ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

文字の大きさ
25 / 68

第25話 自分の城

しおりを挟む
 午後も桜庭さくらばのストーカーのような視線に監視かんしされながら、どうにか今日の仕事を終えた。

「お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でーす」

 スタッフ達とねぎらいの挨拶あいさつを掛け合って、俺は倉庫を後にした。

「はぁ~……終わった終わったぁ」
「お勤め、お疲れ様でございました」

 終わるやいなや、桜庭が笑顔で俺の側にぴったりとくっ付いてきた。
 だから、近いっつの。
 近付きすぎる桜庭を引きがして、駐車場へ向かって歩いて行く。

 桜庭にエスコートされて、真っ赤なスポーツカーの後部座席こうぶざせきに乗せられた。

「さ、お送りしましょう」
「どこへ?」

 やや不機嫌気味に答えると、桜庭は当然とばかりの笑顔で振り向く。

「もちろん、ご主人様のお屋敷やしきです」
「悪いけど、先に俺のアパートに寄ってもらえるかな? 欲しいものがあるんだ」
「かしこまりました」

 桜庭は答えると、ぐんっとアクセルを踏み込んだ。
 なんでコイツは、物腰ものごしは柔らかいのに、車の運転は荒いのか。
 ハンドル持つと、性格変わるタイプなのかな、コイツ。


 一旦、住み慣れた安アパートへ帰ってきた。
 荷物を旅行カバンに詰め込みながら、見慣れた部屋を見渡す。
 いくつもの傷が付いた床、少し色褪いろあせた壁紙、画鋲がびょうの穴。
 先住者せんじゅうしゃあとが、たくさん残っている。

 六畳一間ろくじょうひとまのワンルームだけど、児童養護施設を出て、産まれて初めて持った自分の城。
 俺にとっては、大事な思い出がいっぱいある。
 他の人間からしてみたら、ガラクタ同然どうぜんの思い出かもしれないけど。

 ここが、俺の家。
 だがじきに、この部屋は引き払わなければならない。
 だって、俺はもう大資産家になったんだ。
 これからは、アホみたいにバカデッカい超高級な豪邸が、俺の家になる。

 とりあえず、数日分の着替えをカバンに詰めて、桜庭の元へ戻る。

「ごめん、お待たせっ」
「いえ、大して待っていませんよ」

 にっこり笑って答えた桜庭に、俺は「そっか」と笑い返した。
 桜庭の乱暴な運転で、今日から俺のものになった豪邸の門まで送られた。

「お疲れ様でございました。僕は車を回して参りますので、後は他の者が参ります」
「分かった」

 桜庭は運転席へ戻ると、どこかへ走り去ってしまった。
 朝と同じように、ムキムキマッチョな門番もんばんに門を開けてもらい、超高級車ロールスロイスで玄関まで着けてもらった。
 やることなすことが、いちいち大げさなんだよなぁ。
 金持ちって、なんでこんなに色々面倒臭いんだろう。

 重厚じゅうこうな木製の玄関の扉が開かれると、例によって四人の執事が出迎えしてくれる。
 全裸で。

「お帰りなさいませ、ご主人様」
「あ~……うん、ただいま」

 一糸纏いっしまとわぬ執事たちの一糸乱いっしみだれぬお辞儀は、洗練せんれんされていて文句のつけようもない。

 いや、ちょっと待て。
 横一列に整列する全裸執事の後ろが、何かおかしい。
 ひと言どころじゃなく、小一時間ほど文句が言いたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。

ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。 高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。 そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。 文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。

処理中です...