魔王さまに抱かれるもふもふツンデレオオカミの僕

蒼井梨音

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22.リュカ

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魔王城の食堂。
ルーシアとミレーニアが来たので、いつもはゼファールとリュカの二人だけの晩餐は、賑やかになった。
長いテーブルの上に料理が並び、
ゼファールの隣には当然のようにルーシアが、向かい側にミレーニアが座った。
リュカはミレーニアの隣に座った。

「ルーシア、ミレーニア。で、今回の用件は何だ?」
皆が席につくなり、ゼファールが口を開いた。

「お兄さまに会いたくて、わざわざ来たんですよ。
飛竜たちも運動不足だったし」
ミレーニアはニコニコしている。

ゼファールがルーシアの方に視線を向けると、
「父上の即位三十周年の記念式典が三ヶ月後にあります。その招待状をお待ちしました」
ルーシアがジャケットの内ポケットから封書を差し出す。

「ほお。わざわざこれしきのことに、お前たちは仕事をサボってきたのか」
ゼファールが呆れたように話しているが、顔は笑っていた。

「んー、そのオオカミくんも来るのかな、と思って見に来たの」

リュカは自分には関係ないとばかりに、黙々と食事を進めていたのに、急に自分に視線が集まり手が止まる。

「まぁ、マナーは悪くないですけど」
ルーシアが値踏みするように、リュカを見ている。

ゼファールがルーシアを制するように、
「そんなに、リュカをいじめるな」
ゼファールが苦い顔をする。

——リュカの耳がしゅん、と倒れる。

ゼファと今日は話しもできないのに。
きょうだい、という特別な関係に、リュカは一人疎外感でいっぱいだ。

「……リュカはがんばってる。そのうち、わかる」
ゼファールは二人にそう言うと、皆、食事をすすめた。

「そういえば、叔父さまは元気にしてるのかしら。全然見かけないんだけど……」
ミレーニアの言葉にルーシアも、
「相変わらず、兄上はこき使ってるんじゃないですか」

また知らない人の話か、とリュカは思った。

「オルフェンのことか?
宰相は相変わらず仕事の虫だからな。俺が止めても聞かない」
ゼファールは苦笑い。

「もう叔父さま、若くないんだから労ってあげてください」
ミレーニアがゼファールに文句言うみたいに言って、静かに笑った。

リュカは黙々と食べた。
手元しか見ていない。
スプーンを握る手がぎこちなく震える。

でも何も言わない。

(……ゼファ、ぼくのほう見てくれない)

食べ終わると同時に椅子を引き、
「ごちそうさま」だけ言って立ち上がった。


「最初はスプーンもフォークも持ったことなかったが、いつのまにか上手に食べるようになったな……」
ゼファールがぼそっと呟く。

えっ、その声をルーシアは聞いて、
(スプーンすら扱えなかったのに……?
兄上のそばにいたくて、覚えたということ……?)
ルーシアの意識が、ほんのわずか動いた。




カリオンは静かに説明した。
「リュカ殿は毎日まじめに勉強しておられますよ」
「文字も最初は読めませんでしたが、最近はとても熱心で」

「魔術の基礎も頑張ってるよ」とアルド。
ルーシアもミレーニアも驚いた。

(兄上の周りの者が、どれだけ苦労しても兄上の気を引けないのに……
この子は“努力している”……?)


リュカ本人は今日も真剣に魔法陣の上で魔力制御に取り組んでいた。
汗いっぱいで、必死で。

でもゼファールがやって来ると——

リュカは、くるっと踵を返して逃げた。

「リュカ、どこへ行く」
ゼファールの声が聞こえたが、リュカは去っていく。

「ちょっと用があるから」

ゼファールがルーシアとミレーニアといると、
必ずリュカはどこかへ行ってしまう。


ゼファールとリュカが普通に話しているときでも——
ゼファールの近くにルーシアやミレーニアが現れると、

リュカはピタッと話すのをやめて
「じゃあ!!」
と、どこかへ消えてしまう。

ルーシアはぽつりと言った。
「……あれは……私を避けている?」

ゼファールは「そうか?」

「……兄上。私は、彼に、その……嫌われてしまったようです」
少し寂しそうな表情。

ゼファは困ったように目を細めるだけで、
何も気づいていない。

しかしルーシアは確信した。

(あの子……私やミレがいると、兄上と話せなくなるほど嫌なのだ)

そして同時に気づき始めた。

(いや……嫌というより……
兄上が私たちと一緒にいるのがつらいのか……?)

少しずつ、少しずつ、
ルーシアの中でリュカへの見方が変わり始めていた。


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