愛おしい君 溺愛のアルファたち

山吹レイ

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交歓の坩堝

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「あっ……あっ……」
 瀧本倫(たきもと りん)は嬌声をあげて、深く入りすぎたものを引き抜くように背を反らし足に力をこめる。だが、快感に溺れた体は力が入らず、シーツの上を滑るように膝がずれて逆に根元まで咥えこんだ。
 接合部分から溢れた白濁が飛び散り、滴り落ちるものはそのままに、太腿に淫靡な跡を残す。
 跨った格好のまま、一瞬気を失ったようにぼんやりしていたようで、挿入していた目の前の男……西将之(にし まさゆき)は鋭い目を細めて心配そうに見つめていた。
「倫、大丈夫か?」
 耳に心地いい、低くぶっきらぼうながらも、掠れた官能的な声。
 頷いた拍子に汗が顎を伝い、将之の逞しい腹筋にぽつりと落ちる。
 倫が前のめりになると、将之は肘をついて上半身を起こし、己の白濁でしとどに濡れた倫の小ぶりなものを優しく擦って唇を重ねた。
「ん……あふっ……」
 唾液が溢れ滴り落ちても舌を絡め、貪るように口内を犯す将之は、倫の腰を掴み下から緩慢な動きで突き上げる。
 一度中に放たれたものが出入りするたびに泡立ち愛液と一緒に溢れて、卑猥な音を立てた。
「可愛いなあ、倫。いやらしくて本当に可愛い」
 ずっと椅子に座って見ていた男、小玉亮(こだま りょう)が自身を扱きながら、そう言って蕩けるように笑う。
「発情期じゃないのに、感じてるんだ?」
 亮は椅子から立ち上がると、ベッドに乗り上げて倫の脇に立ち、見せつけるように勃起したものを突き出した。
 倫が唇を離すと、将之の唇から繋がった銀糸が垂れる。亮に顎を掴まれ倫が躊躇うように目を伏せると「あーん」と先走りしたものを唇に押しつけられた。
 倫はおずおずと口を開いて亀頭を咥えた。青臭い生々しい味は、抱かれるようになって一か月経った今も慣れない。それでも、なるべく味を感じないように口と舌の動きに集中すると、感覚が薄れていくような気がした。
「おいしい?」
 甘く優しい声とは裏腹に、亮の目は倫を値踏みしているように冷静だ。亮は乱暴に倫の頭を掴みぐっと腰を前に出した。喉を突かれて、嘔吐きそうになったが涙目で耐える。
 口の中の存在は大きくなって熱くて硬いのに、見下す表情は相反して無表情にも見えて、倫にはこのときだけ亮が少しだけ怖かった。
「出すから、ちゃんと飲んで。ごっくんだよ」
 猫を愛撫するかのように、倫の喉を撫で、腰を振った亮は喉の奥で生暖かい体液を迸らせた。
 咥えたままで飲みこむことはできずに、反射的に顔を引くと、咳きこんだ口からぬるりと勃起したものが抜けていく。
「ごほっ……ごほっ……」
 口の端から夥しい量の精液が垂れていく。
「あーあ……せっかく出したのに」
 亮は顎に伝うどろっとした体液を指先ですくって、呆然とする倫の頬や唇に塗っていく。その目に背筋をぞくりとさせるような狂気が浮かんでいるように見えて、倫は指から逃れるように顔を背けた。
「倫! 倫!」
 突然大きな声が部屋中に響き渡る。次いで、足音も荒々しく歩き回る音と、何度もドアを開ける音がする。時計はもう深夜零時を回っていて、階下の住人も寝静まっている頃だ。防音対策がされているとはいえ、あんなに騒がしいようでは隣人にも聞こえそうだ。
「あいつは……もう……」
 呟いて倫の髪を優しくかきあげる亮は、さきほどまでの狂気が幻だったかのように呆れた様子でため息をつく。
 勢いよく倫たちがいる寝室のドアが開いた。倫の姿を見つけた瞬間、入ってきた男、渋川大河(しぶかわ たいが)は満面の笑みになり、駆け寄ってくる。
「ただいま! 倫!」
 ぎゅっと抱きしめられて、倫は困ったように「おかえりなさい」と微笑んだ。なにせ、未だ下から貫かれたまま、汗と涎と精液まみれなのだから。
「あのクソ監督のおかげで撮影が長引いて……亮、てめえの汚えもののせいでキスができねえじゃねえか」
 強く抱きしめていた体を離して、倫の顔を見た大河は、その野性味あふれる美しい顔を怒りで歪ませ、乱暴な言葉で言い放った。
「倫はてめえだけのもんじゃねえんだよ」
 何万もするようなシャツの袖で倫の顔を優しく拭いた大河は、体を引き寄せて上に浮かせる。
 体内からずるりと将之のものが抜けて、尻から白濁が溢れてきた。恥ずかしさに顔を赤らめると、大河は幼子を抱くように倫を抱き上げて寝室を出る。
「俺がいない間、酷いことされなかったか?」
 頬にはりついた髪をそっと撫でて、大河は探るように倫の目を見る。
「大丈夫……です」
 することはしていても慣れない距離感に戸惑いながら、振り落とされないようにしがみつく。
「ならいいんだけどよ、嫌なら嫌と言っていいんだぞ」
 大河はバスルームへと来るとタイルの上に倫をおろし、蛇口を捻ってバスタブに湯を出して「入ってろ」と促した。
 今日二度目の風呂になるが、口には出さず、シャワーで顔と体を洗い、口を漱いだ。
 素早く全裸になった大河が「ほら、入ってろって。体が冷たくなってる」と倫の尻を軽く叩く。
「でも……まだ汚いので……」
 言い訳をきかずに、大河は倫を抱き上げ、バスタブをまたいだ。
「汚くない」
 足首までしか溜まっていない湯の中で、向き合って座ると端正な顔が近づいてきたので目を瞑る。こういうときの大河のキスは情熱的だ。攫うような激しさと全身で求めているような熱さを感じる。
 唇を吸い、唾液を絡ませながら縋るように腕を掴むと、大河は尻を揉みながら先ほどまで貫かれていたところに指を入れてきた。
「どんだけ出したんだよ。あのクソ男」
 やや指を曲げて体内を優しく掻くように出し入れする大河に、倫は唇を噛んで声が漏れないように耐える。
「噛むな。傷がつく」
 再び唇を重ね、きつく噛みすぎてじんじんする箇所を優しく舐められた。
「綺麗になった」
 そっと指が抜かれ、倫は息を吐き強張っていた体を緩ませる。
 大河は肩に湯をかけて、倫が寒くないように気を配ってくれる。突然大河は大きく欠伸をして目を閉じ、倫を抱き寄せる。疲れているようでもあったが、倫を抱くその表情は穏やかで、この時間を楽しんでいるのがわかる。
 その後、倫は大河の髪や体を洗ってあげて、まったりとした時間を過ごした。
 大河は濡れた髪はそのままにタオルを肩にかけて、準備しておいた夕食をおいしそうに食べる。
 食べ終えた大河は、早々に倫を伴って寝室へと行った。
 抱かれるのかと思っていたが、大河は倫を子供のように抱きしめたまま、安らかな寝息を立てていた。
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