46 / 61
第一章 日常ラブコメ編
第43話 世の中、何があるか分かりません
しおりを挟む
「慣れ」って言うのは、恐ろしいモノだ。普通に考えたら「異常な事」なのに、それが当り前になっている。土曜日、ラミアとデートした事も。ラミアとのデートは(朝飯の時に作って貰った味噌汁が超美味かった)……「楽しい」と言うよりも、(中学生が初めて好きな子とデートした時のような)気恥ずかしさがあった。
手を繋ぐのはもう慣れたが、その唇にキスされるのは、やっぱり緊張する。気持ちが(屋上の時のように)冷静でなければ、「え、あっ」とドギマギし、そして、「う、ううん」と戸惑ってしまった。彼女の唇は、それ程に甘い。
その唾液が口に入ると、まるで媚薬を飲まされたような感覚になってしまう。それこそ、頭の奥が蕩けるように。彼女のキスには、それ程までの力があった。俺の隣を歩くウリナも。
彼女は優しげな顔で、俺の手を握り、その表情に「クスッ」と微笑んだ。
「楽しみですね、美術館」
「ああ。丁度、人気の展示会がやっているみてぇだし。俺も絵なら苦手じゃねぇからな」
俺は彼女の趣味にホッとしつつ(これが読書だったら死んでいた)、彼女の手を握り返して、美術館までの道を歩きつづけた。
美術館の前は、混んでいた。流石は人気絵師の展示会なだけはあって、俺達くらいの高校生はもちろん、俺達よりもずっと年上の老人達も並んでいる。それぞれの手に前売り券を、前売り券が無い者は、展示会のパンフレットを持って。
俺はその様子に苦笑したが、ウリナの方は楽しそうに「フフフ」と笑っていた。
「流石は、人気絵師の角原列歩これだけの人を呼び込めるとは、流石です」
「う、うん、確かに。俺も、名前だけは知っていたからな。『江戸時代の中期に活躍した絵師だ』って。当時は、あんまり人気が無かったようだけど」
「時代が『彼』に追い着いていなかったんです。芸術には、良くある事ですよ。印象派で有名なモネだって、最初は」
彼女は楽しげな顔で、印象派の歴史を話しはじめた。
俺はその話を聞きつつ、改めて「モノフルにも色んな奴がいるんだな」と思った。
彼女は、印象派の歴史を話し終えた。
「わたくし達も、それと同じです。最初はまったく売れなかったがオモチャが、何かをキッカケに……フフフ。世の中、何があるか分かりません」
「確かに、な。サイコロサイズのオモチャなんて、余程のマニアじゃなきゃ買わないだろうし」
俺は人間の作る力、流行の凄さに生唾を呑んだ。
「俺は、その流行が良く分からないけど」
興味があるとか以前に。俺には、流行を感じる力が備わっていないのだ。
俺はその事実に苦笑しつつも、二人分のチケットを買って、彼女と一緒に角原列歩の展示会を観はじめた。角原列歩の展示会は、圧巻だった。今まで(学校の行事とかで)色んな展示会を見てきたけれど。
ここの展示物は、そのどれもが敵わない。他の展示会が、霞んで見える程に凄かった。俺の隣で作品を観ているウリナも、声には出していないが、俺と同じように「う、ううっ」と唸っていた。
ウリナは、その両目に涙を浮かべた。
「素晴らしい」
俺はそう感じる、彼女の感性を「素晴らしい」と思った。
「ああ、本当に。俺も、すげぇと思うよ」
俺達は揃って、人気絵師の世界に浸りつづけた。その世界が終わったのは、最後の絵を観てから数分後の事だった。現実の世界に引き戻される、俺とウリナ。
俺達は互いの顔を見合い、そして、「来て良かった」と言い合った。
「夢のような時間でしたね?」
「うん! 俺も夢中で楽しんじゃったよ!」
俺達は、互いの言葉に笑い合った。
「昼食まではまだ、時間がありますけど」
「そうだな。丁度、何か飲みたかったし」
ここは、空気を読んで。
「何処か喫茶店にでも入ろうか?」
「はい!」と笑った顔が、眩しかった。「わたくしも、お茶が飲みたいですし」
俺は彼女の手を握り、近くの喫茶店に行った。喫茶店の中は、それなりに人が入っていた。常連客と思われるおっさんから、俺達よりも若い子どもまで。店のカウンター席には、いかいにも無愛想なおばさんが座っていた。
俺達は近くのテーブル席に座り、俺はアイスコーヒーを、ウリナは紅茶のダージリンを頼んだ。
「かしこまりました」と、テーブルの前から歩き出す店員。「少々、お待ち下さい」
彼女は「ニコッ」と笑って、店の厨房にメモを置いた。
俺は、正面のウリナに視線を戻した。
「雰囲気の良い店だな」
「はい。お茶をするなら、最高のお店です」
俺達は注文の品が来るまで、さっき観てきた展示館の感想を言い合った。
