110 / 122
仮住まい
しおりを挟む「あの堅物の料理長が女を連れてきた」
よろず屋の男児達は天井が抜けるほどの大声を張り上げた。
萱草に手を惹かれたお峰が、紅の部屋へと入っていった。
「さて、今日からここがお前さんの仮住まいになる。
それには部屋が必要だが、一人が良いなら新たに部屋を用意させる。
萱草の部屋で良いなら布団を用意させるが、どうする?お峰」
「こ、紅さま。新しい部屋をお願いしますよ」
「お前に聞いてねえ、萱草。俺はお峰と話してんだ」
とたんに萱草が小さくなった。
「萱草さんと、一緒の部屋が良いです」
赤くなりながらお峰が、おっとりした口調で意思を伝えた。
「分かった。萱草も文句ねえだろ」
紅の采配は絶対であった。
「若葉、鶯、そんなとこで聞き耳立ててたんなら、萱草の部屋に布団を持ってってやれ」
ドタバタと騒々しい音の後、部屋は静けさを取り戻した。
「それと、俺がお前さんの身請け代を立て替えたのは知ってるな?
それはお前さんに返してもらうよ、耳、そろえてな」
「紅さま、それはこれから俺が何とか」
「黙れ、萱草。二度も言わせるな」
萱草が益々小さくなり、お峰は頷いた。
「新しい店が決まるまで、明日からお前さんはこのよろず屋の厨房と接客を手伝ってもらう。
料理人の女房になるなら、今から修行しとかねえとな。
お前さんがここで働いた分でチャラってことにしとく。
手当ては出ねえが上手い食事はこいつが作ってくれるし、休みの日はこいつに何でも買ってもらえ」
その言葉に萱草とお峰は二人で顔を見合わせて初々しく笑いあった。
0
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる