ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第24話 元気が出る飴

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 俺、あんまり頭が良くないから、法律ほうりつなんてさっぱり分からないんだよね。
 加藤かとう先生が懇切丁寧こんせつていねいに説明してくれたのに、理解出来なくて申し訳ない。

 俺が混乱しているのが、加藤先生には手に取るように分かったのだろう。
 加藤先生は最後に、こう付け加える。

「分からないことがありましたら、いつでも相談に乗りますよ。あなたがその遺産を、どう使うのか。陰ながら、見届けさせて頂きます」
「は、はぁ……」

 なんでこの人は、こうムダに威圧感いあつかんがあるんだろうな。
 丁寧ていねいな口調なんだけど、なんかスゲェ怖いんだよ。

 あれかな、顔色が悪いせいかな?
 もしかして、疲れているのかな?
 弁護士って、めちゃくちゃ忙しいって聞くし。

 遊ぶひまもなくて、ストレスがまっているのかもしれない。
 この人が「ウェーイ☆」とか言って、ハイテンションで遊ぶ姿は想像出来ない。
 きっと疲れてるから顔色が悪いんだ、そうに違いない。

 あっ、そうだ。
 甘い物とか食ったら、少しは元気になるかもしれない。
 俺は疲れた時や小腹が空いた時に、手軽に食べられるお菓子をいつも持ち歩いてんだよね。

 加藤先生にあげられそうな物って、なんかあったっけ?
 ポケットに手を突っ込んで、ゴソゴソ探し出す俺を見て、桜庭が不思議そうに問い掛けてくる。

虎河たいがさん? どうかなさいましたか?」
「ん~、ちょっとな~。おっ、良いもん、み~っけっ」

 目当ての物を探り当てて、ポケットから個装こそうあめを5つ取り出した。
 手のひらの上に乗せて、加藤先生に差し出す。

「はい、良かったらどうぞ」
「は?」
「元気が出る飴ちゃんです」
「あめ?」

 加藤先生はきょとんとした顔で、俺の顔と差し出した飴ちゃんを交互に見た。
 あ、しまった。
 加藤先生は、甘い物が苦手な人だったかもしれない。
 でも、もう出しちゃったし、今更引っ込めるのも感じ悪いし。

「えっと、その……なんか、加藤先生がスゲェ疲れてそうだから、『甘いもんでもどうかな~』なんて思いまして……」

 愛想笑あいそわらいをしながら言うと、加藤先生は小さく笑って飴ちゃんを受け取ってくれる。

「そうでしたか。お気遣きづかい下さって、ありがとうございます。せっかくですから、頂戴ちょうだいします」
「いえいえ、どういたしまして」

 ニカッと俺が笑い返すと、加藤先生が一礼いちれいする。

「この度は、当法律相談事務所とうほうりつそうだんじむしょをご利用頂きまして、誠にありがとうございました。何かありましたら、またいつでもおし下さい」
「はい、ご丁寧にどうも。こちらこそ、今後ともよろしくお願いします」

 俺がペコペコ頭を下げる横で、桜庭は慣れた仕草しぐさで綺麗にお辞儀じぎをした。
 加藤先生と秘書さんに見送られて、俺と桜庭は法律相談事務所を後にした。

 桜庭が、嬉しそうに話し掛けてくる。

「これからは、『虎河さん』ではなく、正式に『ご主人様』ですね。不束者ふつつかもの(充分な才能やしつけがなってない者)ではございますが、何とぞよろしく申し上げます」 
「あ、えっと……こちらの方がよっぽど不束者だけど、今後ともよろしくお願いします……」

 モノスゴく丁寧に頭を下げられて、俺は戸惑とまどいつつも応えた。
 桜庭の言う通り、本当に「ご主人様」になってしまった。

 たぶん、これからやるべきことがたくさんある。
 今の俺には想像出来ないくらい、大変なことが起こるはずだ。
 でもきっと、俺ひとりじゃ出来ないことも、加藤先生や執事しつじたちが助けてくれるだろう。

 とりあえず、
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