2 / 2
【西くんは東くんに抱かれたい】
しおりを挟む
東にぃは、ぼくに対して過保護すぎる。
ひと回りも年上の東にぃから見たら、ぼくなんてまだまだガキなのかもしれない。
「危なっかしくて目が離せないから、過保護にならざるを得ない」って、いつも言われる。
甘ったるい声で「可愛い可愛い」って、たくさん甘やかしてくれる。
分かりやすく愛してくれるし、大事にされている自覚もある。
何をしても怒らずに、笑って許してくれる。
ぼくを傷付けようとするヤツには、本気でキレてくれる。
東にぃの愛を、疑ったことはない。
だけど、なんでこんなぼくなんかを愛してくれるのか。
ずっと理解が出来ないし、今も信じられない。
お互い忙しいからなかなか会えないけど、会ったら必ずハグしている。
東にぃって距離感バグってるから、ボディタッチがスゲェ激しい。
頭や腹を撫で回されるし、ケツも腰も触られる。
なんなら、何度も同じベッドで寝ている。
本当に一緒に寝るだけで、何もしてこない。
付き合っているのに抱かないって、どういうことなの?
なんで、抱いてくんないの?
ぼくって、そんなに魅力ない?
ぼくは服を脱いで、鏡に自分の体を映す。
手足は細く、胸も腹も薄っぺらい。
ヒョロヒョロガリガリで、ガキみたいな小さい体。
こんな体じゃ、1mmも勃たねぇよ。
東にぃがエロいと思う体付きって、細マッチョなんだよね。
だけどぼくは、体質的に肉が付かない。
食わず嫌いだし、小食すぎてたくさん食べられない。
仕事が忙しすぎて、ジムに通う時間もない。
精神的にも肉体的にも時間的にも、体を鍛えることに向いてなさすぎる。
この顔でマッチョな体になっても、バランスが悪すぎてキモいだけだし。
東にぃ好みのエロい体になるなんて、とても無理だ。
男はチンチンが勃たなきゃ抱けない。
ぼくはこんなにも、抱いて欲しくてたまらないのに。
東にぃも、こんな体じゃ抱きたいと思わないんでしょ。
やっぱり東にぃは、ぼくのことを恋人として愛してないんだ。
今は若くて可愛いから可愛がってくれるけど、可愛くなくなったら捨てられちゃうんだ。
そう思ったら無性に悲しくなって、大声を上げて泣いた。
ぼくは東にぃに抱かれたすぎて、完全にトチ狂った。
こうなったら、手段は選ばない。
チンチンが勃たないなら、無理矢理勃たせれば良い。
東にぃに、こっそり精力剤を飲ませればいいんだ。
ついでに睡眠薬も盛って、寝込みを襲っちゃえ。
ぼくはさっそく、オンライン診療で勃起不全薬を処方してもらうことにした。
「仕事が死ぬほど忙しくて、勃たなくなった」と説明したら、お医者さんに同情された。
勃起不全薬は、物によって効果も値段も大きく異なる。
安さを求めるか。
勃起力を求めるか。
持続性を求めるか。
即効性を求めるか。
安全性を求めるか。
東にぃの体を考えたら、何よりも安全性を第一に考えるべきだろう。
薬局で、あらゆる睡眠導入剤も購入した。
アダルトサイトで、大人のおもちゃやローションなども買った。
エロ同人誌みたいに、そう簡単にチンチンはケツに入らない。
寝込みを襲うなんて強行手段を取るんだから、絶対に失敗は出来ない。
いざとなって「入りませんでした」じゃ、恥ずか死ねる。
何度か見たから、東にぃのチンチンのサイズは知っている。
あのサイズまで、ケツの穴を広げておかなければならない。
時間をかけて、少しずつ広げていった。
努力の甲斐があって、指3本まで入るようになった。
これで、東にぃのチンチンが入る!
ぼくは勝利を確信した。
アホなぼくは、膨張率まで計算に入れてなかった。
🌇
そしてついに、久し振りに東にぃと会う日がやってきた。
羽田空港に降り立つと、東にぃが満面の笑みで手を振っている。
うわっ、ぼくの彼氏、カッコよすぎ……っ!
こんなイケメンがぼくの彼氏だなんて、世の中間違っている。
「西く~んっ!」
「東にぃ~っ!」
駆け寄っていくと、東にぃがぼくに向かって大きく両腕を広げた。
人目もはばからず胸に飛び込むと、腰を引き寄せて抱き締めてくれた。
鍛え上げられた筋肉と、セクシーな大人の匂いがぼくを包み込む。
「西くん、会いたかったっ!」
「ぼくも、会いたかったっ!」
これだよ! これこれこれこれっ!
