マジカルホーレ ~魔森の大陸~

風良桑 るな

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神秘な森

ホーレの蔓人

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 五感を取り戻していく。
 体に重力がかかる所が沈み、それ以外は程よく反発している。まさに低反発マットレスのような感触だ。地面に生えた草々が皮膚に触れている。動けば少しくすぐったい。木々の中を爽やかに駆け抜ける風が体に触れる。緑の葉が揺らされ心地よい音を鳴らしている。
 眩しすぎない木漏れ日の中でまぶたを開く。そこには一面緑の景色が広がっていた。まさに絵に書いたような自然だった。実際に目で見たことはないがネットでは一度は見たことがあるように思える。ここは何処だろうか。
 土は不思議と軟らかく、しかし弾力性も持っている。足で踏むと沈み、足を離すと元に戻る。慣れない地盤のせいで上手く歩けない。バランスを取りながら一歩を踏み出す。辺り一面自然のその場所をゆっくりと見渡しながら勘のする方へと歩いた。歩けど歩けど変わらない景色が続いている。満足に歩けないのと変わらない景色が長い道に思わせていく。あまりの長さに体力が奪われていく。
 歩いているだけで息切れしかけていた。
 目線の先に人影を見つけた。人だ。何も起きない状況へのスパイスとなり心が踊っていく。その人影を逃さまいとできるだけ速く歩いていく。歩いていたら、その影が自分の姿に気づいた。こっちに向けて顔を出す。そこに見えたのは人間とは言いきれない存在だった。
 色の着いたモコモコな髪の毛から出ている二本の太く曲がりくねる角がある。皮膚の毛は白く獣のようで人間とは思えない。しかし、少年のような風貌と人間のような体格が人間にも思わせていく。
 見たこともない存在に頭が混乱する。一度整理するために脳を回転させる。その分だけエネルギーは吸い取られていった。
 腹の虫がうめき声をあげ自然の中に響き渡る。体を巡らすエネルギーが枯渇したからだろうか。視線が狭くなっていくのが分かる。ここにきて思わず気を失ってしまった。


