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50.「ありがと。」
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森を抜け、城へ戻るまで、リュカもゼファールもほとんど言葉を交わさなかった。
足音だけが並んでいる。
それで十分だと言い聞かせるように、リュカは前を向いて歩いた。
魔王城の門が見えた瞬間、気配が弾ける。
「リュカ!」
「無事だったか!」
「単独討伐だってな!」
騎士団の面々が駆け寄ってくる。
口々に称賛の声が飛ぶ。
「すげぇじゃねぇか」
「もう立派な戦力だな」
リュカは、少しだけ口角を上げた。
「あ、ああ。まぁな」
いつも通りの返事をして、軽く手を振り、笑ってみせる。
――でも、胸の奥は重かった。
(……俺一人じゃなかった)
あの一瞬。
ゼファールがいなければ、勝てたかどうか。
それを思うと、誇らしさが静かに沈んでいった。
「……顔に出てるぞ」
低い声がした。
振り向くと、ガイが腕を組んで立っていた。
騎士団長で、リュカの剣術の師匠。
「何がだよ」
「ゼファの手、入ってたんだよな」
ガイは即答する。
リュカは、言葉に詰まる。
「……なんでわかった?」
「わかるさ。お前、勝った顔してねぇし」
ガイは肩をすくめる。
「それに、あいつがお前が一人で行くの黙って見てるわけねぇだろ」
リュカは唇を噛んだ。
「……俺は、一人でやりたかった」
「ああ、知ってる」
ガイはあっさりと頷く。
「でもな、ゼファはただ守りたいだけだ。
お前はそれが嫌なんだろ?」
図星だった。
「だから、あいつだって、どうしていいかわかんねぇんだよ。
……本当、見ててイライラするぜ」
「なんだよ、イライラって……」
ぼそっと返すと、ガイは笑った。
「お前ら二人ともだ」
――それ以上は言わなかった。
夜。
部屋に戻っても、リュカは眠れる気がしなかった。
しばらく天井を見つめてから、静かに立ち上がった。
向かう先は、決まっている。
ゼファールの部屋の前で、足が止まった。
少し迷ってから、ノックをする。
「……なぁ、入っていいか」
一拍おいて、返事が聞こえた。
「ああ」
と短い返事。
リュカ扉を開け、中に入った。
ゼファールは机のそばに立っていた。
二人の間に、長い沈黙が落ちる。
お互い、何を言えばいいのか、わからない。
言葉にすれば、何かが壊れそうで。
――それでも。
「……ありがと」
リュカは、やっと、それだけ言えた。
声は小さくて、視線も上げられない。
尻尾が、ぼわっと膨らんで、落ち着かなく揺れる。
ゼファールが、ゆっくりと歩み寄ってくる気配がした。
次の瞬間、リュカの胸に温かさがぶつかった。
強くない。
でも、逃がさない抱擁。
「ああ」
低い声が、頭上で響いた。
リュカは、抵抗しなかった。
腕の中で、尻尾がまた、ぼわっと揺れる。
――ああ。
言葉は要らなかった。
この夜は、まだ終わらなくていい。
足音だけが並んでいる。
それで十分だと言い聞かせるように、リュカは前を向いて歩いた。
魔王城の門が見えた瞬間、気配が弾ける。
「リュカ!」
「無事だったか!」
「単独討伐だってな!」
騎士団の面々が駆け寄ってくる。
口々に称賛の声が飛ぶ。
「すげぇじゃねぇか」
「もう立派な戦力だな」
リュカは、少しだけ口角を上げた。
「あ、ああ。まぁな」
いつも通りの返事をして、軽く手を振り、笑ってみせる。
――でも、胸の奥は重かった。
(……俺一人じゃなかった)
あの一瞬。
ゼファールがいなければ、勝てたかどうか。
それを思うと、誇らしさが静かに沈んでいった。
「……顔に出てるぞ」
低い声がした。
振り向くと、ガイが腕を組んで立っていた。
騎士団長で、リュカの剣術の師匠。
「何がだよ」
「ゼファの手、入ってたんだよな」
ガイは即答する。
リュカは、言葉に詰まる。
「……なんでわかった?」
「わかるさ。お前、勝った顔してねぇし」
ガイは肩をすくめる。
「それに、あいつがお前が一人で行くの黙って見てるわけねぇだろ」
リュカは唇を噛んだ。
「……俺は、一人でやりたかった」
「ああ、知ってる」
ガイはあっさりと頷く。
「でもな、ゼファはただ守りたいだけだ。
お前はそれが嫌なんだろ?」
図星だった。
「だから、あいつだって、どうしていいかわかんねぇんだよ。
……本当、見ててイライラするぜ」
「なんだよ、イライラって……」
ぼそっと返すと、ガイは笑った。
「お前ら二人ともだ」
――それ以上は言わなかった。
夜。
部屋に戻っても、リュカは眠れる気がしなかった。
しばらく天井を見つめてから、静かに立ち上がった。
向かう先は、決まっている。
ゼファールの部屋の前で、足が止まった。
少し迷ってから、ノックをする。
「……なぁ、入っていいか」
一拍おいて、返事が聞こえた。
「ああ」
と短い返事。
リュカ扉を開け、中に入った。
ゼファールは机のそばに立っていた。
二人の間に、長い沈黙が落ちる。
お互い、何を言えばいいのか、わからない。
言葉にすれば、何かが壊れそうで。
――それでも。
「……ありがと」
リュカは、やっと、それだけ言えた。
声は小さくて、視線も上げられない。
尻尾が、ぼわっと膨らんで、落ち着かなく揺れる。
ゼファールが、ゆっくりと歩み寄ってくる気配がした。
次の瞬間、リュカの胸に温かさがぶつかった。
強くない。
でも、逃がさない抱擁。
「ああ」
低い声が、頭上で響いた。
リュカは、抵抗しなかった。
腕の中で、尻尾がまた、ぼわっと揺れる。
――ああ。
言葉は要らなかった。
この夜は、まだ終わらなくていい。
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