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13.浄化の旅
しおりを挟む「無の力」が正しく発動できたことを確認できたリナリアは、少しだけ、自分がこの世界にきた意味や役割に前向きになれた。
シュリーエン王国での聖騎士達やその国に住まう人々との交流も、リナリアの意識を変えた。
ずっと何故、自分が見知らぬ世界を救う役目を?と思ってきたが、人々と接し、その優しさや生きる逞しさと触れあうと、彼らを救える力が自分にあるのなら、という思いが芽生え始めてきた。
多分きっと、そう思えたのは、一番近くで自分を助けてくれた聖騎士達のおかげだろう。
次の王国ミーシュタット王国での浄化は、比較的順調に進んだ。シュリーエンの時と同じく、最後の浄化で強い抵抗を受けたが、渓谷が多いという特性からフィグルドとエカルラートが思い切り攻撃魔法を使えたことも大きかった。
さらに、今回は浄化の儀式の前を狙われたことにより、リナリアは祈りを捧げる防護膜の中から、彼らが戦う姿をこの時初めて見ることが出来た。
まるで映画のような世界に、リナリアは見惚れる。
特に、エカルラートの獄炎をディーの風魔法で最大化させた攻撃は見た目も威力も圧巻だった。
「仲良しなんですねぇ……」
なんて思わず感嘆の声をあげたら、ディーが思い切り嫌そうにして、エカルラートは満面の笑顔になった。戦闘の様子が見えたら怖いなら見えなくするかと、ディーには気を使ってもらったが、見て、皆がどうやって自分を守ってくれているのか知りたいとお願いすると、彼は何も言わず音声も届くようにしてくれた。
フィグルドの縦に空を割る閃光の攻撃魔法はとにかく派手で、渓谷を壊しかねない威力だった。そのため、ノエスとイサラが大地と水の魔法を使って必死で渓谷を強化していくのが少し面白かった。
おかげで、被害は最小限だ。
が、それでもやりすぎだったらしく、ディーが上空から降りてきてフィグルドの頭をぺしんと叩いた。
「お前はもう少し手加減を覚えろ」
「……すまない」
ディーにとってフィグルドは上官ではあるが、聖騎士団の団員としてはディーが先輩らしい。聖騎士としての心構えや戦い方をフィグルドに教えたのもディーだった。
だからか、未だにフィグルドはディーの説教には逆らわず、素直に受け入れている。
無表情ながらも、怒られたことが少し気まずかったのか、ちらり、とフィグルドがこちらを見た気がした。
リナリアは、珍しいフィグルドの目配せに、何か返さなければと慌てて「大丈夫」と示すように胸の前で両手を握ると、拳を作ってみせた。
(……もっとやってしまえ、か)
確かにリナリアは、エカルラートとディーの合わせ技に興奮していた。夫になる男としてはもっと派手にアピールをすべきだったか、と表情筋も動かさず、こんこんと考える。
付き合いの長いエカルラートはフィグルドの邪な考えを感じ取ると、ディーにこそっと耳打ちした。
「ディーちゃん、反省してないわよ、これ」
「……こいつは本当……」
ディーの額に青筋が浮かぶ。
リナリアは、今まで聖騎士一人一人と接することはあったが、全員と共にいる時は式典といった正式な場ばかりだった。だから、聖騎士達が砕けた雰囲気でやり取りを交わす空気感を初めて知った。
彼らは互いを信頼し、助け合う。その能力は人の想像を遥か超え、リナリアの知るまさに魔法の世界を体現する。
ずっとリナリアは、自分一人で戦っているような、そんな心細さがあった。祈っている間は何の音も、風も匂いも感じることなく。ただひたすら孤独だった。
だけど自分の傍で、こうやって皆が力を合わせて守り続けてくれていたのだ、と実感できた。
なんだかやっと皆の一員になれた気がして、微笑ましくやり取りを見ていると、おずおずと小さな声が耳に届く。
「リナリア……派手なの好きなの……?あとで僕の氷結魔法見せてあげるね」
イサラの申し出に、リナリアが喜んで「ぜひ」と答える。
遠くで先を越されたことに歯噛みするフィグルドに、当然リナリアは気づくことはなかった。
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