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ⅩⅤ
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いつものように、迅さんの部屋にお泊り。
でもそろそろ来そうな予感。
今日はまだ平気かな、とつい来てしまったけど。
「……迅さん、やっぱり今日は帰ります。まだ今なら電車動いてるし」
部屋に入って、気になる予感が実感に変わってく気がして、帰りたいと伝える。
「ヒートが近いだろう?」
迅さんに言われる。
俺は下を向く。
まだ間に合うから…… 帰らないと……
「そんな直樹を返すわけにはいかないだろ。嫌がることはしないから。直樹を一人にはできない」
こうなることを期待して、迅さんのとこに来たと思われてる。
違う、まだ平気だと思ってたのに。
それじゃ、迅さんが嫌いなオメガと一緒だ……
迅さんに嫌われるのは嫌だ……
「お、俺、まだヒートじゃないから。迅さんに迷惑かけたくないから」
大丈夫、まだヒートじゃない。
フェロモンも出てない。
「今なら電車乗って、帰れるよ、まだ大丈夫だから」
俺は玄関の方へ歩き出すと、迅さんに腕を掴まれる。
「俺はオメガが嫌いだが、直樹は好きだ」
迅さんにそのまま抱きしめられる。
「直樹以外のオメガが、嫌いなんだ」
迅さんは俺の頭をさする。
「こんなかわいいオメガを一人で返せるわけないだろ。一人に、させたくないんだよ」
涙が流れた。
こんなかわいくもない男男しい俺なのに。
かわいいなんて。
何言ってんだろう?
「お、俺はかわいくなんかないですよ」
迅さんを見上げて言うと、
「……だから、心配なんだよ。こんなにかわいいのに、全然わかってないから」
そう言って、静かに口付けた。
いつもはすぐに離れていくのに、ずっとくっついてて、唇が開いた瞬間に分厚い舌が入ってきて、
歯列をなぞって、舌を吸う。
唾液が口の端から垂れる。
唇が離れて、大きく息を吐く。
「直樹、一緒に暮らそう。もうお前を一人の家に返したくないから」
涙の流れた目尻を迅さんの指が拭う。
優しい迅さんの笑顔だ。
「俺も迅さんと一緒にいたい、です」
また迅さんが口付ける。何回も何回も。
「……もう、直樹がかわいすぎ」
シャワーを済ませて、ベッドに入る。
「今日は早く寝ろよ」
「……うん」
そうは言ったけど、体がつらくなってきている。
緊張してるから?
ドキドキしてるから?
……やっぱりきちゃいそう。
「……迅さん」
迅さんは理性を保った顔を崩れないようにしてる。
「……さすがに、これはキツいな。
いつもはなんとか耐えてたけど、
こんなフェロモンダダ漏れてる顔されちゃ我慢できないよ、直樹、わかってんのかよ」
迅さんは笑顔だ。
俺の頭を撫で、頬を撫で、背中に手を回す。
「……迅さん、好きです」
俺も腕を回す。
「ばか、反則」
自分のフェロモンがわかる。
迅さんのもわかる。あのハンカチより全然強い。
「……こんなフェロモン攻撃みたいなことしてごめんなさい、俺を嫌いにならないで……ください……」
「ならないよ、直樹だけ、だから」
そう言って、俺の顔を見る。
もう本当にヒートが起こる。
体がアルファを求めてるのがわかる。
でも、心は迅さんを求めていて、早く抱いてほしいんだ。
「……直樹、いつか、番になろう。今回は抱いていいか」
俺は頷く。
「……迅さんのオメガにしてください」
それからヒートが起こって、途中から意識がなくなった。
気がついたらなんと一週間経っていた。
迅さんは会社に連絡してくれてたし、ずっとそばにいてくれた。
体が動かなくて、一緒にお風呂に入った。
意識が戻ってるから、すごく気恥ずかしい。
今まで、もっとすごいことしてたし、意識があるときもしてたんだけど、ヒートの波が去ってしまい、もう恥ずかしいしかなくなる。
迅さんは俺の体を確かめるように、洗う。
あちこちに、キスマークとか噛み跡みたいなのが見えた。
「……直樹、ごめん」
迅さんが申し訳なさそう。
いいんだ、迅さんに抱かれたんだから。
想像してまた顔が赤くなる。
それから、後ろから抱きしめられる形で湯船につかる。
「……直樹、一緒に暮らそう」
耳元でそう呟かれて、体が一瞬ゾワってきた。
「……はい」
そう言うと、顎をとられてキスされた。
ヒート休暇が終わって、週末に俺は荷物を迅さんのマンションに運んだ。
これから、俺たちの生活が始まるんだ。
なんだか、すごく嬉しくて、自分はベータじゃなかったんだ、て思った。
本当に、かわいくはないけどね。
《第一部・完》
でもそろそろ来そうな予感。
今日はまだ平気かな、とつい来てしまったけど。
「……迅さん、やっぱり今日は帰ります。まだ今なら電車動いてるし」
部屋に入って、気になる予感が実感に変わってく気がして、帰りたいと伝える。
「ヒートが近いだろう?」
迅さんに言われる。
俺は下を向く。
まだ間に合うから…… 帰らないと……
「そんな直樹を返すわけにはいかないだろ。嫌がることはしないから。直樹を一人にはできない」
こうなることを期待して、迅さんのとこに来たと思われてる。
違う、まだ平気だと思ってたのに。
それじゃ、迅さんが嫌いなオメガと一緒だ……
迅さんに嫌われるのは嫌だ……
「お、俺、まだヒートじゃないから。迅さんに迷惑かけたくないから」
大丈夫、まだヒートじゃない。
フェロモンも出てない。
「今なら電車乗って、帰れるよ、まだ大丈夫だから」
俺は玄関の方へ歩き出すと、迅さんに腕を掴まれる。
「俺はオメガが嫌いだが、直樹は好きだ」
迅さんにそのまま抱きしめられる。
「直樹以外のオメガが、嫌いなんだ」
迅さんは俺の頭をさする。
「こんなかわいいオメガを一人で返せるわけないだろ。一人に、させたくないんだよ」
涙が流れた。
こんなかわいくもない男男しい俺なのに。
かわいいなんて。
何言ってんだろう?
「お、俺はかわいくなんかないですよ」
迅さんを見上げて言うと、
「……だから、心配なんだよ。こんなにかわいいのに、全然わかってないから」
そう言って、静かに口付けた。
いつもはすぐに離れていくのに、ずっとくっついてて、唇が開いた瞬間に分厚い舌が入ってきて、
歯列をなぞって、舌を吸う。
唾液が口の端から垂れる。
唇が離れて、大きく息を吐く。
「直樹、一緒に暮らそう。もうお前を一人の家に返したくないから」
涙の流れた目尻を迅さんの指が拭う。
優しい迅さんの笑顔だ。
「俺も迅さんと一緒にいたい、です」
また迅さんが口付ける。何回も何回も。
「……もう、直樹がかわいすぎ」
シャワーを済ませて、ベッドに入る。
「今日は早く寝ろよ」
「……うん」
そうは言ったけど、体がつらくなってきている。
緊張してるから?
ドキドキしてるから?
……やっぱりきちゃいそう。
「……迅さん」
迅さんは理性を保った顔を崩れないようにしてる。
「……さすがに、これはキツいな。
いつもはなんとか耐えてたけど、
こんなフェロモンダダ漏れてる顔されちゃ我慢できないよ、直樹、わかってんのかよ」
迅さんは笑顔だ。
俺の頭を撫で、頬を撫で、背中に手を回す。
「……迅さん、好きです」
俺も腕を回す。
「ばか、反則」
自分のフェロモンがわかる。
迅さんのもわかる。あのハンカチより全然強い。
「……こんなフェロモン攻撃みたいなことしてごめんなさい、俺を嫌いにならないで……ください……」
「ならないよ、直樹だけ、だから」
そう言って、俺の顔を見る。
もう本当にヒートが起こる。
体がアルファを求めてるのがわかる。
でも、心は迅さんを求めていて、早く抱いてほしいんだ。
「……直樹、いつか、番になろう。今回は抱いていいか」
俺は頷く。
「……迅さんのオメガにしてください」
それからヒートが起こって、途中から意識がなくなった。
気がついたらなんと一週間経っていた。
迅さんは会社に連絡してくれてたし、ずっとそばにいてくれた。
体が動かなくて、一緒にお風呂に入った。
意識が戻ってるから、すごく気恥ずかしい。
今まで、もっとすごいことしてたし、意識があるときもしてたんだけど、ヒートの波が去ってしまい、もう恥ずかしいしかなくなる。
迅さんは俺の体を確かめるように、洗う。
あちこちに、キスマークとか噛み跡みたいなのが見えた。
「……直樹、ごめん」
迅さんが申し訳なさそう。
いいんだ、迅さんに抱かれたんだから。
想像してまた顔が赤くなる。
それから、後ろから抱きしめられる形で湯船につかる。
「……直樹、一緒に暮らそう」
耳元でそう呟かれて、体が一瞬ゾワってきた。
「……はい」
そう言うと、顎をとられてキスされた。
ヒート休暇が終わって、週末に俺は荷物を迅さんのマンションに運んだ。
これから、俺たちの生活が始まるんだ。
なんだか、すごく嬉しくて、自分はベータじゃなかったんだ、て思った。
本当に、かわいくはないけどね。
《第一部・完》
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