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第49話 またいつかどこかで
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ぼくとグレイさんはいつまでも、別れを惜しんで泣き続けた。
グレイさんに抱き締められていると、あったかくて気持ちが良い。
このぬくもりが、恋しい。
もう二度と会えないと分かっているからこそ、離れがたい。
集落の猫たちと比べたら、グレイさんと一緒に過ごした時間はとても短い。
だけどぼくにとってグレイさんは、集落の猫たちと同じくらい大切なんだ。
しばらくすると泣き止んだグレイさんが、ぼくの顔をペロペロ舐めて慰めてくれた。
『シロちゃん、とても離れがたいがそろそろお別れしようか。あまり遅くなると、集落の猫たちが心配するぞ』
「うん、分かっているミャ。でもお別れしたら、もう会えないミャ?」
『そうだな。もともとオレは新しい番と縄張りと群れを作る為に、旅をしていたんだ。シロちゃんとお別れしたら、ここを離れるつもりだ』
「分かったミャ……」
グレイさんの返事を聞いて、とても落ち込んだ。
頭では理解していたけど、グレイさんから言われるとショックは大きい。
ぼくは自分の首から下げていた石のナイフを外して、グレイさんに差し出す。
「グレイさん、これあげるミャ。お肉を切る時に、使ってミャ」
『ありがとう。シロちゃんからの最後のプレゼント、愛の証として大切にするよ』
「グレイさん、さようならミャ。グレイさんのこと、ずっと忘れないミャ」
『ああ、オレもずっと忘れない。会えなくても、シロちゃんのことは死ぬまで愛し続ける。さようならだ、オレのシロちゃん。愛している』
グレイさんは柔らかく微笑んだ後、背を向けて走り去っていった。
ぼくは、遠ざかっていくグレイさんの姿が見えなくなるまで、その場から動けなかった。
まだほんのりと、グレイさんのぬくもりが残っている。
冷たい風が吹けば、そのぬくもりはあっけなく消えていった。
やがて、グレイさんの姿は見えなくなった。
ぼくとグレイさんの別れを見守っていたお父さんとお母さんが、ぼくを優しく抱き寄せる。
「シロちゃん、ちゃんとお別れは出来たかニャー?」
「グレイさんは、良いトマークトゥスだったニャ。私達もグレイさんとお別れするのは、とっても悲しいニャ」
「毛づくろいしてグレイさんの臭いを消してから、集落へ帰るニャー」
そう言って、ふたりはぼくの毛づくろいを始める。
お父さんとお母さんの気遣いは、とても嬉しい。
だけど今は、グレイさんの臭いがなくなってしまうことが悲しくて仕方がなかった。
毛づくろいをしてもらった後、ぼくたちはイチモツの集落へ戻った。
日向ぼっこをしていたミケさんに駆け寄って、涙をこらえながら伝える。
「ミケさん、グレイさんとお別れしてきましたミャ。グレイさんも『新しい縄張りを探す』と言って、離れていきましたミャ」
「それは良かったにゃ。シロちゃんが『トマークトゥスと一緒に出て行く』と言ったら、どうしようかと思ったにゃ」
ミケさんは心の底から安心した顔で、ぼくの頭を撫でてくれた。
褒めてもらえたことは嬉しいけど、ぼくの心は深い悲しみに沈んでいた。
どうしても、グレイさんのことを諦めきれない。
グレイさんの最後の笑顔が、忘れられない。
あの時の笑顔は、愛しさと悲しみに彩られていた。
グレイさんも、もう二度と会えないと分かっている顔だった。
グレイさんを思い出すと、胸が締め付けられる。
この悲しみは、時間が経てばいつか忘れられるのだろうか。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
翌日、集落の猫たちがぼくのところへ集まってきた。
「シロちゃん、あのトマークトゥスを追い払ったんだってニャア?」
「シロちゃんは、やっぱりスゴいニャ~」
猫たちは、「トマークトゥスがいなくなって良かった」と喜んでいる。
天敵がいなくなったことを喜ぶのは、当たり前。
分かっているんだけど、ぼくは喜べない。
大好きな友達と、もう二度と会えないんだから。
だけどいつまでも悲しい顔ばかりしていたんじゃ、みんなに心配を掛けてしまう。
みんなの前では、精いっぱいの笑顔を作った。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
グレイさんを思い出して、寂しくなって落ち込む度に、お父さんとお母さんが慰めてくれた。
お父さんとお母さんだけは、ぼくの悲しみを分かってくれた。
「シロちゃんは、そんなにグレイさんのことが好きだったんだニャー……」
「あったかくなったら、また3匹で旅へ行きましょうニャ。旅をしていれば、きっといつかどこかでグレイさんと会えるニャ」
「そうか、その手があったミャ!」
グレイさんが集落の近くにいるのはダメだけど、ぼくがグレイさんに会いに行くことは出来るんだ。
グレイさんがどこへ行ったかは、『走査』が教えてくれる。
会おうと思えば、また会える。
「もう二度と会えない」なんて、考えなくて良かったんだ。
あったかくなったら、お父さんとお母さんにお願いして一緒に旅へ出よう。
旅に出れば、またどこかでグレイさんと会える。
そう思ったら、寂しさや悲しさはなくなった。
前の旅では、山を越えて海へ行った。
今度は、どこへ行こうかな?