これが、遠距離恋愛の醍醐味だよね。
気持ち好くて、ぼくも東にぃの背中に手を回してギューッて抱き返す。
「好きだなぁ」「幸せだなぁ」って感動で、胸がいっぱいになる。
抱き合って、久々の再会を噛み締めた。
気が済むまで抱き合ったあと、東にぃがぼくのスーツケースを持ってくれた。
こういうことを、スマートにやってくれる度に惚れ直すよね。
東にぃのエスコートで、東京観光をすることになった。
いつもぼくを楽しませる為に、デートコースをいろいろ調べておいてくれる。
ぼくの好みに合わせて、「どこ行きたい?」なんて選ばせてもくれる。
なんで東にぃが、ぼくみたいなちんちくりんにベタ惚れなのか、意味が分からない。
ぼくはどちらかというと、嫌われやすいタイプなのに。
今でも、恋愛詐欺師に騙されているんじゃないかと疑い続けている。
ひと通り東京観光を終えて、予約しておいたホテルにチェックイン。
ふたりでひとつのダブルベッド。
東にぃは今夜も寝るだけで、手を出してこないだろう。
東にぃは今、風呂に入っている。
風呂から、東にぃのご機嫌な歌声が聞こえている。
いよいよ、東にぃに夜這いをかける。
夜這いなんてしたら、嫌われてしまうかもしれない。
だけど、ここまで来たら止まれない。
問題は、どうやって東にぃに勃起不全薬を飲ませるかだ。
勃起不全薬の錠剤は、実際に手に入れてみると結構デカい。
横約9mm×縦約7mm
普通に飲もうと思っても、喉に詰まらせそうなサイズ。
こんなデカいもん、どうやって飲ませりゃいいんだよ?
精力剤や睡眠薬も、手当たり次第に荷物から取り出して並べてみる。
細かく砕いて、飲み物に混ぜるしかないのか?
砕こうと思ったけど、硬くて砕けそうにない。
砕く用の道具も、必要だったか。
どうしよう? 初手で詰んだんだけど。
こんなんじゃ、東にぃに夜這いをかけるなんて夢のまた夢。
いや、待てよ?
そういえば、東にぃは布団に入ったら秒で寝るんだった。
睡眠薬なんて盛らなくても、寝込みを襲うことは出来るか。
でも、肝心の勃起不全薬を飲ませられない。
どうやって飲ませりゃいいんだ?
唸って考え込んでいると、パンツ一丁の東にぃが風呂場から出てくる。
相変わらず、カッコ良い体をしている。
あの体に抱かれたい。
期待と興奮で、胸が高鳴る。
「西くん、お待たせ~。次、どうぞ~」
「じゃあ、ぼくも入ってくるねっ!」
下心を出さないように、懸命に演技をする。
慌てて、ベッドサイドテーブルの上に広げていた薬を隠す。
急いで隠そうとしたのが、いけなかった。
「あっ!」
勢い余って、錠剤やカプセル剤がバラバラと床に零れ落ちた。
拾おうにも、間に合わない。
東にぃは険しい顔付きで、床に散らばった錠剤を拾い上げる。
終わった。
「なにこれ、薬? それも、こんなにたくさん。西くん、まさか……?」
「い、いや、これは、その、あの……っ」
やましい気持ちがあるから、しどろもどろで顔を逸らしてしまう。
めちゃくちゃ恥ずかしくて気まずくて、いたたまれない。
こうなったら、素直に罪を認めてさっさと謝ろう。
「ごめん、東にぃ! こんなこと、なかなか言い出せなくて……っ!」
「俺の方こそ、ごめん。西くんが、そんなに追い詰められたなんて、ちっとも知らなくて」
「東にぃは、なんも悪くないっ! ぼくが勝手に思い詰めて、勝手に暴走しただけだからっ!」
「ずっと、ひとりで抱えていて辛かったよね。気付いてあげられなくて、本当に悪かった」
みっともない自分が情けなくて、今すぐ死にたかった。
泣きじゃくるぼくを、東にぃは優しく抱き締めてくれた。
東にぃは、声を詰まらせながら泣いている。
こんなに優しい人を、泣かせてしまった。
やっぱりぼくなんか、東にぃの恋人にふさわしくない。
東にぃは素敵な女性と結ばれて、幸せになるべきなんだ。
ぼくじゃ、東にぃを幸せに出来ない。
いっそこのまま、東にぃの腕の中で死ねたらいいのに。
「死にたいよ、東にぃ。ぼく、死にたいんだよ……」
「ううん。ダメだよ、西くん。絶対に、死なせない」
「ヤダ、もう死なせてよぉ……っ!」
「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて……ね?」
東にぃの腕の中で、「死ぬ死ぬ」と言って泣き喚いた。
東にぃは、優しい声色で慰め続けてくれた。
なんで、こんなダメダメなぼくにそんなに優しくしてくれるんだ。
この日の為に、いろいろ準備してきたのに、何もかも全部台無しだ。
