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願掛け
しおりを挟む柔と分かれた剛が神社の境内で懐の指輪を取り出し、勝色の左の薬指に嵌めてやり、もう一つを自分の薬指に同じように嵌めた。
「この指輪はペアリングといって『一生二人で添い遂げる』意味なのだそうだ。
だからカツ、俺はこのペアリングに誓う。
お前と一生添い遂げる。だから、もう不安に思わず俺を信じてくれ」
そう言って花も綻ぶ勝色の好きな笑顔を見せると、勝色が剛にしがみ付いて泣きだした。
一方、よろず屋の花色の部屋に戻った二人は、いつもの様に膝枕で寛いでいた。柔がおもむろに今まで見につけていた宝飾の全てを外して「お前が捨てろ」と言った。
「なんでそんなにたくさん身に着けていたんだ?」
花色が今まで抱いていた疑問をぶつけた。
「まあ『願掛け』だな。
思い人に会えるって言われちゃあ、全部買って身に着けた。
だからお前にまた会えた…と思ってる」
(巷の女たちの様なことをしていたのか)
柔の可愛い一面を見つけられたことに喜びを感じた花色が小さな笑みを浮かべた。
「お前、心ん中で『巷の女みてえ』って思ったろ?」
「えっ、思ってないよ」
花色がとっさに否定したが「あーー、でもちょっとだけ」と言って微笑んだ。
「やっぱりな、笑いたきゃ笑えよ。
それでも俺はお前に会えたから」
柔が照れたような嬉しいような、そんな感情の入り混じった顔をした。
そして、懐から先ほど購入した指輪を取り出した柔が、花色の左の薬指に嵌めた。もちろん自分自身にも。その互いの左手を、いわゆる『恋人繋ぎ』と呼ぶ指の絡ませ方をして、柔が真正面に下から花色を見上げた。
「好きだ、ハナ。
俺と夫婦になれ、一生大事にするから」
柔の、見たこともないほどの真剣な眼差しだった。
花色のパッチリとした大きな瞳から、ぽとり、ぽとりと大粒の涙が零れ落ちた。
「俺の女はほんと、泣き虫だな」
驚くほど柔らかく呟いて、柔が愛しげに右手で花色の涙を拭ってやりながら、左手の花色の指輪に口付けると、ますます花色の目から涙が溢れた。
「いまは泣くな、なんて言わねえよ。
俺はお前の嬉し泣きは、ずっと見てたいくらい好きなんだ」
とうとう嗚咽を洩らし始めた花色の涙を、柔が何時までも拭っていた。
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