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第25話 自分の城
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午後も桜庭のストーカーのような視線に監視されながら、どうにか今日の仕事を終えた。
「お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でーす」
スタッフ達と労いの挨拶を掛け合って、俺は倉庫を後にした。
「はぁ~……終わった終わったぁ」
「お勤め、お疲れ様でございました」
終わるやいなや、桜庭が笑顔で俺の側にぴったりとくっ付いてきた。
だから、近いっつの。
近付きすぎる桜庭を引き剥がして、駐車場へ向かって歩いて行く。
桜庭にエスコートされて、真っ赤なスポーツカーの後部座席に乗せられた。
「さ、お送りしましょう」
「どこへ?」
やや不機嫌気味に答えると、桜庭は当然とばかりの笑顔で振り向く。
「もちろん、ご主人様のお屋敷です」
「悪いけど、先に俺のアパートに寄ってもらえるかな? 欲しいものがあるんだ」
「かしこまりました」
桜庭は答えると、ぐんっとアクセルを踏み込んだ。
なんでコイツは、物腰は柔らかいのに、車の運転は荒いのか。
ハンドル持つと、性格変わるタイプなのかな、コイツ。
一旦、住み慣れた安アパートへ帰ってきた。
荷物を旅行カバンに詰め込みながら、見慣れた部屋を見渡す。
いくつもの傷が付いた床、少し色褪せた壁紙、画鋲の穴。
先住者の跡が、たくさん残っている。
六畳一間のワンルームだけど、児童養護施設を出て、産まれて初めて持った自分の城。
俺にとっては、大事な思い出がいっぱいある。
他の人間からしてみたら、ガラクタ同然の思い出かもしれないけど。
ここが、俺の家。
だが直に、この部屋は引き払わなければならない。
だって、俺はもう大資産家になったんだ。
これからは、アホみたいにバカデッカい超高級な豪邸が、俺の家になる。
とりあえず、数日分の着替えをカバンに詰めて、桜庭の元へ戻る。
「ごめん、お待たせっ」
「いえ、大して待っていませんよ」
にっこり笑って答えた桜庭に、俺は「そっか」と笑い返した。
桜庭の乱暴な運転で、今日から俺のものになった豪邸の門まで送られた。
「お疲れ様でございました。僕は車を回して参りますので、後は他の者が参ります」
「分かった」
桜庭は運転席へ戻ると、どこかへ走り去ってしまった。
朝と同じように、ムキムキマッチョな門番に門を開けてもらい、超高級車で玄関まで着けてもらった。
やることなすことが、いちいち大げさなんだよなぁ。
金持ちって、なんでこんなに色々面倒臭いんだろう。
重厚な木製の玄関の扉が開かれると、例によって四人の執事が出迎えしてくれる。
全裸で。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「あ~……うん、ただいま」
一糸纏わぬ執事たちの一糸乱れぬお辞儀は、洗練されていて文句のつけようもない。
いや、ちょっと待て。
横一列に整列する全裸執事の後ろが、何かおかしい。
ひと言どころじゃなく、小一時間ほど文句が言いたい。
「お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でーす」
スタッフ達と労いの挨拶を掛け合って、俺は倉庫を後にした。
「はぁ~……終わった終わったぁ」
「お勤め、お疲れ様でございました」
終わるやいなや、桜庭が笑顔で俺の側にぴったりとくっ付いてきた。
だから、近いっつの。
近付きすぎる桜庭を引き剥がして、駐車場へ向かって歩いて行く。
桜庭にエスコートされて、真っ赤なスポーツカーの後部座席に乗せられた。
「さ、お送りしましょう」
「どこへ?」
やや不機嫌気味に答えると、桜庭は当然とばかりの笑顔で振り向く。
「もちろん、ご主人様のお屋敷です」
「悪いけど、先に俺のアパートに寄ってもらえるかな? 欲しいものがあるんだ」
「かしこまりました」
桜庭は答えると、ぐんっとアクセルを踏み込んだ。
なんでコイツは、物腰は柔らかいのに、車の運転は荒いのか。
ハンドル持つと、性格変わるタイプなのかな、コイツ。
一旦、住み慣れた安アパートへ帰ってきた。
荷物を旅行カバンに詰め込みながら、見慣れた部屋を見渡す。
いくつもの傷が付いた床、少し色褪せた壁紙、画鋲の穴。
先住者の跡が、たくさん残っている。
六畳一間のワンルームだけど、児童養護施設を出て、産まれて初めて持った自分の城。
俺にとっては、大事な思い出がいっぱいある。
他の人間からしてみたら、ガラクタ同然の思い出かもしれないけど。
ここが、俺の家。
だが直に、この部屋は引き払わなければならない。
だって、俺はもう大資産家になったんだ。
これからは、アホみたいにバカデッカい超高級な豪邸が、俺の家になる。
とりあえず、数日分の着替えをカバンに詰めて、桜庭の元へ戻る。
「ごめん、お待たせっ」
「いえ、大して待っていませんよ」
にっこり笑って答えた桜庭に、俺は「そっか」と笑い返した。
桜庭の乱暴な運転で、今日から俺のものになった豪邸の門まで送られた。
「お疲れ様でございました。僕は車を回して参りますので、後は他の者が参ります」
「分かった」
桜庭は運転席へ戻ると、どこかへ走り去ってしまった。
朝と同じように、ムキムキマッチョな門番に門を開けてもらい、超高級車で玄関まで着けてもらった。
やることなすことが、いちいち大げさなんだよなぁ。
金持ちって、なんでこんなに色々面倒臭いんだろう。
重厚な木製の玄関の扉が開かれると、例によって四人の執事が出迎えしてくれる。
全裸で。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「あ~……うん、ただいま」
一糸纏わぬ執事たちの一糸乱れぬお辞儀は、洗練されていて文句のつけようもない。
いや、ちょっと待て。
横一列に整列する全裸執事の後ろが、何かおかしい。
ひと言どころじゃなく、小一時間ほど文句が言いたい。
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