抱く抱かれるとか、そういう雰囲気じゃない。
泣き続けて、いつしか泣き疲れて眠ってしまった。
🌇
目覚めると、東にぃに添い寝されていた。
東にぃはすでに起きていたらしく、優しい顔でぼくの頭を撫でていた。
昨日の醜態を思い出したら、気恥ずかしくて全身が熱くなった。
「あ、西くん、起きた? 大丈夫? 気分はどう? 良く寝れた?」
「う、うん……ありがと。それから、ごめん」
「いいよ。一応、濡れタオルで顔拭いて冷やしといたけど、大丈夫そ? 大丈夫なら、風呂入っておいで」
「うん、分かった」
ぼくは逃げるように、風呂場へ飛び込んだ。
ひと晩中泣いて、ぐっすり眠ったらスッキリしていた。
泣き疲れて寝て起きたら治るとか、マジでガキじゃん。
東にぃには、「精神的に追い詰められて薬物乱用した」と思われたらしい。
無駄に大量の薬を購入したのが、仇となった。
その日から、東にぃがさらに輪をかけて過保護になっちゃってさ。
結局、何の進展もなく地元へ帰って来てしまった。
あ~あ……、ぼくってホントバカ。
ひと回りも年上の東にぃから見たら、ぼくなんてまだまだガキなのかもしれない。
「危なっかしくて目が離せないから、過保護にならざるを得ない」って、いつも言われる。
甘ったるい声で「可愛い可愛い」って、たくさん甘やかしてくれる。
分かりやすく愛してくれるし、大事にされている自覚もある。
何をしても怒らずに、笑って許してくれる。
ぼくを傷付けようとするヤツには、本気でキレてくれる。
東にぃの愛を、疑ったことはない。
だけど、なんでこんなぼくなんかを愛してくれるのか。
ずっと理解が出来ないし、今も信じられない。
お互い忙しいからなかなか会えないけど、会ったら必ずハグしている。
東にぃって距離感バグってるから、ボディタッチがスゲェ激しい。
頭や腹を撫で回されるし、ケツも腰も触られる。
なんなら、何度も同じベッドで寝ている。
本当に一緒に寝るだけで、何もしてこない。
付き合っているのに抱かないって、どういうことなの?
なんで、抱いてくんないの?
ぼくって、そんなに魅力ない?
ぼくは服を脱いで、鏡に自分の体を映す。
手足は細く、胸も腹も薄っぺらい。
ヒョロヒョロガリガリで、ガキみたいな小さい体。
こんな体じゃ、1mmも勃たねぇよ。
東にぃがエロいと思う体付きって、細マッチョなんだよね。
だけどぼくは、体質的に肉が付かない。
食わず嫌いだし、小食すぎてたくさん食べられない。
仕事が忙しすぎて、ジムに通う時間もない。
精神的にも肉体的にも時間的にも、体を鍛えることに向いてなさすぎる。
この顔でマッチョな体になっても、バランスが悪すぎてキモいだけだし。
東にぃ好みのエロい体になるなんて、とても無理だ。
男はチンチンが勃たなきゃ抱けない。
ぼくはこんなにも、抱いて欲しくてたまらないのに。
東にぃも、こんな体じゃ抱きたいと思わないんでしょ。
やっぱり東にぃは、ぼくのことを恋人として愛してないんだ。
今は若くて可愛いから可愛がってくれるけど、可愛くなくなったら捨てられちゃうんだ。
そう思ったら無性に悲しくなって、大声を上げて泣いた。
ぼくは東にぃに抱かれたすぎて、完全にトチ狂った。
こうなったら、手段は選ばない。
チンチンが勃たないなら、無理矢理勃たせれば良い。
東にぃに、こっそり精力剤を飲ませればいいんだ。
ついでに睡眠薬も盛って、寝込みを襲っちゃえ。
ぼくはさっそく、オンライン診療で勃起不全薬を処方してもらうことにした。
「仕事が死ぬほど忙しくて、勃たなくなった」と説明したら、お医者さんに同情された。
勃起不全薬は、物によって効果も値段も大きく異なる。
安さを求めるか。
勃起力を求めるか。
持続性を求めるか。
即効性を求めるか。
安全性を求めるか。
東にぃの体を考えたら、何よりも安全性を第一に考えるべきだろう。
薬局で、あらゆる睡眠導入剤も購入した。
アダルトサイトで、大人のおもちゃやローションなども買った。
エロ同人誌みたいに、そう簡単にチンチンはケツに入らない。
寝込みを襲うなんて強行手段を取るんだから、絶対に失敗は出来ない。
いざとなって「入りませんでした」じゃ、恥ずか死ねる。
何度か見たから、東にぃのチンチンのサイズは知っている。
あのサイズまで、ケツの穴を広げておかなければならない。
時間をかけて、少しずつ広げていった。
努力の甲斐があって、指3本まで入るようになった。
これで、東にぃのチンチンが入る!