グレイさんは、どこへ行ったかな?
グレイさんを探しながら、旅をするのも良いかもしれない。
「グレイさんを探して会いに来た」と言ったら、喜んでくれると思う。
その頃には、グレイさんは番や新しい群れを作っているかもしれないけど。
番や群れが出来ていたら、もう会えないな。
その場合は、大人しく諦めよう。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
グレイさんがいなくなってから、イチモツの集落には穏やかな日々が戻って来た。
集落の猫たちは、今日も自由気ままに過ごしている。
起きたら毛づくろいをして、あとは好きなことをして過ごす。
おなかが空いたら狩りをして、おなかがいっぱいになったら、日向ぼっこをしながらお昼寝をする。
ぼくと茶トラ先生は、薬草を摘みに行ったり薬を作ったりしている。
ぼくが教えたおかげで、茶トラ先生も薬草に詳しくなった。
だけどやっぱり、万能薬のヨモギに頼りがちなんだけどね。
あったかくなってきたからか、花粉症に悩まされる猫たちが増えてきた。
秋の花粉症の原因植物は、ヨモギやブタクサ。
春の花粉症の原因植物は、スギやヒノキ。
ヨモギは、秋の花粉症を悪化させちゃうけど、春の花粉症には有効なんだ。
ヨモギには、抗酸化作用や炎症を抑える効果がある。
だから、春の花粉症のアレルギー症状を、軽くすることが出来るんだ。
秋の花粉症にはローズヒップを使ったけど、今は時季じゃないから使えない。
ローズヒップはバラの実のことで、収獲出来るのは秋。
アロエの汁を目薬として目に点せば、目の痒みを抑えることが出来る。
あと、ミケさんの看病も忘れていないよ。
この前、歯周病対策として、シカの角や骨を噛むように勧めたんだけど。
「顎が痛くて、噛めないにゃ」と、断られてしまった。
今まで通り、おやつの猫草をカミカミしている。
そんな感じで、猫たちの病気やケガを治療をしながら、のんびりと日々は過ぎていった。
あったかい春がやって来るのを、心待ちにしながら。
グレイさんに抱き締められていると、あったかくて気持ちが良い。
このぬくもりが、恋しい。
もう二度と会えないと分かっているからこそ、離れがたい。
集落の猫たちと比べたら、グレイさんと一緒に過ごした時間はとても短い。
だけどぼくにとってグレイさんは、集落の猫たちと同じくらい大切なんだ。
しばらくすると泣き止んだグレイさんが、ぼくの顔をペロペロ舐めて慰めてくれた。
『シロちゃん、とても離れがたいがそろそろお別れしようか。あまり遅くなると、集落の猫たちが心配するぞ』
「うん、分かっているミャ。でもお別れしたら、もう会えないミャ?」
『そうだな。もともとオレは新しい番と縄張りと群れを作る為に、旅をしていたんだ。シロちゃんとお別れしたら、ここを離れるつもりだ』
「分かったミャ……」
グレイさんの返事を聞いて、とても落ち込んだ。
頭では理解していたけど、グレイさんから言われるとショックは大きい。
ぼくは自分の首から下げていた石のナイフを外して、グレイさんに差し出す。
「グレイさん、これあげるミャ。お肉を切る時に、使ってミャ」
『ありがとう。シロちゃんからの最後のプレゼント、愛の証として大切にするよ』
「グレイさん、さようならミャ。グレイさんのこと、ずっと忘れないミャ」
『ああ、オレもずっと忘れない。会えなくても、シロちゃんのことは死ぬまで愛し続ける。さようならだ、オレのシロちゃん。愛している』
グレイさんは柔らかく微笑んだ後、背を向けて走り去っていった。
ぼくは、遠ざかっていくグレイさんの姿が見えなくなるまで、その場から動けなかった。
まだほんのりと、グレイさんのぬくもりが残っている。
冷たい風が吹けば、そのぬくもりはあっけなく消えていった。
やがて、グレイさんの姿は見えなくなった。
ぼくとグレイさんの別れを見守っていたお父さんとお母さんが、ぼくを優しく抱き寄せる。
「シロちゃん、ちゃんとお別れは出来たかニャー?」
「グレイさんは、良いトマークトゥスだったニャ。私達もグレイさんとお別れするのは、とっても悲しいニャ」
「毛づくろいしてグレイさんの臭いを消してから、集落へ帰るニャー」
そう言って、ふたりはぼくの毛づくろいを始める。
お父さんとお母さんの気遣いは、とても嬉しい。
だけど今は、グレイさんの臭いがなくなってしまうことが悲しくて仕方がなかった。
毛づくろいをしてもらった後、ぼくたちはイチモツの集落へ戻った。
日向ぼっこをしていたミケさんに駆け寄って、涙をこらえながら伝える。
「ミケさん、グレイさんとお別れしてきましたミャ。グレイさんも『新しい縄張りを探す』と言って、離れていきましたミャ」
