48 / 68
第48話 正義は必ず勝つの真意
しおりを挟む
容態が安定したところで、ずっと気になっていたことを聞いてみる。
「で? あの後、どうなったの?」
「アジトにいた人間は全員、警察に突き出しやりました」
「おお、やるじゃん」
しかし、その顔はすぐに曇る。
「ですが、『Great Old Ones』はとても大きな組織で、今回壊滅させたアジトは、支部のひとつに過ぎません」
「そうだよな……」
支部をひとつ潰したところで、安心は出来ない。
むしろ、恨みを買って、報復に来るかもしれない。
いつまた、「Great Old Ones」に襲われるか分からないんだ。
☆
「おはようございますっ!」
ようやく体調が戻り、俺は久々に出勤した。
俺の姿を見て、スタッフ達がざわ……っとなる。
中山が、心配そうな顔で声を掛けてくる。
「よう、具合はどうだ?」
「もう、バッチリよ! 俺は、体だけが取り柄だかんなっ!」
明るく元気いっぱいな声で応えたが、「信頼出来ない」と、みんな揃って顔をしかめた。
まぁ、無理もない。
毒で死に掛けた後、一ヶ月ほど療養していた。
職場では、「病気で長期入院していた」ということになっている。
社内で『Great Old Onesに拉致られて、殺されかけちゃったよ事件』は、部長のみが知っている。
部長には、胃薬を贈るべきかもしれない。
☆
「こんにちは、川崎さん」
「ああ、どうも、加藤先生」
事情を良く知るもうひとりの人物が、昼休みにやって来た。
作業の手を止めて、加藤先生に駆け寄った。
血色の悪い不健康そうな顔。
ひと目で、ブランド品と分かるスーツ。
左の胸元には、金色の弁護士バッジが輝いていた。
加藤先生がここを訪れるのは、もはや日常と化している。
弁護士って結構忙しいと思うんだけど、親身に俺の相談に乗ってくれる。
最近は、一緒に昼飯を摂る、飯友達となりつつある。
俺達はいつも、大衆食堂で昼飯を食っている。
日替わり定食を3人前頼み、待っている間に加藤先生が口を開く。
「先日は、ずいぶん大変な目に遭われたそうで」
「もう、ホンット大変でした。危うく、死ぬかと思いましたもん。」
俺が苦笑交じりに話すと、横に座った桜庭がうつむいて低い声で呻く。
「もし、処置が間に合わなかったら、本当にお亡くなりになられていたかもしれません……」
「お前らのおかげで、こうして生きてるけどな。これからも頼むぜ!」
「もちろんですっ!」
明るく笑い掛けると、桜庭はパァッと花が咲くように嬉しそうに笑った。
桜庭は、加藤先生に向き直ると、真剣な顔で告げる。
「今後も、このようなことが起こらないとは、限りません。僕は片時(ちょっとの間)も、ご主人様から離れないと誓いました」
「それが賢明でしょうね」
にっこりと微笑んで、加藤先生が軽く頷いた。
俺は「ははは……」と、乾いた声で笑った。
加藤先生は、知らない。
コイツ、本当にべったりになっちまったんだよ。
起きている時はもちろん、食事も風呂も寝る時も側にいる。
トイレすら、ついてくる。
さすがに、大の時はお断りしているけどな。
「川崎さん、『正義と悪』とはなんでしょう?」
「『正義』は人を助けることで、『悪』は人を苦しめること……でしょうか?」
「『正義と悪』……その価値観は、人それぞれでしょう。悪には悪の信念があり、正義にも正義の信念がある」
加藤先生はこう見えて、熱い男なんだよね。
実はヒーローオタクで、「正義と悪」について語らせたら何時間でも語る。
静かな声で言う加藤先生に、俺は首を傾げる。
「『悪の信念』って、なんですか?」
「『正義』も『悪』も『自分が正しい』と、信じているんですよ。どちらも、自分が『正義』なんです」
「『勝てば官軍、負ければ賊軍(勝った方が正義、負けた方が悪)』って、言葉もありますよね」
「そうです。信念はどうあれ、『最後に勝った方が正義』だから『正義は必ず勝つ』は、ある意味正しいんです」
「でもそれって、変ですよね」
「変ですね」
「で? あの後、どうなったの?」
「アジトにいた人間は全員、警察に突き出しやりました」
「おお、やるじゃん」
しかし、その顔はすぐに曇る。
「ですが、『Great Old Ones』はとても大きな組織で、今回壊滅させたアジトは、支部のひとつに過ぎません」
