拝啓、聖騎士様。もうすぐ貴方を忘れるから離縁しましょう~履いてない!?聖女逃亡手記~

花虎

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22.闇神フォグの策略

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 リナリアはふるふると頭を振る。正直なところ、女神からは闇神フォグに関してはほぼ説明を受けていない。

 そう考えるとひどく不親切な話だな、とちらりと思ったが、親切な神様なら帰り道を用意してくれるはずだから、期待しても無駄だとすぐに意識を戻す。
 
「そうか……。奴は、実態を持たない。あえて闇神フォグだと表すとするならば、世界を覆い、死滅せんとする瘴気の黒い靄そのものだ」

それは、リナリアもここまで来るのにたくさん相対してきたし、聖騎士達から話を聞いて知っているので素直に頷いた。

「その能力は、生命を奪うこと以外にも、体内に潜入し、肉体を操り狂暴性を増幅させて破壊衝動を促すなど、多岐にわたる」
 
 そこも、教えてもらったので理解している。闇神フォグに操られた人間は、身体に黒い靄をまとわせていて、怒りの形相で襲い掛かってくるのですぐにわかるのだ。

 リナリアが浄化をすると、体内から瘴気が排出され、意識を失う。大抵の場合は、元通りになるのだが、操られている時に致命傷などを負った場合にはその傷は癒せないので場合によっては亡くなってしまう。

 目の前で操られている場合は、リナリアが対処できるので、今までの旅で「聖女一行の前で」亡くなった人は幸いいなかったが。おそらくこの話はそういうことではなく、聖女に浄化されずに命を落とすものたちのほうが圧倒的に多いということなのだろう。

 リナリアの様子を注意深く観察しながら、フィグルドは話を先へ進める。

「この、闇神フォグを感知できるのは、奴そのものが単体で存在する場合のみだ」
「……単体?」

今まで認識していなかった言葉に、リナリアが首を傾げた。

 それはつまり、単体、ではない状態が存在しうる?

「あぁ。視覚的に認識が出来る瘴気の靄、刃、集合体、人や動物を一時的に操り狂暴性を増幅させる時などがそれにあたる。だが、長い時間をかけて、闇神フォグが身体や精神に馴染んでしまう現象がある」
 
そこでフィグルドが言葉を切ると、黙っていたディーが補足するように付け足した。
 
「暴徒と化した人間には、それを操る闇神フォグの瘴気が纏わりついていて、目に見える。だが、馴染んでしまった奴は、傍からは人間と同じで見分けがつかない。だが、中身はすでに人間ではない別のなにか、だ」
「……そんな……」
 
 リナリアが衝撃に目を見開くと、フィグルドが口を開く。
 
「―――――暴力や破壊をする操られた人間はリナリア、君の力で浄化して救える。だが、闇神フォグと一体化してしまった人間は救えない。闇神フォグに精神を乗っ取られ、都合のいいようにその立場、頭脳、感情を利用されてしまう」
 
 しん……と食堂内に沈黙が落ちる。

 リナリアにとって、浄化をすれば全て「めでたしめでたし」だと思っていただけに、この事実は衝撃的だった。

 聖女でも救えない、人がいるなんて……。

 どこかで、闇神フォグに対しては聖女の力で全て解決しうると考えていただけに、ショックを受けた。さらに、追い打ちをかけるようにディーは背もたれに乗せていた腕を伸ばして身体を後ろに倒した。
 
「問題は、救えないことだけじゃないぞ。こいつらは、人間という皮を使って、聖騎士の命を狙う」
「え……?」

今まで、闇神フォグは聖女だけを狙ってきていたはずだ。リナリアの疑問にディーが答える。

「聖女を殺すことが闇神フォグの狙いだが、その聖女を守る聖騎士が邪魔ってことだ」



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