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【セツ】の出番
しおりを挟む城下では、豊穣屋と塩屋の話題で持ちきりだった。
美男美女の世紀の結婚から一転、『男の色小姓を囲い、痴情の縺れで殺害未遂』町民は枝葉をつけて面白おかしく噂した。
紅はセツを呼び出して知っている情報を聞き出した。
夫殺しは重罪で、それが未遂であっても死罪は確定であった。
牢に入っている二人の姉妹は気が振れたのか、言動がすでに人ではなくなっていた。
姉妹の父である柳谷助蔵は気力を失ったのかすっかり老人になってしまい、二人の孫と共に乳母が面倒を見てみていた。
豊穣屋と塩屋は助蔵の二十歳年下の妻 お初が切り盛りしていた。
豊船屋の大旦那 木島勝豊は二人の息子を勘当した。
腹を刺された豊治は、臓物に傷がなく、出血も酷くはないため命に別状は無かった。
背中を幾度も切りつけられた勝三も、浅い傷が多かったため、痕は残るだろうがこちらも命に別状は無く、二人は勝豊の最後の温情により医院で手当てを受けていた。
日常生活が送れるようになるまで入院し、退院すれば『赤の他人』である。
セツは紅に知っている全てを伝えた。
「きはだと柑子の看病にみ空を借りるぞ。その間、お前に頼みたいことがある」
紅は熊谷城にいる茜と紫苑のことを簡略に伝えたうえで常田大勇の屋敷を探るようにと依頼した。
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