「そうだよな……」
支部をひとつ潰したところで、安心は出来ない。
むしろ、恨みを買って、報復に来るかもしれない。
いつまた、「Great Old Ones」に襲われるか分からないんだ。
☆
「おはようございますっ!」
ようやく体調が戻り、俺は久々に出勤した。
俺の姿を見て、スタッフ達がざわ……っとなる。
中山が、心配そうな顔で声を掛けてくる。
「よう、具合はどうだ?」
「もう、バッチリよ! 俺は、体だけが取り柄だかんなっ!」
明るく元気いっぱいな声で応えたが、「信頼出来ない」と、みんな揃って顔をしかめた。
まぁ、無理もない。
毒で死に掛けた後、一ヶ月ほど療養していた。
職場では、「病気で長期入院していた」ということになっている。
社内で『Great Old Onesに拉致られて、殺されかけちゃったよ事件』は、部長のみが知っている。
部長には、胃薬を贈るべきかもしれない。
☆
「こんにちは、川崎さん」
「ああ、どうも、加藤先生」
事情を良く知るもうひとりの人物が、昼休みにやって来た。
作業の手を止めて、加藤先生に駆け寄った。
血色の悪い不健康そうな顔。
ひと目で、ブランド品と分かるスーツ。
左の胸元には、金色の弁護士バッジが輝いていた。
加藤先生がここを訪れるのは、もはや日常と化している。
弁護士って結構忙しいと思うんだけど、親身に俺の相談に乗ってくれる。
最近は、一緒に昼飯を摂る、飯友達となりつつある。
俺達はいつも、大衆食堂で昼飯を食っている。
日替わり定食を3人前頼み、待っている間に加藤先生が口を開く。
「先日は、ずいぶん大変な目に遭われたそうで」
「もう、ホンット大変でした。危うく、死ぬかと思いましたもん。」
俺が苦笑交じりに話すと、横に座った桜庭がうつむいて低い声で呻く。
「もし、処置が間に合わなかったら、本当にお亡くなりになられていたかもしれません……」
「お前らのおかげで、こうして生きてるけどな。これからも頼むぜ!」
「もちろんですっ!」
明るく笑い掛けると、桜庭はパァッと花が咲くように嬉しそうに笑った。
桜庭は、加藤先生に向き直ると、真剣な顔で告げる。
「今後も、このようなことが起こらないとは、限りません。僕は片時(ちょっとの間)も、ご主人様から離れないと誓いました」
「それが賢明でしょうね」
にっこりと微笑んで、加藤先生が軽く頷いた。
俺は「ははは……」と、乾いた声で笑った。
加藤先生は、知らない。
コイツ、本当にべったりになっちまったんだよ。
起きている時はもちろん、食事も風呂も寝る時も側にいる。
トイレすら、ついてくる。
さすがに、大の時はお断りしているけどな。
「川崎さん、『正義と悪』とはなんでしょう?」
「『正義』は人を助けることで、『悪』は人を苦しめること……でしょうか?」
「『正義と悪』……その価値観は、人それぞれでしょう。悪には悪の信念があり、正義にも正義の信念がある」
加藤先生はこう見えて、熱い男なんだよね。
実はヒーローオタクで、「正義と悪」について語らせたら何時間でも語る。
静かな声で言う加藤先生に、俺は首を傾げる。
「『悪の信念』って、なんですか?」
「『正義』も『悪』も『自分が正しい』と、信じているんですよ。どちらも、自分が『正義』なんです」
「『勝てば官軍、負ければ賊軍(勝った方が正義、負けた方が悪)』って、言葉もありますよね」
「そうです。信念はどうあれ、『最後に勝った方が正義』だから『正義は必ず勝つ』は、ある意味正しいんです」
「でもそれって、変ですよね」
「変ですね」
10
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。
ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。
高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。
そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。
文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる