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第三部
Ⅳ
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休日の朝。
スーツじゃないのに、緊張で胸がどきどきする。
迅さんの横を歩いているだけで、もう、なんかこう……
“ずっと隣を歩く人”なんだって実感が、じわじわ来て、顔が熱くて仕方ない。
式場に着くと、白と緑が綺麗なガーデンが広がっていた。
「わぁ……」
思わず声が漏れてしまう。
「気に入った?」
横から、穏やかな声。
いつもの低い声じゃなくて、少しだけ柔らかい。
「うん……すごく素敵……」
ほんとに素敵で、もう……涙腺が危ない。
プランナーさんが笑顔で出迎えてくれた。
「本日はおめでとうございます!
こちらのチャペルからご案内しますね♪」
明るくて、優しい人で、幸せオーラがすごい。
なのに俺は、もう胸いっぱいで、
チャペルの扉が開いた瞬間に一歩後ずさってしまった。
白い光。
バージンロード。
高い天井から降り注ぐ光。
……ここを、俺、歩くんだ。
迅さんのところへむかって。
喉の奥が熱くなる。
なんで?まだ何も始まってないのに。
プランナーさんが説明してる声が遠い。
なんとか聞こうと頷くけど、
自分でもわかるくらい挙動不審になってる。
横を見たら、迅さんは俺の様子に気づいてた。
指先がそっと、俺の手の甲をなでる。
「大丈夫。ゆっくりでいい」
はぁぁ……。
その一言で、涙腺が一気に緩む。
あ、もうだめ。泣く。
目元を袖でこすってると、
プランナーさんがティッシュを差し出してくれた。
「早い段階で泣かれる方、初めてじゃないですよ~♪」
「す、すみません……」
俺の声、小学生みたいだ。
もうすでに恥ずかしさで死にそう。
「直樹が素直だからだよ。いいこと」
横で、迅さんが優しい顔で笑う。
反則。
その声、ずるい。好き。
外に出ると潮風が心地いい。
緑の芝生と白いテント。花のアーチ。
「ここでパーティなんて……夢みたい」
「夢じゃないよ」
即答されて胸がぎゅっとなる。
(……あぁ、本当に。俺、結婚式するんだ)
プランナーさんが説明してる。
「こちらではケーキをお作りする演出なども……」
ケーキって言葉で、また泣きそうになった。
俺たちのケーキって何。結婚って何。幸せって何。
感情のキャパ、もうゼロだよ……。
式場の後は、指輪ショップ行った。
普段、立ち入ることのない店なので緊張する。
ガラスケースの中で光るリング達。
その前に並んだ俺と迅さんの指。
(似合うの、どれだろう)
「シンプルなのが……いいです。
一生、つけてたいから」
店員さんが優しく微笑む。
迅さんは俺の言葉を聞いて、少し目を細めた。
「俺も。
静かで、でもちゃんと見えるものがいい」
同じだった。
それだけで胸が熱くなる。
選んだ指輪はシンプルなプラチナリング。
同じデザインだけど、迅さんの方が少し重厚な感じ。
内側に刻印する文字を一緒に選ぶ。
「刻印……“永遠”とか……どうですか」
って俺が言うと、迅さんが
「じゃあ、“直樹の永遠は俺だ”って意味だな」
と返してくるから、俺は真っ赤になる。
お互いの指輪の刻印する言葉を選んだ。
「当日のお楽しみですからね!」
迅さんがどんな顔するのか、
俺はなんて言葉をもらうのか、
今から楽しみだった。
指輪を選んでる途中に店員さんが小さく笑って言った。
「よかったら……最後に指輪交換の練習、してみます?」
「……!」
やばい。もう今日は大丈夫だって思ってたのに。
涙が出そうになる。
迅さんが俺の手を取る。
指輪を通す仕草だけなのに、
胸がぎゅっと締め付けられる。
「直樹、手、震えてる」
「……だって」
言葉にならない。
涙が勝手にこぼれる。
「……幸せ、すぎる。怖いくらい……」
その瞬間、迅さんが握ってくれた。
強く、温かく、迷わない手で。
「怖くない。怖くても、一緒にいればいい」
その声に、
胸がいっぱいで、ただ頷いた。
式場や指輪のパンフレットを抱えて帰る途中、
俺はこっそり横顔を見る。
風で揺れる前髪。
街灯の光を受けるまつげ。
手を繋いだままの指。
(……こんな人と結婚できるなんて)
ふと、迅さんが言った。
「泣き虫な花嫁で、困ったな」
「は……?!花嫁じゃないもん!」
「じゃあ“俺の人”」
耳が真っ赤になった。
でも、胸の奥が満たされていく。
「これから、よろしくな」
「うん……俺こそ。よろしくお願いします」
幸せって、ちゃんと触れるんだ。
ちゃんと、手で掴めるんだ。
俺は、もっと強くなりたい。
迅さんの隣で、胸張って立てるように。
でも今は――
手を繋いで歩けるだけで十分だ。
だって、
これはもう“始まり”なんだから。
スーツじゃないのに、緊張で胸がどきどきする。
迅さんの横を歩いているだけで、もう、なんかこう……
“ずっと隣を歩く人”なんだって実感が、じわじわ来て、顔が熱くて仕方ない。
式場に着くと、白と緑が綺麗なガーデンが広がっていた。
「わぁ……」
思わず声が漏れてしまう。
「気に入った?」
横から、穏やかな声。
いつもの低い声じゃなくて、少しだけ柔らかい。
「うん……すごく素敵……」
ほんとに素敵で、もう……涙腺が危ない。
プランナーさんが笑顔で出迎えてくれた。
「本日はおめでとうございます!