「それは良かったにゃ。シロちゃんが『トマークトゥスと一緒に出て行く』と言ったら、どうしようかと思ったにゃ」
ミケさんは心の底から安心した顔で、ぼくの頭を撫でてくれた。
褒めてもらえたことは嬉しいけど、ぼくの心は深い悲しみに沈んでいた。
どうしても、グレイさんのことを諦めきれない。
グレイさんの最後の笑顔が、忘れられない。
あの時の笑顔は、愛しさと悲しみに彩られていた。
グレイさんも、もう二度と会えないと分かっている顔だった。
グレイさんを思い出すと、胸が締め付けられる。
この悲しみは、時間が経てばいつか忘れられるのだろうか。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
翌日、集落の猫たちがぼくのところへ集まってきた。
「シロちゃん、あのトマークトゥスを追い払ったんだってニャア?」
「シロちゃんは、やっぱりスゴいニャ~」
猫たちは、「トマークトゥスがいなくなって良かった」と喜んでいる。
天敵がいなくなったことを喜ぶのは、当たり前。
分かっているんだけど、ぼくは喜べない。
大好きな友達と、もう二度と会えないんだから。
だけどいつまでも悲しい顔ばかりしていたんじゃ、みんなに心配を掛けてしまう。
みんなの前では、精いっぱいの笑顔を作った。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
グレイさんを思い出して、寂しくなって落ち込む度に、お父さんとお母さんが慰めてくれた。
お父さんとお母さんだけは、ぼくの悲しみを分かってくれた。
「シロちゃんは、そんなにグレイさんのことが好きだったんだニャー……」
「あったかくなったら、また3匹で旅へ行きましょうニャ。旅をしていれば、きっといつかどこかでグレイさんと会えるニャ」
「そうか、その手があったミャ!」
グレイさんが集落の近くにいるのはダメだけど、ぼくがグレイさんに会いに行くことは出来るんだ。
グレイさんがどこへ行ったかは、『走査』が教えてくれる。
会おうと思えば、また会える。
「もう二度と会えない」なんて、考えなくて良かったんだ。
あったかくなったら、お父さんとお母さんにお願いして一緒に旅へ出よう。
旅に出れば、またどこかでグレイさんと会える。
そう思ったら、寂しさや悲しさはなくなった。
前の旅では、山を越えて海へ行った。
今度は、どこへ行こうかな?
グレイさんは、どこへ行ったかな?
グレイさんを探しながら、旅をするのも良いかもしれない。
「グレイさんを探して会いに来た」と言ったら、喜んでくれると思う。
その頃には、グレイさんは番や新しい群れを作っているかもしれないけど。
番や群れが出来ていたら、もう会えないな。
その場合は、大人しく諦めよう。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
グレイさんがいなくなってから、イチモツの集落には穏やかな日々が戻って来た。
集落の猫たちは、今日も自由気ままに過ごしている。
起きたら毛づくろいをして、あとは好きなことをして過ごす。
おなかが空いたら狩りをして、おなかがいっぱいになったら、日向ぼっこをしながらお昼寝をする。
ぼくと茶トラ先生は、薬草を摘みに行ったり薬を作ったりしている。
ぼくが教えたおかげで、茶トラ先生も薬草に詳しくなった。
だけどやっぱり、万能薬のヨモギに頼りがちなんだけどね。
あったかくなってきたからか、花粉症に悩まされる猫たちが増えてきた。
秋の花粉症の原因植物は、ヨモギやブタクサ。
春の花粉症の原因植物は、スギやヒノキ。
ヨモギは、秋の花粉症を悪化させちゃうけど、春の花粉症には有効なんだ。
ヨモギには、抗酸化作用や炎症を抑える効果がある。
だから、春の花粉症のアレルギー症状を、軽くすることが出来るんだ。
秋の花粉症にはローズヒップを使ったけど、今は時季じゃないから使えない。
ローズヒップはバラの実のことで、収獲出来るのは秋。
アロエの汁を目薬として目に点せば、目の痒みを抑えることが出来る。
あと、ミケさんの看病も忘れていないよ。
この前、歯周病対策として、シカの角や骨を噛むように勧めたんだけど。
「顎が痛くて、噛めないにゃ」と、断られてしまった。
今まで通り、おやつの猫草をカミカミしている。
そんな感じで、猫たちの病気やケガを治療をしながら、のんびりと日々は過ぎていった。
あったかい春がやって来るのを、心待ちにしながら。
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