拗らせリアコネクト

山吹レイ

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「健斗」
 相変わらず猫背な背中に声をかけると、健斗は後ろを振り向いてぱっと顔を輝かせる。
「星矢……くん」
「今日は金曜日だぞ」
「う、うん。わかってる。ゴミは出した」
「ならいい」
 あれから俺と健斗は会えば会話をする仲になった。それがきっかけで、人が苦手と言いながら他の住人にも挨拶ぐらいは交わせるようになったらしい。基本話し下手だから話しかけられてもおどおどしてしまうらしいが、それでも前ほど根暗さは感じない。
「今日は、来る?」
 健斗はコンビニにでも行って来たのか、ビニールの袋を強く握りしめて、期待するように俺に訊く。実は会話をする仲になっただけではなく、互いの部屋を行き来する間柄にまで発展している。つまり今では友人だ。あの日以来ゴミをきちんと片付けているか心配もあり、こちらから話しかけてみたり、相談に乗ったりしていたが、まさかここまで懐かれるとは思ってもみなかった。
「あー、課題が進んでないからなあ……」
 言うなり、健斗はがっくりと肩を落とした。
 健斗には友人と呼べる相手はいないと言っていた。中学校でいじめられてからずっと部屋に引きこもって、高校にも進学していないらしいので、かなり根深い問題である。だから、はじめて友達ができて、嬉しかったと素直に喜んでいた。相手が俺というのもなんだが、引っ込み思案な上、人嫌いなところもあるので、それがきっかけで少しでも緩和されればいいなとは思っている。
 しょんぼりしている姿が可愛そうに見えて、俺は思わず譲歩してやろうという気になる。
「終わりそうだったら行く」
 健斗は「ん」と短く返事をして頬を緩ませる。付き合ってみると、ほっとけないところはあるものの、素直でいい奴だと思う。
 この顔を覆う前髪がなくなればもっと表情がわかるのに、薄っぺらさはあるものの背中も丸めなければ、その長身も活かせるだろうに。以前酒が入ってついぽろっと言ってしまったが、外見とか言われていい気はしないだろうから、今は口にしないだけの忖度はする。何か変わるきっかけがあれば、人間すぐに変われるのだ。
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