俺は、自分のアイスコーヒーを飲んだ。
「うぉ、美味い」
「わたくしの紅茶も、すごく美味しいです」
俺達は「ニコッ」と笑って、昼飯までの時間を過ごしつづけた。
手を繋ぐのはもう慣れたが、その唇にキスされるのは、やっぱり緊張する。気持ちが(屋上の時のように)冷静でなければ、「え、あっ」とドギマギし、そして、「う、ううん」と戸惑ってしまった。彼女の唇は、それ程に甘い。
その唾液が口に入ると、まるで媚薬を飲まされたような感覚になってしまう。それこそ、頭の奥が蕩けるように。彼女のキスには、それ程までの力があった。俺の隣を歩くウリナも。
彼女は優しげな顔で、俺の手を握り、その表情に「クスッ」と微笑んだ。
「楽しみですね、美術館」
「ああ。丁度、人気の展示会がやっているみてぇだし。俺も絵なら苦手じゃねぇからな」
俺は彼女の趣味にホッとしつつ(これが読書だったら死んでいた)、彼女の手を握り返して、美術館までの道を歩きつづけた。
美術館の前は、混んでいた。流石は人気絵師の展示会なだけはあって、俺達くらいの高校生はもちろん、俺達よりもずっと年上の老人達も並んでいる。それぞれの手に前売り券を、前売り券が無い者は、展示会のパンフレットを持って。
俺はその様子に苦笑したが、ウリナの方は楽しそうに「フフフ」と笑っていた。
「流石は、人気絵師の角原列歩これだけの人を呼び込めるとは、流石です」
「う、うん、確かに。俺も、名前だけは知っていたからな。『江戸時代の中期に活躍した絵師だ』って。当時は、あんまり人気が無かったようだけど」
「時代が『彼』に追い着いていなかったんです。芸術には、良くある事ですよ。印象派で有名なモネだって、最初は」
彼女は楽しげな顔で、印象派の歴史を話しはじめた。
俺はその話を聞きつつ、改めて「モノフルにも色んな奴がいるんだな」と思った。
彼女は、印象派の歴史を話し終えた。
「わたくし達も、それと同じです。最初はまったく売れなかったがオモチャが、何かをキッカケに……フフフ。世の中、何があるか分かりません」
「確かに、な。サイコロサイズのオモチャなんて、余程のマニアじゃなきゃ買わないだろうし」
俺は人間の作る力、流行の凄さに生唾を呑んだ。
「俺は、その流行が良く分からないけど」
興味があるとか以前に。俺には、流行を感じる力が備わっていないのだ。
俺はその事実に苦笑しつつも、二人分のチケットを買って、彼女と一緒に角原列歩の展示会を観はじめた。角原列歩の展示会は、圧巻だった。今まで(学校の行事とかで)色んな展示会を見てきたけれど。
ここの展示物は、そのどれもが敵わない。他の展示会が、霞んで見える程に凄かった。俺の隣で作品を観ているウリナも、声には出していないが、俺と同じように「う、ううっ」と唸っていた。
ウリナは、その両目に涙を浮かべた。
「素晴らしい」
俺はそう感じる、彼女の感性を「素晴らしい」と思った。
「ああ、本当に。俺も、すげぇと思うよ」
俺達は揃って、人気絵師の世界に浸りつづけた。その世界が終わったのは、最後の絵を観てから数分後の事だった。現実の世界に引き戻される、俺とウリナ。
俺達は互いの顔を見合い、そして、「来て良かった」と言い合った。
「夢のような時間でしたね?」
「うん! 俺も夢中で楽しんじゃったよ!」
俺達は、互いの言葉に笑い合った。
「昼食まではまだ、時間がありますけど」
「そうだな。丁度、何か飲みたかったし」
ここは、空気を読んで。
「何処か喫茶店にでも入ろうか?」
「はい!」と笑った顔が、眩しかった。「わたくしも、お茶が飲みたいですし」
俺は彼女の手を握り、近くの喫茶店に行った。喫茶店の中は、それなりに人が入っていた。常連客と思われるおっさんから、俺達よりも若い子どもまで。店のカウンター席には、いかいにも無愛想なおばさんが座っていた。
俺達は近くのテーブル席に座り、俺はアイスコーヒーを、ウリナは紅茶のダージリンを頼んだ。
「かしこまりました」と、テーブルの前から歩き出す店員。「少々、お待ち下さい」
彼女は「ニコッ」と笑って、店の厨房にメモを置いた。
俺は、正面のウリナに視線を戻した。
「雰囲気の良い店だな」
「はい。お茶をするなら、最高のお店です」
俺達は注文の品が来るまで、さっき観てきた展示館の感想を言い合った。
俺は、自分のアイスコーヒーを飲んだ。
「うぉ、美味い」
「わたくしの紅茶も、すごく美味しいです」
俺達は「ニコッ」と笑って、昼飯までの時間を過ごしつづけた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる