった。

 どうすれば、猫たちを助けられるか?
 困った時は、教えて、『走査そうさ

下部尿路疾患かぶにょうろしっかん処置しょち食事療法しょくじりょうほう鎮痙攣剤ちんけいれんざい抗生物質こうせいぶっしつの投与を飲ませる水分摂取水を飲ませる

 食事療法しょくじりょうほうって言われても、野生の猫に食事療法しょくじりょうほう指導しどうは現実的じゃない。
 野生の猫は、その日その時に狩れた獲物えものしか食べることが出来ないんだから。

 やっぱり毎日、ちゃんと水を飲んでもらうのが一番なんだ。
 どうにかして、水を飲んでもらう方法を考えよう。
 でもその前にまずは、ピーちゃんを治そう。

 薬草には、体を温める「よう」と体を冷やす「いん」がある。
 ピーちゃんにも、陰と陽がある。
 熱があってピーちゃんの場合は、陰の薬草で体を冷ます。
 体が冷えてピーちゃんの場合は、陽の薬草で体を温める必要がある。

 キランソウは健胃けんい(胃を元気にする)とピーちゃんに効果があるんだけど。
 体を冷やす陰の薬草だから、今は使えない。
 健胃に効果がある、陽の薬草を探さなければならない。
 ってことで、頼むぞ、『走査そうさ

対象たいしょう:キク科シカギク属カモミール』

薬効やっこう風邪かぜ下痢げり胃腸炎いちょうえん疲労回復ひろうかいふく、リウマチ、神経痛しんけいつう腰痛ようつう安眠あんみん作用、鎮静ちんせい作用、美肌びはだ効果、生活習慣病せいかつしゅうかんびょうの予防、抗酸化こうさんか作用、抜け毛、薄毛予防、糖尿病とうにょうびょう筋弛緩きんしかん作用、血流改善けつりゅうかいぜん、冷え症』

 カモミールは、おばあちゃんがカモミールティーを飲んでいたっけ。
 ぼくにもハチミツ入りのカモミールティーを、飲ませてくれたことがあった。
 リンゴみたいな、甘い匂いがするんだよね。

 でも花は枯れて、カラカラになっている。
 おばあちゃんが、「カモミールティーは葉っぱじゃなくて、お花を乾燥かんそうさせたものなんだよ」と言っていた。
 ってことは、花が薬になるってこと?

概要がいよう:開花期に花をみ取って、陰干かげぼししたものを薬草としてもちいる』

 じゃあ、この枯れた花を粉にして使えば良いのか。
 粉だと飲みにくいから、水に溶かして飲ませよう。
 でも、冷たい水だと飲んでもらえないよな。

 どうやって、猫に水を飲ませれば良いんだろう?
 もしかすると猫が水を飲まないのは、水飲み場の環境かんきょうが良くないのかもしれない。
 一度、水飲み場を調べてみる必要がありそうだ。
 水飲み場を見に行こうとしたら、おさが話しかけてきた。

「おや? どちらへ行かれるナォ?」
「猫たちが水を飲まない理由りゆうを、調べ行くだけですミャ」
「だったら、一緒に行くナォ」

 え? なんで来るの? 来ないで。
 そこで、お父さんとお母さんも近付いて来る。

「シロちゃん、おささんとどこ行くニャー?」
「シロちゃんに何かあったら、困るニャ」

 ふたりともおさが、ぼくに依存いぞんしているのを知っているから心配しているんだ。
 ぼくは、お父さんとお母さんに事情を説明する。

「ちょっと、水飲み場を調べに行くだけなんだけどミャ」
「だったら、私たちも一緒に行くニャ」

 お父さんとお母さんはニッコリと笑って、着いて来てくれることになった。
 数匹の猫たちも「なんニャなんニャ?」と、興味津々きょうみしんしんいて来る。
 水飲み場を調べるだけなのに、そんなにゾロゾロいて来られても困るんだけどなぁ。

 実際じっさいに水飲み場に来てみたら、理由りゆうはすぐ分かった。
 水飲み場となる川は、集落から少し離れた場所にある。
 これは雨で川があふれても、猫たちが水害すいがいわない為だったんだけど。
 寒い日に、ここまで来るのはキツいな。

 川の周辺しゅうへんは木々にかこまれていて、一日中日陰ひかげ
 川には綺麗きれいな水が流れていて、いつも冷たい川風かわかぜが吹いている。
 試しに水を飲んでみたら、氷水こおりみずみたいに冷たかった。
 夏はすずしくて良いけど、冬は寒すぎる。
 これじゃ、水を飲みに来られないワケだ。

 初めてこの場所に来た時は、夏のあつい日だった。
 だから、冬のことまで考えなかったんだよね。

 よし、猫が水を飲まない理由りゆうは分かったぞ。
 さて次は、どうやって水を飲ませるかだ。
 水が冷たくなければ、飲んでくれるはず。

 だったら、集落内しゅうらくないに池を作ったらどうだろうか?
 冬でも日差ひざしはあったかいから、太陽光たいようこうで池の水をあっためるんだ。

 まずは、一日中日当ひあたりが良い場所に、池となる穴をる。
 次に、川上かわかみから水を引く水路すいろを掘る。
 続いて、古い水を流す排水路はいすいろを掘る。
 排水路はいすいろ川下かわしもつなぎ、古い水は川へ戻す。
 
 この計画が上手くいけば、猫たちは水を飲んでくれるはず。
 なんでもやってみなくちゃ、どうなるか分からない。
 ちょうどお手伝いしてくれそうな猫たちもいるし、猫の手を借りて池を作ってみよう。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――
【猫がカモミールを食べても平気?】
 カモミールは、猫が食べられる植物。
 ローズマリー、ローズヒップ、シソ、ヨモギ、キャットニップ、イネ科の草なんかも食べられる。
 だけど、キク科アレルギーがある猫もいるので気を付けてあげよう。
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