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5 生活水準
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俺はまず、この神殿の中がどうなっているのか確認した。この大広間とも言えるがらんとした場所は何度見回しても、目を凝らしても何もない。
サージャが出て行った扉は押しても引いても叩いても頑として開かなかった。ただ反対方向の奥にも大きな扉があり、一縷の望みをかけて押してみると僅かに動く。そこで体重をかけて渾身の力を込めて押すと人が一人通れるだけの隙間ができた。体を横にしてつま先立ちで通る。
そこは外につながっていた。雑草が生い茂り大きな木も数本生えている中、中央に噴水がある。
中を覗いてみると、水は澄んでいてそこから湧きあがっているようだった。
試しに両手で掬って飲んでみる。冷たい水は美味しくて、思わず、二度、三度と水を飲んで喉を潤した。
一息つくと、色々なことを考えてしまう。どうしてこんなことになったのか……これからのことを思うと涙が滲みそうになる。
考えても仕方がないが、生きるか死ぬか考えればどんな環境であれ生きることを望む。例えここが異世界で、神の子を授かるように言われてもだ。
気持ちを奮い立たせるように、乱暴に口を拭い、空を見上げる。
晴れた空は日本と同じく青く果てしない。ゆったりと流れる雲も、日差しも変わりない。ただ、この空は日本とは繋がってないのだ。地球ではないのだから当たり前だ。
見渡せば、ここは庭園の名残なのか、伸び放題の草の中に花壇らしきものがあって可憐な花も咲いている。レリーフに彫られてある百合の花に似ていた。
花弁に触れると、噎せかえるような強い香りが漂う。
手入れされていれば、さぞ美しい姿が映えるだろうに、神殿の中は掃除されていても、庭園まで手が回らないらしい。
ここから逃げだすことも考えなくもないが、どう見てもこの神殿を取り囲むようにそびえる塀を乗り越える力も道具もない。
塀の前に立って両手をあげてみるものの、ジャンプしても届くはずもなく、余計に塀の高さを実感するだけだった。
とりあえず水はあることだけを確認して、大広間に戻り、積み上げられた木箱を見てみる。
りんごのような果物とパン、干し肉、それと皮革でできた水筒のようなものがある。中は液体のようだから酒か水だろうか。
あとは他の人たちが着ていたような長衣と革でできた粗末な靴。麻のようなざらざらとした硬い手触りの布も入っている。
藁も出てきた。一体どうやって使うのだろう。
とりあえず一週間持つかわからないが食料はある。あと着替えも。
もっと木箱を探ってみると、下の方から数冊の本と蝋燭と鼠色の物体がでてきた。
本はB5サイズ程度の大きさで持つとかなり重い。文字はまったく読めなかった。
「なんだこれ?」
鼠色のものは石のようにも見えるが、それほど硬さはない。明らかに食べられる感じではなく、嗅いでみると油のような匂いがして、触るとぬるりと滑る。石鹸かもしれない。体は清潔にしておけという意味だろうかと喜んだが、もしかして神と交わるから? と考えると絶望しかなかった。
あと木箱に入っているものはない。つまり、これだけのもので暮らせということだ。
電気、ガス、水道、携帯電話に慣れた俺にはハードルが高い。極限の中で生き延びるサバイバルのようだ。
そもそも蝋燭があっても火がない。マッチやライターがあるわけでもなく、どうやって明かりを灯せばいいのかわからない。
それに、夜寝るときは、どうしたらいいのだろう。
ベッドも布団もあるわけがなく、藁を敷いて、布にくるまって眠るしかないのだろうか。
「どうすんだよー」
俺は大きなため息をつき、頭を抱えた。
サージャが出て行った扉は押しても引いても叩いても頑として開かなかった。ただ反対方向の奥にも大きな扉があり、一縷の望みをかけて押してみると僅かに動く。そこで体重をかけて渾身の力を込めて押すと人が一人通れるだけの隙間ができた。体を横にしてつま先立ちで通る。
そこは外につながっていた。雑草が生い茂り大きな木も数本生えている中、中央に噴水がある。
中を覗いてみると、水は澄んでいてそこから湧きあがっているようだった。
試しに両手で掬って飲んでみる。冷たい水は美味しくて、思わず、二度、三度と水を飲んで喉を潤した。
一息つくと、色々なことを考えてしまう。どうしてこんなことになったのか……これからのことを思うと涙が滲みそうになる。
考えても仕方がないが、生きるか死ぬか考えればどんな環境であれ生きることを望む。例えここが異世界で、神の子を授かるように言われてもだ。
気持ちを奮い立たせるように、乱暴に口を拭い、空を見上げる。
晴れた空は日本と同じく青く果てしない。ゆったりと流れる雲も、日差しも変わりない。ただ、この空は日本とは繋がってないのだ。地球ではないのだから当たり前だ。
見渡せば、ここは庭園の名残なのか、伸び放題の草の中に花壇らしきものがあって可憐な花も咲いている。レリーフに彫られてある百合の花に似ていた。
花弁に触れると、噎せかえるような強い香りが漂う。
手入れされていれば、さぞ美しい姿が映えるだろうに、神殿の中は掃除されていても、庭園まで手が回らないらしい。
ここから逃げだすことも考えなくもないが、どう見てもこの神殿を取り囲むようにそびえる塀を乗り越える力も道具もない。
塀の前に立って両手をあげてみるものの、ジャンプしても届くはずもなく、余計に塀の高さを実感するだけだった。
とりあえず水はあることだけを確認して、大広間に戻り、積み上げられた木箱を見てみる。
りんごのような果物とパン、干し肉、それと皮革でできた水筒のようなものがある。中は液体のようだから酒か水だろうか。
あとは他の人たちが着ていたような長衣と革でできた粗末な靴。麻のようなざらざらとした硬い手触りの布も入っている。
藁も出てきた。一体どうやって使うのだろう。
とりあえず一週間持つかわからないが食料はある。あと着替えも。
もっと木箱を探ってみると、下の方から数冊の本と蝋燭と鼠色の物体がでてきた。
本はB5サイズ程度の大きさで持つとかなり重い。文字はまったく読めなかった。
「なんだこれ?」
鼠色のものは石のようにも見えるが、それほど硬さはない。明らかに食べられる感じではなく、嗅いでみると油のような匂いがして、触るとぬるりと滑る。石鹸かもしれない。体は清潔にしておけという意味だろうかと喜んだが、もしかして神と交わるから? と考えると絶望しかなかった。
あと木箱に入っているものはない。つまり、これだけのもので暮らせということだ。
電気、ガス、水道、携帯電話に慣れた俺にはハードルが高い。極限の中で生き延びるサバイバルのようだ。
そもそも蝋燭があっても火がない。マッチやライターがあるわけでもなく、どうやって明かりを灯せばいいのかわからない。
それに、夜寝るときは、どうしたらいいのだろう。
ベッドも布団もあるわけがなく、藁を敷いて、布にくるまって眠るしかないのだろうか。
「どうすんだよー」
俺は大きなため息をつき、頭を抱えた。
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