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夜の間
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ガイアは俺が多めに作った夕食をうまいと言いながらすべて平らげた。
大きな体から想像できるように、食べる量も半端ない。手籠に積んだパンも全部なくなった。
その後、ガイアに馬の世話を任せて、俺とキキは一緒に風呂に入る。
いつもはゆったりと入る風呂の時間も、誰かが家の中にいると思うとそわそわして落ち着かず、すぐにあがってしまった。
キキを布で拭きながらリビングに入ると、ガイアはちょうど作業部屋から戻ってきた。
「馬は大丈夫でしたか?」
ガイアは一瞬、濡れた髪の俺を見て動きを止める。それから慌てて目を逸らした。
「ああ、落ち着いている。餌もあらかた食べた。ここまで用意してもらって感謝している」
「よかった。あ、コーヒーでも飲みますか? それともお茶がいいですか?」
「お茶をいただこう」
綺麗に体を拭いたキキを床におろすと、さっそくガイアにじゃれついていく。
ガイアは笑い声をあげて、キキの体を撫でる。
二人分のお茶を淹れて、お茶請けにビスケットを出した。
キキの分のビスケットも取り分けて、ハーブ水と一緒に出してやった。
「思うんだが、キキはシルバーフォックスじゃないのか?」
ガイアは温かいお茶を飲みつつ、ビスケットにかじりついているキキを見ている。
「シルバーフォックス? 普通の狐ですよ」
そんな動物は聞いたことがないと言い返したが、確証があるわけではない。ゲーム中は意識したことはなかったが、この世界にもたくさんの動物が生息している。
「キキはこの家の近くにいたとか言っていたが……そうだよな。シルバーフォックスがこんな人里近くにいるわけがない」
「珍しい生き物なんですか?」
「昔は多くいたらしいが、今はほとんど見かけなくなったという伝説級のモンスターだ。風を操る非常に獰猛なモンスターだと言われている。このような白く美しい毛を持つ狐で人の言葉も理解するらしい」
「獰猛?」
思わずくすっと笑ってしまった。幸せそうな顔でビスケットを貪っている姿からかけ離れている。
「白い毛の狐など今まで見たことがなかったからな。狐の腹は白いが全体が白いのはいない。だいたい土のような色をしている」
「北に棲むキタキツネ? いやホッキョクキツネ? とか白い狐のことはなんか昔テレ……じゃなくて、何かで見たような気がするんですが……」
「ホッキョクキツネ? 聞いたことがない。でもそこまで否定するなら違うんだろう。悪かった。獰猛などと言って」
顔をあげたキキの口の周りにはビスケットの欠片がたくさんついている。
「ぷっ……キキ、口元ビスケットだらけじゃん。おいで」
手招きするとキキは素直に俺の側に来たが、ひげにもビスケットがついていた。
「キュン」
「はいはい。でも、もうおしまいな」
「キューン」
「だめ。食べすぎはよくないんだぞ。また明日な」
「キュン」
言い聞かせて口元を布で綺麗に拭きっとってやると、キキは俺の膝に乗って顔をぺろぺろ舐めてきた。
「俺の顔にはビスケットついてないだろ?」
キキを優しく抱き上げる。
「まるで会話をしているようだ」
そう言って微笑んだガイアは欠伸をして眠そうに目を擦った。今にも寝落ちしそうな雰囲気に、俺は茶器を片付けて立ち上がる。
「疲れたでしょう? もう休みましょうか。二階に俺の寝室があります」
キッチンに茶器を置いて、ガイアを二階に案内する。
「ここは本当に居心地がいいな。離れたがらないのもわかる」
手すりのついた階段を一段一段あがりつつ、ガイアは階下を見下して感嘆した。
はじめに電化製品を見せたとき、機能と便利性に驚いたものの、案外あっさりと受け入れてくれた。あまり難しく考える性格ではないのだろう。突っ込んで訊いてくることはなかったので助かった。
「こだわって作ったんです」
「そうだろうな。見事な作りだ」
キキはゆっくり階段を上る俺たちの先を行き、寝室の前までくると振り向いた。
ドアを開けると、キキが先に入って自分の場所だとばかりにベッドに飛び乗る。
「大きなベッドだ」
「窮屈なのは好きじゃないんです。こちらで休んでください。キキおいで」
呼ぶと、キキはどうして? と不思議そうな顔をしながらも俺の側に来る。
「君はどうする?」
「俺は暖炉の前でキキと一緒に寝ます」
「まだ寒いだろう?」
「そうでもないんですよ。冬にもよく暖炉の前で寝てました」
キキを連れて出て行こうとすると、腕を掴まれた。
「伴侶になったのに別々の場所で寝る必要はない」
「えっと……側に人がいると眠れないと思いまして……」