こちらのチャペルからご案内しますね♪」
明るくて、優しい人で、幸せオーラがすごい。
なのに俺は、もう胸いっぱいで、
チャペルの扉が開いた瞬間に一歩後ずさってしまった。
白い光。
バージンロード。
高い天井から降り注ぐ光。
……ここを、俺、歩くんだ。
迅さんのところへむかって。
喉の奥が熱くなる。
なんで?まだ何も始まってないのに。
プランナーさんが説明してる声が遠い。
なんとか聞こうと頷くけど、
自分でもわかるくらい挙動不審になってる。
横を見たら、迅さんは俺の様子に気づいてた。
指先がそっと、俺の手の甲をなでる。
「大丈夫。ゆっくりでいい」
はぁぁ……。
その一言で、涙腺が一気に緩む。
あ、もうだめ。泣く。
目元を袖でこすってると、
プランナーさんがティッシュを差し出してくれた。
「早い段階で泣かれる方、初めてじゃないですよ~♪」
「す、すみません……」
俺の声、小学生みたいだ。
もうすでに恥ずかしさで死にそう。
「直樹が素直だからだよ。いいこと」
横で、迅さんが優しい顔で笑う。
反則。
その声、ずるい。好き。
外に出ると潮風が心地いい。
緑の芝生と白いテント。花のアーチ。
「ここでパーティなんて……夢みたい」
「夢じゃないよ」
即答されて胸がぎゅっとなる。
(……あぁ、本当に。俺、結婚式するんだ)
プランナーさんが説明してる。
「こちらではケーキをお作りする演出なども……」
ケーキって言葉で、また泣きそうになった。
俺たちのケーキって何。結婚って何。幸せって何。
感情のキャパ、もうゼロだよ……。
式場の後は、指輪ショップ行った。
普段、立ち入ることのない店なので緊張する。
ガラスケースの中で光るリング達。
その前に並んだ俺と迅さんの指。
(似合うの、どれだろう)
「シンプルなのが……いいです。
一生、つけてたいから」
店員さんが優しく微笑む。
迅さんは俺の言葉を聞いて、少し目を細めた。
「俺も。
静かで、でもちゃんと見えるものがいい」
同じだった。
それだけで胸が熱くなる。
選んだ指輪はシンプルなプラチナリング。
同じデザインだけど、迅さんの方が少し重厚な感じ。
内側に刻印する文字を一緒に選ぶ。
「刻印……“永遠”とか……どうですか」
って俺が言うと、迅さんが
「じゃあ、“直樹の永遠は俺だ”って意味だな」
と返してくるから、俺は真っ赤になる。
お互いの指輪の刻印する言葉を選んだ。
「当日のお楽しみですからね!」
迅さんがどんな顔するのか、
俺はなんて言葉をもらうのか、
今から楽しみだった。
指輪を選んでる途中に店員さんが小さく笑って言った。
「よかったら……最後に指輪交換の練習、してみます?」
「……!」
やばい。もう今日は大丈夫だって思ってたのに。
涙が出そうになる。
迅さんが俺の手を取る。
指輪を通す仕草だけなのに、
胸がぎゅっと締め付けられる。
「直樹、手、震えてる」
「……だって」
言葉にならない。
涙が勝手にこぼれる。
「……幸せ、すぎる。怖いくらい……」
その瞬間、迅さんが握ってくれた。
強く、温かく、迷わない手で。
「怖くない。怖くても、一緒にいればいい」
その声に、
胸がいっぱいで、ただ頷いた。
式場や指輪のパンフレットを抱えて帰る途中、
俺はこっそり横顔を見る。
風で揺れる前髪。
街灯の光を受けるまつげ。
手を繋いだままの指。
(……こんな人と結婚できるなんて)
ふと、迅さんが言った。
「泣き虫な花嫁で、困ったな」
「は……?!花嫁じゃないもん!」
「じゃあ“俺の人”」
耳が真っ赤になった。
でも、胸の奥が満たされていく。
「これから、よろしくな」
「うん……俺こそ。よろしくお願いします」
幸せって、ちゃんと触れるんだ。
ちゃんと、手で掴めるんだ。
俺は、もっと強くなりたい。
迅さんの隣で、胸張って立てるように。
でも今は――
手を繋いで歩けるだけで十分だ。
だって、
これはもう“始まり”なんだから。
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