ぼくは勝利を確信した。
アホなぼくは、膨張率まで計算に入れてなかった。
🌇
そしてついに、久し振りに東にぃと会う日がやってきた。
羽田空港に降り立つと、東にぃが満面の笑みで手を振っている。
うわっ、ぼくの彼氏、カッコよすぎ……っ!
こんなイケメンがぼくの彼氏だなんて、世の中間違っている。
「西く~んっ!」
「東にぃ~っ!」
駆け寄っていくと、東にぃがぼくに向かって大きく両腕を広げた。
人目もはばからず胸に飛び込むと、腰を引き寄せて抱き締めてくれた。
鍛え上げられた筋肉と、セクシーな大人の匂いがぼくを包み込む。
「西くん、会いたかったっ!」
「ぼくも、会いたかったっ!」
これだよ! これこれこれこれっ!
これが、遠距離恋愛の醍醐味だよね。
気持ち好くて、ぼくも東にぃの背中に手を回してギューッて抱き返す。
「好きだなぁ」「幸せだなぁ」って感動で、胸がいっぱいになる。
抱き合って、久々の再会を噛み締めた。
気が済むまで抱き合ったあと、東にぃがぼくのスーツケースを持ってくれた。
こういうことを、スマートにやってくれる度に惚れ直すよね。
東にぃのエスコートで、東京観光をすることになった。
いつもぼくを楽しませる為に、デートコースをいろいろ調べておいてくれる。
ぼくの好みに合わせて、「どこ行きたい?」なんて選ばせてもくれる。
なんで東にぃが、ぼくみたいなちんちくりんにベタ惚れなのか、意味が分からない。
ぼくはどちらかというと、嫌われやすいタイプなのに。
今でも、恋愛詐欺師に騙されているんじゃないかと疑い続けている。
ひと通り東京観光を終えて、予約しておいたホテルにチェックイン。
ふたりでひとつのダブルベッド。
東にぃは今夜も寝るだけで、手を出してこないだろう。
東にぃは今、風呂に入っている。
風呂から、東にぃのご機嫌な歌声が聞こえている。
いよいよ、東にぃに夜這いをかける。
夜這いなんてしたら、嫌われてしまうかもしれない。
だけど、ここまで来たら止まれない。
問題は、どうやって東にぃに勃起不全薬を飲ませるかだ。
勃起不全薬の錠剤は、実際に手に入れてみると結構デカい。
横約9mm×縦約7mm
普通に飲もうと思っても、喉に詰まらせそうなサイズ。
こんなデカいもん、どうやって飲ませりゃいいんだよ?
精力剤や睡眠薬も、手当たり次第に荷物から取り出して並べてみる。
細かく砕いて、飲み物に混ぜるしかないのか?
砕こうと思ったけど、硬くて砕けそうにない。
砕く用の道具も、必要だったか。
どうしよう? 初手で詰んだんだけど。
こんなんじゃ、東にぃに夜這いをかけるなんて夢のまた夢。
いや、待てよ?
そういえば、東にぃは布団に入ったら秒で寝るんだった。
睡眠薬なんて盛らなくても、寝込みを襲うことは出来るか。
でも、肝心の勃起不全薬を飲ませられない。
どうやって飲ませりゃいいんだ?
唸って考え込んでいると、パンツ一丁の東にぃが風呂場から出てくる。
相変わらず、カッコ良い体をしている。
あの体に抱かれたい。
期待と興奮で、胸が高鳴る。
「西くん、お待たせ~。次、どうぞ~」
「じゃあ、ぼくも入ってくるねっ!」
下心を出さないように、懸命に演技をする。
慌てて、ベッドサイドテーブルの上に広げていた薬を隠す。
急いで隠そうとしたのが、いけなかった。
「あっ!」
勢い余って、錠剤やカプセル剤がバラバラと床に零れ落ちた。
拾おうにも、間に合わない。
東にぃは険しい顔付きで、床に散らばった錠剤を拾い上げる。
終わった。
「なにこれ、薬? それも、こんなにたくさん。西くん、まさか……?」
「い、いや、これは、その、あの……っ」
やましい気持ちがあるから、しどろもどろで顔を逸らしてしまう。
めちゃくちゃ恥ずかしくて気まずくて、いたたまれない。
こうなったら、素直に罪を認めてさっさと謝ろう。
「ごめん、東にぃ! こんなこと、なかなか言い出せなくて……っ!」
「俺の方こそ、ごめん。西くんが、そんなに追い詰められたなんて、ちっとも知らなくて」
「東にぃは、なんも悪くないっ! ぼくが勝手に思い詰めて、勝手に暴走しただけだからっ!」
「ずっと、ひとりで抱えていて辛かったよね。気付いてあげられなくて、本当に悪かった」
みっともない自分が情けなくて、今すぐ死にたかった。
泣きじゃくるぼくを、東にぃは優しく抱き締めてくれた。
東にぃは、声を詰まらせながら泣いている。
こんなに優しい人を、泣かせてしまった。
やっぱりぼくなんか、東にぃの恋人にふさわしくない。
東にぃは素敵な女性と結ばれて、幸せになるべきなんだ。
ぼくじゃ、東にぃを幸せに出来ない。
いっそこのまま、東にぃの腕の中で死ねたらいいのに。
「死にたいよ、東にぃ。ぼく、死にたいんだよ……」
「ううん。ダメだよ、西くん。絶対に、死なせない」
「ヤダ、もう死なせてよぉ……っ!」
「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて……ね?」
東にぃの腕の中で、「死ぬ死ぬ」と言って泣き喚いた。
東にぃは、優しい声色で慰め続けてくれた。
なんで、こんなダメダメなぼくにそんなに優しくしてくれるんだ。
この日の為に、いろいろ準備してきたのに、何もかも全部台無しだ。
抱く抱かれるとか、そういう雰囲気じゃない。
泣き続けて、いつしか泣き疲れて眠ってしまった。
🌇
目覚めると、東にぃに添い寝されていた。
東にぃはすでに起きていたらしく、優しい顔でぼくの頭を撫でていた。
昨日の醜態を思い出したら、気恥ずかしくて全身が熱くなった。
「あ、西くん、起きた? 大丈夫? 気分はどう? 良く寝れた?」
「う、うん……ありがと。それから、ごめん」
「いいよ。一応、濡れタオルで顔拭いて冷やしといたけど、大丈夫そ? 大丈夫なら、風呂入っておいで」
「うん、分かった」
ぼくは逃げるように、風呂場へ飛び込んだ。
ひと晩中泣いて、ぐっすり眠ったらスッキリしていた。
泣き疲れて寝て起きたら治るとか、マジでガキじゃん。
東にぃには、「精神的に追い詰められて薬物乱用した」と思われたらしい。
無駄に大量の薬を購入したのが、仇となった。
その日から、東にぃがさらに輪をかけて過保護になっちゃってさ。
結局、何の進展もなく地元へ帰って来てしまった。
あ~あ……、ぼくってホントバカ。
13
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
お腹いっぱい、召し上がれ
砂ねずみ
BL
料理研究家でαの藤白蒼は幼なじみで10個下のΩ晃と番になった。そんな二人の間に産まれた照は元気いっぱいな男の子。泣いたり、笑ったり、家族の温かみを感じながら藤白家の日常が穏やかに進んでいく。
そんな愛する妻と愛する息子、大切な家族のお腹いっぱい喜ぶ顔が見たいから。蒼は今日も明日もその先も、キッチンに立って腕を振るう。
さあ、お腹いっぱい、召し上がれ。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる