12 / 20
はじめての夜
しおりを挟む
壁際にガイアが寄ったので、隣にそっと体を滑りこませる。キキはどこに行けばいいかうろうろしていたが、俺の枕元に来て落ち着いたようだ。
男二人が寝ても十分な広さがあるので密着することはない。宿屋では足が出ていたガイアもこのベッドでは余裕でおさまる。
ガイアが心底満足そうに息をつく。
ふかふかな寝心地に包み込むような肌触りのシーツ、温かな羽毛布団はこの世の天国と言ってもいい。お風呂と並んで二大天国だ。
風もない静かな夜に、次第に眠気が襲ってくる。
「君はまだ踊っているのか?」
もう寝たと思っていたガイアが静かに訊いてきた。
「ここに来てから踊ってません」
「そうか」
お金を稼ぐ必要がない今、踊る必要もない。それにゲーム中では踊りはデフォルト。今踊れるかと訊かれたら、多分踊れない。戦うのが怖いのと一緒だ。
「君の踊りは本当に美しく官能的だ。踊っていないと聞いて……少しほっとした」
「どうしてですか?」
「君が踊ると誰の目も釘付けにしてしまう。俺と結婚した今、独占欲のようなものだ。もう一度見たいと思うと同時に誰にも見せたくないと嫉妬してしまう」
ガイアは恥ずかしげもなく、自分の心情をそう口にした。
暗闇の中でガイアの手が俺の髪に触れる。
「結婚してくれてありがとう」
真摯な言葉だった。
「君が独り身でよかった。美しい君は、もうとっくに誰かのものになっているのだと思っていた」
俺ははっと息を呑んだ。彼は見目の良さで俺を選んだのかもしれない。
「この姿は偽物かもしれませんよ?」
意地悪でもなんでもなく、思ったことがつい口から出た。
今の俺はシノというゲームの中の作られた姿。本当は日本でサラリーマンをしている、なんの取り柄もない普通の男なのに。
「不思議なことを言う。年を重ねれば姿は変わっていくかもしれないが、心根は変わらない。俺と結婚してくれた。家に入れてもてなしてくれた。うまい食事も温かい風呂も柔らかいベッドも提供してくれた。これほど嬉しいことはない」
ガイアの心根はまっすぐで純粋だ。街の人ですら、騎士団が俺に用があると知ったとき、疑いの目を向けたのに、一度しか会っていない俺を簡単に信じている。
衣擦れの音がして、すぐ側でガイアの息遣いを感じたと思った瞬間、唇に触れてきた。口づけされたのだと知って、慌てて顔を背けると、後ろにいたキキが「キュン」と邪魔そうに鳴く。頭の上に手をやりキキを宥めるように撫でるが、嫌がって床に逃げてしまった。
ガイアがぎゅっと抱きしめてくる。
「愛している」
囁くようなガイアの声は甘く少し掠れている。
結婚したのだから、キスもその後の行為もおかしくはないのだが、俺にも心の準備というものがあって……正直に言うと少し怖い。ガイアに一度抱かれたとはいえ、記憶がないのではじめても同然だ。
「君と結婚出来て本当に嬉しい」
俺なら恥ずかしくて言えない言葉もガイアは驚くほど率直に口にする。彼はそういう男なのだ。
「好きだ」
熱がこもる声にまた唇を塞がれて、今度は逃げずに受け止める。
好かれていること自体に嫌悪はなく、キスも悪い気はしない。ガイアの迸る情熱を受け止めるように、体から力を抜いて唇を開いた。
「シノ」
はじめて名前を呼ばれてどきっとする。
「シノ」
確かめるようにキスの合間に何度も呼ぶ声は熱く、服越しに伝わるガイアの大きな体からも欲望が伝わってくる。
体に触れられて、至るところに口づけを受けて、俺の体は次第に蕩けていく。
はじめは優しく、羽毛に包まれるかのように優しく抱かれた。
二度目は少しだけわがままに、背後から一つになった。
三度目は情熱的に、炎が燃え上るように激しく貫かれた。
四度目はもう覚えていない。
抱きしめる腕の逞しさやしっかりと受け止めてくれる胸板の厚さに体を預けたまま、ほとんど気絶寸前で抱き付いていたような気がする。
体力も精力も尽きることがなく、その絶倫さに最後は声も出なかった。
「愛してる。シノ」
何度も言われたその言葉を最後に俺は目を閉じたのだ。
男二人が寝ても十分な広さがあるので密着することはない。宿屋では足が出ていたガイアもこのベッドでは余裕でおさまる。
ガイアが心底満足そうに息をつく。
