魔王さまに抱かれるもふもふツンデレオオカミの僕

蒼井梨音

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33.ゼファのやきもち

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リュカが剣を振り下ろすたび、青灰色の髪が陽光を弾いた。
対するガイルは、背が高く、ブラウンの瞳を笑わせながら軽く受け流す。

「そうだ、リュカ。力で押すんじゃなくて、重心を前に流すんだ」

「うん! これくらい?」

ガキン、と音が響く。
リュカの一撃に、ガイルの眉がわずかに上がった。

「……やるじゃん。身体能力と勘だけでここまで来るとはな」

褒められて、リュカは尻尾がパタパタ振りながら笑顔を見せる。

その光景を、少し離れた場所からゼファールが見ていた。
ゼファールの表情は一見冷静だが――少し面白くなさそうな顔をしている。
(……二人とも、楽しそうだな)

リュカは、昼はガイルと、夜は自分と剣術をする――そう決めたはずなのに
魔物退治や執務が続いて、夕方のリュカと一緒に練習するっていうのが、なかなか叶わない。

今日もまた、夕刻の鐘が鳴り、ゼファールは剣を握りながら思う。
(リュカは、今日もガイルと練習するのかな……)

そこへ、リュカが駆けてくる。
楽しそうな顔をしている。

「ゼファ、今日ね、ガイルが大会出ないかって言ってくれたんだ。
だから、もう少しガイルと練習してくるね!」
ぱっと笑い、軽い足取りで戻っていくリュカ。

残されたゼファールは、胸がつきりと痛んだ。

(……そんなに、ガイルと仲がいいのか)

嫌だ、という言葉が喉まで出かかったが、言えなかった。
リュカの無邪気さを曇らせたくなかったからだ。
ただ、心の奥がざわざわする。

ゼファールは寂しさを隠さず、仕事の残る執務室へと戻っていった。

……ガイルはそんなゼファールの気配に気づいて、苦笑した。


訓練が終わり、ガイルが水筒の水を飲みつつゼファールに近づく。

「お前、顔に出すぎ。誰でも分かるぞ?」

「……出てない」

「出てる。めっちゃ出てる。
ていうか、嫉妬しすぎじゃねぇ? お前がいると、稽古場の殺気がひどいんだよ」

ゼファールは睨むように視線を落とす。

「……俺は、リュカの成長のために、だな」

「はいはい。で、本音は?
お前はリュカをどうしたいんだ?」

ガイルのブラウンの瞳は、昔からゼファールの嘘を許してくれない。

しばらく沈黙したのち――ゼファールは低く、短く答えた。

「……リュカをどうしたいか、だと?」

「そう。正直に言えよ。
あの子がお前のことで悩んでんの、気づいてんの?」

ゼファールは少しだけ目を伏せる。
そして、ぽつりと言った。

「――俺の、横に立つ存在になってほしい」

ガイルの瞳が一瞬だけ柔らかくなる。
「……そっか」

ゼファールは続ける。
「強くて、賢くて、自分の意思で俺の隣に立てるやつに。
戦うときも、進むときも、同じ方向を見られる存在に……
そして……ずっと、生きていく道を一緒に歩みたい」

その声は、誰に聞かせるでもない本心だった。

ガイルは腕を組んでうなずく。
「じゃあ、もっと言ってやれよ。
なに考えてるのか言わないと、すれ違ってくだけだろ」

「……分かってる」

ゼファールは小さく息を吐いた。
(リュカに嫌われたくはない。でも、もう隠しておける気持ちでもない)



そんなゼファールの胸中を知る由もなく、
リュカは少し離れた木陰で、水を飲みながら二人を見ていた。
(……ゼファール、怒ってるのかな。
 ぼく、ガイルとばっかり練習してるからなぁ……)
胸の奥が、不安できゅっと縮まる。


すれ違う気持ちが、お互いに届かずに揺れていた。

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