「そこまで俺は繊細じゃない。キキも一緒でいい」
そう言われたら頑なに断るのも申し訳ないような気がして、キキと一緒にベッドに入ることになった。
大きな体から想像できるように、食べる量も半端ない。手籠に積んだパンも全部なくなった。
その後、ガイアに馬の世話を任せて、俺とキキは一緒に風呂に入る。
いつもはゆったりと入る風呂の時間も、誰かが家の中にいると思うとそわそわして落ち着かず、すぐにあがってしまった。
キキを布で拭きながらリビングに入ると、ガイアはちょうど作業部屋から戻ってきた。
「馬は大丈夫でしたか?」
ガイアは一瞬、濡れた髪の俺を見て動きを止める。それから慌てて目を逸らした。
「ああ、落ち着いている。餌もあらかた食べた。ここまで用意してもらって感謝している」
「よかった。あ、コーヒーでも飲みますか? それともお茶がいいですか?」
「お茶をいただこう」
綺麗に体を拭いたキキを床におろすと、さっそくガイアにじゃれついていく。
ガイアは笑い声をあげて、キキの体を撫でる。
二人分のお茶を淹れて、お茶請けにビスケットを出した。
キキの分のビスケットも取り分けて、ハーブ水と一緒に出してやった。
「思うんだが、キキはシルバーフォックスじゃないのか?」
ガイアは温かいお茶を飲みつつ、ビスケットにかじりついているキキを見ている。
「シルバーフォックス? 普通の狐ですよ」
そんな動物は聞いたことがないと言い返したが、確証があるわけではない。ゲーム中は意識したことはなかったが、この世界にもたくさんの動物が生息している。
「キキはこの家の近くにいたとか言っていたが……そうだよな。シルバーフォックスがこんな人里近くにいるわけがない」
「珍しい生き物なんですか?」
「昔は多くいたらしいが、今はほとんど見かけなくなったという伝説級のモンスターだ。風を操る非常に獰猛なモンスターだと言われている。このような白く美しい毛を持つ狐で人の言葉も理解するらしい」
「獰猛?」
思わずくすっと笑ってしまった。幸せそうな顔でビスケットを貪っている姿からかけ離れている。
「白い毛の狐など今まで見たことがなかったからな。狐の腹は白いが全体が白いのはいない。だいたい土のような色をしている」
「北に棲むキタキツネ? いやホッキョクキツネ? とか白い狐のことはなんか昔テレ……じゃなくて、何かで見たような気がするんですが……」
「ホッキョクキツネ? 聞いたことがない。でもそこまで否定するなら違うんだろう。悪かった。獰猛などと言って」
顔をあげたキキの口の周りにはビスケットの欠片がたくさんついている。
「ぷっ……キキ、口元ビスケットだらけじゃん。おいで」
手招きするとキキは素直に俺の側に来たが、ひげにもビスケットがついていた。
「キュン」
「はいはい。でも、もうおしまいな」
「キューン」
「だめ。食べすぎはよくないんだぞ。また明日な」
「キュン」
言い聞かせて口元を布で綺麗に拭きっとってやると、キキは俺の膝に乗って顔をぺろぺろ舐めてきた。
「俺の顔にはビスケットついてないだろ?」
キキを優しく抱き上げる。
「まるで会話をしているようだ」
そう言って微笑んだガイアは欠伸をして眠そうに目を擦った。今にも寝落ちしそうな雰囲気に、俺は茶器を片付けて立ち上がる。
「疲れたでしょう? もう休みましょうか。二階に俺の寝室があります」
キッチンに茶器を置いて、ガイアを二階に案内する。
「ここは本当に居心地がいいな。離れたがらないのもわかる」
手すりのついた階段を一段一段あがりつつ、ガイアは階下を見下して感嘆した。
はじめに電化製品を見せたとき、機能と便利性に驚いたものの、案外あっさりと受け入れてくれた。あまり難しく考える性格ではないのだろう。突っ込んで訊いてくることはなかったので助かった。
「こだわって作ったんです」
「そうだろうな。見事な作りだ」
キキはゆっくり階段を上る俺たちの先を行き、寝室の前までくると振り向いた。
ドアを開けると、キキが先に入って自分の場所だとばかりにベッドに飛び乗る。
「大きなベッドだ」
「窮屈なのは好きじゃないんです。こちらで休んでください。キキおいで」
呼ぶと、キキはどうして? と不思議そうな顔をしながらも俺の側に来る。
「君はどうする?」
「俺は暖炉の前でキキと一緒に寝ます」
「まだ寒いだろう?」
「そうでもないんですよ。冬にもよく暖炉の前で寝てました」
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「伴侶になったのに別々の場所で寝る必要はない」
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