ふかふかな寝心地に包み込むような肌触りのシーツ、温かな羽毛布団はこの世の天国と言ってもいい。お風呂と並んで二大天国だ。
風もない静かな夜に、次第に眠気が襲ってくる。
「君はまだ踊っているのか?」
もう寝たと思っていたガイアが静かに訊いてきた。
「ここに来てから踊ってません」
「そうか」
お金を稼ぐ必要がない今、踊る必要もない。それにゲーム中では踊りはデフォルト。今踊れるかと訊かれたら、多分踊れない。戦うのが怖いのと一緒だ。
「君の踊りは本当に美しく官能的だ。踊っていないと聞いて……少しほっとした」
「どうしてですか?」
「君が踊ると誰の目も釘付けにしてしまう。俺と結婚した今、独占欲のようなものだ。もう一度見たいと思うと同時に誰にも見せたくないと嫉妬してしまう」
ガイアは恥ずかしげもなく、自分の心情をそう口にした。
暗闇の中でガイアの手が俺の髪に触れる。
「結婚してくれてありがとう」
真摯な言葉だった。
「君が独り身でよかった。美しい君は、もうとっくに誰かのものになっているのだと思っていた」
俺ははっと息を呑んだ。彼は見目の良さで俺を選んだのかもしれない。
「この姿は偽物かもしれませんよ?」
意地悪でもなんでもなく、思ったことがつい口から出た。
今の俺はシノというゲームの中の作られた姿。本当は日本でサラリーマンをしている、なんの取り柄もない普通の男なのに。
「不思議なことを言う。年を重ねれば姿は変わっていくかもしれないが、心根は変わらない。俺と結婚してくれた。家に入れてもてなしてくれた。うまい食事も温かい風呂も柔らかいベッドも提供してくれた。これほど嬉しいことはない」
ガイアの心根はまっすぐで純粋だ。街の人ですら、騎士団が俺に用があると知ったとき、疑いの目を向けたのに、一度しか会っていない俺を簡単に信じている。
衣擦れの音がして、すぐ側でガイアの息遣いを感じたと思った瞬間、唇に触れてきた。口づけされたのだと知って、慌てて顔を背けると、後ろにいたキキが「キュン」と邪魔そうに鳴く。頭の上に手をやりキキを宥めるように撫でるが、嫌がって床に逃げてしまった。
ガイアがぎゅっと抱きしめてくる。
「愛している」
囁くようなガイアの声は甘く少し掠れている。
結婚したのだから、キスもその後の行為もおかしくはないのだが、俺にも心の準備というものがあって……正直に言うと少し怖い。ガイアに一度抱かれたとはいえ、記憶がないのではじめても同然だ。
「君と結婚出来て本当に嬉しい」
俺なら恥ずかしくて言えない言葉もガイアは驚くほど率直に口にする。彼はそういう男なのだ。
「好きだ」
熱がこもる声にまた唇を塞がれて、今度は逃げずに受け止める。
好かれていること自体に嫌悪はなく、キスも悪い気はしない。ガイアの迸る情熱を受け止めるように、体から力を抜いて唇を開いた。
「シノ」
はじめて名前を呼ばれてどきっとする。
「シノ」
確かめるようにキスの合間に何度も呼ぶ声は熱く、服越しに伝わるガイアの大きな体からも欲望が伝わってくる。
体に触れられて、至るところに口づけを受けて、俺の体は次第に蕩けていく。
はじめは優しく、羽毛に包まれるかのように優しく抱かれた。
二度目は少しだけわがままに、背後から一つになった。
三度目は情熱的に、炎が燃え上るように激しく貫かれた。
四度目はもう覚えていない。
抱きしめる腕の逞しさやしっかりと受け止めてくれる胸板の厚さに体を預けたまま、ほとんど気絶寸前で抱き付いていたような気がする。
体力も精力も尽きることがなく、その絶倫さに最後は声も出なかった。
「愛してる。シノ」
何度も言われたその言葉を最後に俺は目を閉じたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
腹を隠さず舌も出す
梅したら
BL
「後悔はしてるんだよ。これでもね」
幼馴染の佐田はいつも同じことを言う。
ポメガバースという体質の俺は、疲れてポメラニアンに変化したところ、この男に飼われてしまった。
=====
ヤンデレ×ポメガバース
悲壮感はあんまりないです
他サイトにも掲載
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる