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21.王子と魔王さま
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リュカは行く当てをなくして、カリオンのいる魔王の執務室に戻ってきた。
「お二人とは会えましたか」
カリオンが書類から視線を動かさずにリュカにたずねた。
「……ゼファと一緒にアルドのとこに来た」
「そうですか」
カリオンがリュカが少し寂しそうにしていることに気づいて、お茶をいれると話し始めた。
「ゼファール様はこの国、ナハルグラド王国の第二王子なんです」
王子?
ゼファが?
リュカが驚いていると、カリオンは続けた。
「ナハルグラドには王妃陛下がいらして、ゼファ様の母上はフィーナ様といって、第一側妃でした」
国王陛下と王妃陛下は政略結婚だったが、フィーナ様は違った。
地方視察中に、たまたま暴れている魔獣を魔力で落ちつかせていたフィーナを見かけた国王陛下がその人柄と魔力の美しさに惹かれて、側室に迎えた。
フィーナの魔力は強かったが、生まれたゼファールも生まれながらに強い魔力を持っていた。
そのため身体の成長と魔力の成長の均衡が崩れた。
7才になったゼファールの魔力が暴走を起こした。
そのとき、フィーナは身を挺してゼファールを守り、命を落とした。
ゼファールは母親を自分のせいで失うという心に大きな傷を負ったし、王宮の中で母親をなくしたゼファールや弟妹たちは、かなり苦労をした。
三人はそれぞれの力を合わせて、王宮内で生きる術を身につけていった。
「……なので、ゼファ様とルーシア様とミレーニア様は、とても仲がいいのです」
カリオンは長い間話すと、お茶を飲んだ。
「……でもなんで、ゼファだけ、魔王城にいるの?」
「それは、……ゼファ様が12才の冬に王城内で起きた魔獣襲撃事件……」
王城の深部、王族区画に魔獣が乱入し、第一王子であるイグナーツ殿下が襲われた。
偶然その場にいたゼファールが、単独で魔獣を倒した。
魔力の奔流が場内に響き渡って、ゼファールの「王子としての資質」を多くの貴族たちが目撃してしまった。
ゼファールの力が強すぎたため、王妃にとっても第一王子にとっても、ゼファールは危険な存在。
魔獣襲撃も王妃から、ゼファールの魔力に呼び寄せられたものとされてしまったため、ゼファールは危険な存在とされてしまう。
国王陛下はゼファールを守りたかった。
苦肉の策で、この辺境の地であるグレイヴモーラにゼファールを派遣するという形におさまった。
今でこそ平和なこの地も13才のゼファールが来たときは、瘴気で空が曇り、魔物が支配し、住める場所など一つもない場所だった。
でもゼファールは、生きた。
魔物と戦い、瘴気を浄化し、大樹海を鎮魂、魔物たちの怒りを鎮めて森そのものと調和を結んだ。
ゼファールが浄化した森に、魔族や獣人、人族など少しずつ人が集まった。
そして、ゼファールに「この土地を守ってほしい」と跪く。
彼らが「魔王」と呼ぶようになり、彼らがこの魔王城を建てた。
「……ゼファ、自分で魔王に成り上がったんだ」
「……だから、ルーシア様もミレーニア様もこうして、時々、会いに来るんです」
「お二人とは会えましたか」
カリオンが書類から視線を動かさずにリュカにたずねた。
「……ゼファと一緒にアルドのとこに来た」
「そうですか」
カリオンがリュカが少し寂しそうにしていることに気づいて、お茶をいれると話し始めた。
「ゼファール様はこの国、ナハルグラド王国の第二王子なんです」
王子?
ゼファが?
リュカが驚いていると、カリオンは続けた。
「ナハルグラドには王妃陛下がいらして、ゼファ様の母上はフィーナ様といって、第一側妃でした」
国王陛下と王妃陛下は政略結婚だったが、フィーナ様は違った。
地方視察中に、たまたま暴れている魔獣を魔力で落ちつかせていたフィーナを見かけた国王陛下がその人柄と魔力の美しさに惹かれて、側室に迎えた。
フィーナの魔力は強かったが、生まれたゼファールも生まれながらに強い魔力を持っていた。
そのため身体の成長と魔力の成長の均衡が崩れた。
7才になったゼファールの魔力が暴走を起こした。
そのとき、フィーナは身を挺してゼファールを守り、命を落とした。
ゼファールは母親を自分のせいで失うという心に大きな傷を負ったし、王宮の中で母親をなくしたゼファールや弟妹たちは、かなり苦労をした。
三人はそれぞれの力を合わせて、王宮内で生きる術を身につけていった。
「……なので、ゼファ様とルーシア様とミレーニア様は、とても仲がいいのです」
カリオンは長い間話すと、お茶を飲んだ。
「……でもなんで、ゼファだけ、魔王城にいるの?」
「それは、……ゼファ様が12才の冬に王城内で起きた魔獣襲撃事件……」
王城の深部、王族区画に魔獣が乱入し、第一王子であるイグナーツ殿下が襲われた。
偶然その場にいたゼファールが、単独で魔獣を倒した。
魔力の奔流が場内に響き渡って、ゼファールの「王子としての資質」を多くの貴族たちが目撃してしまった。
ゼファールの力が強すぎたため、王妃にとっても第一王子にとっても、ゼファールは危険な存在。
魔獣襲撃も王妃から、ゼファールの魔力に呼び寄せられたものとされてしまったため、ゼファールは危険な存在とされてしまう。
国王陛下はゼファールを守りたかった。
苦肉の策で、この辺境の地であるグレイヴモーラにゼファールを派遣するという形におさまった。
今でこそ平和なこの地も13才のゼファールが来たときは、瘴気で空が曇り、魔物が支配し、住める場所など一つもない場所だった。
でもゼファールは、生きた。
魔物と戦い、瘴気を浄化し、大樹海を鎮魂、魔物たちの怒りを鎮めて森そのものと調和を結んだ。
ゼファールが浄化した森に、魔族や獣人、人族など少しずつ人が集まった。
そして、ゼファールに「この土地を守ってほしい」と跪く。
彼らが「魔王」と呼ぶようになり、彼らがこの魔王城を建てた。
「……ゼファ、自分で魔王に成り上がったんだ」
「……だから、ルーシア様もミレーニア様もこうして、時々、会いに来るんです」
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