世紀末新鋭霊滅隊 ― 巨大女郎蜘蛛アリアドネ掃討戦 ―

SilentNoise

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プロローグ

点滅する巨大繭

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 彼らが踏み入れたのは、旧市街の聖堂跡だった。
 天井は抜け落ち、巨大なクレバスのように空が覗いている。その空を覆うのは――蜘蛛の糸。
 血管のように枝分かれし、内側を何かが蠢いている。白濁した小さな塊がゆっくりと移動しては、結び目に吸い込まれる。繭だ。人が包まれている。膨らみ、もがき、やがて動かなくなる。

 フウカが歯を食いしばる。
「……全部、人間か」
 怒りを押し殺すように、拳で胸を叩いた。
「見ろよ、クシェル。あたいらが負けたら、ああなるんだ。なぁんも考えず、糸の中で喰われて終わりだ」

 クシェルは応えなかった。
 応えれば胃が裂ける。代わりに、彼はスコープを覗く。
 繭の群れの奥、さらに濃い影がある。蠢く脚。だがその全容は見えない。
 アリアドネ――まだ現れていない。
(待っている。俺たちが奥へ進むのを。逃げ道を塞いでから、一気に糸を締めるつもりだ)

「巣核まで、あと三百」
 通信兵の声が耳に落ちる。
 フウカは頷き、刃を抜いた。小柄な手に収まるナイフは、儀式刻印で真っ黒に塗られている。
「行こうぜ、クシェル。ここまで来たら後戻りはねぇ。……あたいらは人間最後の牙だろ」

「……ああ」
 クシェルはようやく答えた。
 声は冷たく響いたが、胃の奥底では血が泡立っていた。
(戻れない。戻りたい。だが――戻れない)

 二人は並んで進む。
 その頭上、巨大な網目の奥で――女王の眼が開いた。
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