魔王さまに抱かれるもふもふツンデレオオカミの僕

蒼井梨音

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7.まほう……?

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昼食を終えると、ゼファールは、魔王城付きの医師であり魔力や魔術の専門家である魔導師の所にリュカを連れていった。
部屋に入ると、リュカはちょっと緊張気味で、背筋を伸ばして胸を張っていた。

リュカは耳をピンと立てて、
「ぼ、僕は平気だ。わざわざ診てもらわなくても──」
と言い終わる前に、
魔導師は手を差し出し、リュカの魔力の流れを探るために軽く触れようとした。

その瞬間、リュカの耳がぴくっと震え、
「さ、触んなよ! 急に……!」

ふいに、リュカの体の周りに淡い光がふっと漏れる。
魔力がにわかに逆流するように、リュカの尻尾がぶわっと膨らむ。
部屋の魔導具がカタッと小さく振動した。

魔導師がリュカの方を見る。
「おっと、魔力が不安定になっておるぞ」

リュカは自分で抑えようとする。
「だ、大丈夫だって! こんなの……っ!」
しかし、抑えきれず、光がパンッと小さく弾け、ゼファールの袖がふわっと揺れる程度の微風が起きる。

リュカはしゅんとなって、耳がへにょんと垂れている。
「……ごめん」

強がっていた分、しょんぼり度が強い。
尻尾もだらんとしている。

ゼファールがすっとそばに寄る。
落ち着いた声でリュカに諭すように肩に手を置く。
「無理しなくていい。
初めて魔力が芽生えたばかりなんだ、みんなこうなる。恥じることじゃない」

優しくリュカの手を包むと、リュカは耐えきれず、尻尾がふり…ふり…と勝手に動いてしまう。

「……べ、別に嬉しいとかじゃ……」
リュカは言いながら真っ赤になって、ふりふりする尻尾も止まらない。

魔導師が微笑みながら記録を取っている。
「魔王陛下と長く過ごすうちに、魔力の器が開いたのでしょう。今は不安定ゆえ、ちょっとした感情や身体反応で暴走するようです。
しばらく訓練は必要ですな──」

ゼファールを見ながら、魔導師は表情をやわらげる。
「陛下、彼には“安定化のための接触”が有効でしょう」

ゼファールが少し照れながら、
「つまり……こうしていればいい、ということか?」
とリュカの耳の付け根を軽く撫でる。
すると、リュカの魔力がすぅっと鎮まる。
リュカは照れくさそうに、
「~~~っ!や、やめろって……っ」
て言うけど、尻尾だけは正直にふりふり。

魔導師がと頷く。
「ふむ、安定してきた安定してきた」

リュカは恥ずかしがりながらも、ゼファールの袖をそっとつまんで離さなかった。

魔導師は診断結果をまとめてゼファールに説明した。

「リュカ様はの魔力は覚醒中であります。
ゼファール様の魔力に影響されて色が変わりつつあります。
そして、感情が強いと暴走の恐れありがあります。
また、最低でも週1で魔力安定の診察を受けてください。
それから、魔法基礎教育を始めることを推奨いたします」

リュカはしゅんとしながらゼファールを見上げる。

「……僕、だめなの……?」

ゼファールはため息をひとつついて、額に手をあてる。

「ダメなんかじゃない。
……むしろ、お前が魔法を使えるようになるのは悪くない」
そして目を細めて続ける。
「俺と同じ速度で歩けるようになるからな」

リュカの尻尾がふりっと揺れた。


それから二人は魔導師棟の一室に向かった。
扉を開けると、豪快な笑い声が中から聞こえる。

「──でさぁ!そしたら爆発したんだよ、部屋が!ハハハ!」

ゼファールが咳払いすると、水晶球にむかって話していた男が振り向いた。

「お、陛下!珍しいですね、ここまで来るなんて!どうしたんですか?」

ゼファールはリュカの肩に手を置き、軽く前に押し出す。
「明日からの魔力訓練を頼みたい。この子に……リュカだ。
リュカ、こいつはアルドだ。魔法のことを教えてくれる」

アルドの目が輝いた。
「へぇ~~、君が噂の“ちっこくてかわいい狼さん”か!
うわ耳動いた!かわっ!」

リュカがむっとする。
「ちっこくないし!かわいくも……!」

アルドはぜんぜん気にしない。
「はいはい、強がりさんね。俺ね、そういうの好きだよ~。
よっしゃ、任せといてください。明日からバッチリ鍛えてやるよ!」

ゼファールが釘を刺すように言う。
「手加減はしろ。暴走しやすい」

アルドは軽い敬礼をしつつ、
「了解了解。大丈夫、俺そういうの慣れてるんで。
暴走したら……抱きしめて止めればいいんでしょ?」

リュカがポッと耳を赤くする。
ゼファールは氷のような目をしている。
「抱きしめる必要はない」

アルドは慌てて手を振る。
「じょ、冗談冗談!いやー怖いわ陛下は!
でも安心して。ほんとに大丈夫だから」

軽い、だがそのあと手をかざすと、部屋の空気が一瞬で静まり返る。
魔力の流れがすっと整えられ、リュカも思わず息を呑む。

アルドがニヤリと笑っている。
「俺、本気出すとこんな感じ。ね? 信用していいよ」

ゼファールもわずかに頷く。
「……腕は確かだ。そしてお前ならリュカも扱いやすいだろう」

リュカは、軽くて気さくで、でも強いこの人物を見上げ、
「……よろしく、なのかな」

アルドもニコッて笑って、
「うん、よろしく!
明日から、楽しく地獄みたいな訓練しようぜ!」

えっ!
リュカはびっくり。
「な、なんか最後だけ怖い!!」


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