魔王さまに抱かれるもふもふツンデレオオカミの僕

蒼井梨音

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8.おべんきょうのせんせい

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それから、またリュカはゼファールと歩き出した。
静かな廊下を歩きながら、リュカはずっときょろきょろしている。
耳もぴくぴく動いている。
今度はどこに行くのかな、リュカは心配だった。

「落ち着け。さっきのアルドほど騒がしい者はいない」

「べ、別に落ち着いてるし」

しっぽだけがぶわぶわ揺れてるのて、ゼファールにはバレバレ。


執務室に行くと、従者が重厚な扉が開けてくれる。
中ではカリオンが山積みの書類を静かに整理していた。
銀縁の眼鏡の奥の瞳が冷静に輝いている。

「陛下、今日は休息日のはずでは?
……ああ、仕事をサボった分ですか?進んでおりますよ」
カリオンは書類をぱらりとめくりながら淡々と言う。

ゼファールは嫌味を受け流して、
「それは助かる」
と返し、リュカの頭に手を置きながら、
「……ところで、カリオンに、頼みがある。
リュカに勉強を教えてやってくれるか。
まずは文字から……」

リュカがおそるおそる、カリオンの方を見る。
「あ、あの……」

カリオンはゆっくりと膝を折り、リュカと目線を合わせる。
決して圧をかけず、ふわりとした声で話し始める。
「初めまして、リュカ殿。私はカリオンと申します。
陛下から、あなたの学びを手伝うようにと言付かりました」

名前を呼ばれて、耳がぴょこんと立ち上がる。
「お、おれ、……あんまり……」

「ええ。初めては誰も一緒ですよ。
焦らず、少しずつ歩んでいきましょう」
カリオンの穏やかさに、リュカのしっぽがもふっ…と揺れる。

ゼファールはカリオンに、
「こいつは口では強がるが、実際は手取り足取りが必要だ。頼む」
「……承知しました。
陛下が信頼を寄せる方ならば、私にも大切な生徒です」
リュカは恥ずかしくなり、
「だ、誰も手取り足取りしろなんて……!」
と言いながらも、ゼファールの袖をそっと掴んでいた。



◆メイド長 & 執事長の部屋へ
それから向かった先は、廊下の突き当たり、重厚な扉の向こう。
そこは、生活部門を取り仕切る“要”の場所。

ゼファールが入ると、すぐにメイド長の柔らかい声が響いた。

メイド長は、上品なお姉さんといった感じで、この魔王城のメイドを仕切っている。
「まあ、陛下。今日はお休みのはずでは?
……あら、小さなお客様ですね」

それから、静かな老紳士といった感じの執事長は深々と礼をする。
「ご機嫌麗しゅう、陛下。そちらのお方は?」

ゼファールは自然な流れでリュカを前へ出す。
「私の客人、リュカだ。しばらく城で暮らす。
その間、生活の所作や必要なマナーを教えてやってほしい」

メイド長は一瞬驚いたようだか、すぐににっこりとして、
「まあ……!なんと可愛らしい耳と尾……
いえ、失礼いたしました。お任せくださいませ。
最低限の生活ルールからゆっくりとご指導いたしますわ」

執事長も笑顔で、
「無理のない範囲で進めましょう。
陛下の大切な方とあれば、我々も全力を尽くします」

リュカはなんだか、面白くなくて、むっとしてしまう。
「お、大げさな……俺、そんな……」

メイド長は、優しく微笑んでリュカに話す。
「大げさではありませんよ。
あなたを守るためにも、知っておくと良いことばかりです」

リュカは言い返せず、耳がへにょんとなってしまう。

ゼファールが、二人に、「……頼んだ」と言うと、
「かしこまりました」
二人は静かに頭を下げた。

リュカの手を軽く引いて、ゼファールは部屋を出た。

リュカは、小声で
「……なんか、俺、すごいことになってない……?」

すると、ゼファールは嬉しそうに、
「悪いことではない。
お前をちゃんと守れるように、必要なことを整えているだけだよ」

「……そ、そっか」
よくわかんないけど、リュカもどこか嬉しくなって、しっぽがふりふりしていた。


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