 大木を切り抜き作られた家の中で再び目を覚ます。木の中の部屋には誰もいなかった。ここへと運んできた誰かを探すため部屋の中を掻き分けていき外の光が入る玄関へときた。建物の三階の部屋から窓の外へと顔を出すように、僕もまた三階程の高さにある玄関口から顔を出した。
 僕は高所恐怖症だ。高さに慄然りつぜんし踵を返し戻った。ここから出るのは無理だ。
 足が竦むので先程まで寝ていた草で作られたベットの上に腰を下ろした。
 ここは何処で、何故僕はこんな所にいるのだろうか。
 記憶を蘇らせていく。見知らぬ森の中で目覚めた僕は未知なる土地を歩いていたら人間のような人間ではないような人に出会して、そこで気を失った。
 それでは、それより前の記憶は──。もしかして記憶喪失か。そう思ったが、ただ単に気が動転して思いだせていなかっただけで、時間が経つに連れて整理されていき思い出されていく。
 僕は半年前までは何処にでもいる普通の高校生だった。それからはファンタジーのような非日常の竜巻に巻き込まれた。特殊なマスクをつけると異能力者になる。そんな出鱈目でたらめな現実から始まり、そして今に至る。これもまた出鱈目の延長線であるみたいだ。
 ここへと運んできた彼が階段などないのに三階にある玄関から入ってきた。昇り降り用のロープなどはないのにどのようにここへと来たのだろうか。疑問を感じる。
「おっ。起きてる。良かった。四日間も起きなかったから心配したよ」
 四日間も目覚めなかったことに衝撃的だった。それと同時に、四日間もここに住まわせてくれたお人好しな彼に申し訳ない気持ちで満たされていった。
「そうだ。俺はエウェ。よろしく」
「僕は小森こもりかく。小さい森を翔けるで、空を翔けるの翔けるは「かく」と読みます」
 口に手を当てながらも表情は砕けていて笑っているようにも見える。
「セカンドネーム持ち……。もしかして貴方様は王族の方で御座いましょうか」
 急に物腰が硬くなってカクカクとした動きでこうべを垂れた。全く理解が追い付かず元々混乱していた頭にさらに追い討ちをかける。とりあえず頭をあげさせた。
「とりあえず僕は王族なんてものじゃなくて普通の高校生……」
 ポカンと口が開かれて首が横に傾けられていった。高校生というのが分からないみたいだ。人間ではない可能性もあり、それなら彼が高校生を知らないのも頷ける。
 彼はキッチンで何か料理を始めていった。それを見ると人間の可能性が追い上げてきた。
「あの、俺、斬撃の異能力マジカルです。貴方は何の異能力マジカルですか」
 今度は僕が口を開き首を傾けていった。マジカルとは何かを聞くと、
「人間の持つ特殊能力のことですよ。もしかして使えないですか。ということは純人すみと。そうならば貴方様は王族の可能性が……」
 と彼は答えた。
 特殊能力と聞いてピンとくるものがある。結論から言うと僕は特殊能力を使える。彼らで言うとマジカルを使えるのだ。
「あ、マジカルって特殊能力のことなんすね。それなら僕も持ってますよ。蔓を操る能力です」
 半年前までは異能力者ではなかった。人間としてそんなことできる訳なかった。しかし、特殊なマスクをつけた瞬間から異能力者と変わった。今も尚付けている蔓の柄のついた立体型の市販マスクが僕を異能力者にさせる。
「蔓の異能力マジカルなんですね。やっぱり異人いじんですか。それとも混人こんじんですか」
 異人。混人。聞いたことも無いワードだった。
 どういうことかを聞いたら逆に知らないのかと驚かれた。
 こうしている間にもエウェは料理をし終え、木の器に入ったお粥を木の机へと置いた。
「これ食べて下さい。何日間も食べてないですからね。それに俺が見つけた時に大きな腹の音たててましたから」
 からかっているのか冗談めいて笑わせようと必死になっているのかは分からない。ただ、机の上に置かれたお粥が食欲をかきたたせ表情を砕けさせられた。
 机の前へと移り、マスクを外し、手を合わせる。
 薄く立つ湯気が温かさを伝える。緑色の葉っぱや砕けさせた緑色の草、胡桃くるみの欠片などが散りばめられている。木のスプーンですくい口の中へと放り込む。米は汁によって柔らかく、唾液と簡単な咀嚼でとろけていく。芳醇ほうじゅんな草に胡桃の甘さが米と混じり合い口の中に飽きない味が広がっていく。口の中で液状に変わったそれを一気に飲み込んだ。空腹が相まってその味はとても美味しく、記憶に強く殴りかかってきた。
 あまりにも美味しいものだから、数分もしないうちに完食していた。
 手を合わせ、マスクを再びつける。「わざわざマスクをつけなくても」と呟かれたが、もう取り外す気にはなれなかった。
 マスクをつけている間は異能力者になるが、外すとその時は能力は使えなくなる。だからこそ、肌身離さずに持っている必需品のようなものだった。
「そうだ。今からお師匠さんに会いに行くんですけど、一緒についてきますか」
 彼は出かけるようで僕もそれについて行くことにした。三階にある玄関から軽々と飛び降りていく姿を見た。何事もなく飛び降り着地するエウェに唖然とするしかない。
 僕は蔓を繰り出してそれを伝って降りる。時間をかけてようやく降りた頃には気持ち悪くなっていた。
 ただでさえ調子が優れないのに不安定な足場がさらに気分を悪くさせる。彼はこの土地に慣れているようで硬いグラウンドの上を歩くように歩いていた。時間をかけて着いた場所にはまだ僕達しかいなかった。
 見渡せば一面緑の自然。他の人の姿は見えない。だが、エウェにとってはもう一人見えているらしい。
「お師匠さん。例の倒れてた男の子を連れてきましたよ」
 何処に話しかけているのか、その方向を見ても何もない。風で木々がざわめき葉を落とす。何処からともなく声が聞こえてきた。女性のようで優しく包み込むような声だった。
「ご機嫌よう。私はシーフ。エウェのお知り合いです。お見知り置きを」
 シーフは姿形を見せることなく話しかけていく。
「僕は小森翔です。小さい森を翔けると書いて「こもりかく」と読みます。あの、シーフさんは何処にいるんですか」
「あなたのすぐそばにおりますよ。神経を尖らせ、耳を澄ませ、自然を感じ取ってみなさい。私を感じ取れませんか」
 目を瞑り心を無にする。体には爽やかな風が当たり、木の隙間から光射す木漏れ日が体を温める。風の中でサワワサワワと木の揺れる音。その中にシーフは……感じ取れなかった。
「すみません。分かりません」
「そうですか。ですが、気をとめないで頂きたい。数ある人間が私のことを探しておりますが、私のことを感じ取れるのは今までエウェ、彼一人しかおりませんでしたから」
 逆にエウェは感じ取れていたのか、と感心する。
 神経を尖らせないと見えないが、尖らせても多くの者が見えない。シーフの容姿はどのようなものなのか興味がそそられていく。身勝手なイメージは森の妖精で、透けた薄緑のベールをまとった女性のイメージだった。
「それよりもあなた、伝説の一人、ホーレの蔓人まんぴとですね。まさか実在しているとは恐縮です」
 伝説の一人とは、蔓人とはどういう意味だろうか。全く耳慣れしていない言葉が次々と飛んできて、さらにスケールの違いから頭がこんがらがっていきそうだ。
 ただ、ホーレという言葉は聞き慣れていた。異文化喫茶『HoLEホーレ』という喫茶店がある。その店は他の国の文化を満喫しながらゆったりできるというのが売りであった。ただ、その店には裏の顔があり、それは異能のマスクによる悪事を防ぐ義の秘密結社という顔だ。僕もそこにお邪魔して、マスクを持った悪い輩と戦ったこともある。しかし、ホーレのその後は分からない。ある時、僕を含むホーレの皆は地球に現れた壮絶な強さを持つモンスター─悪魔─と戦い、その果てにその悪魔を滅ぼした。その凄絶な戦いで次元の穴が開かれ、満身創痍の僕らを吸い込んでいった。半分以上は穴の中に吸い込まれたのだろう。
 その後、他の仲間達の行方は知れず。僕は見知らぬ森の中で目覚め現在いまここへと至る。
 仲間達は無事なのだろうか。ここは何処なのだろうか。もし別世界なら元の世界に戻れるのだろうか。手探りで解決しなければならない数々のタスク。まずクリアすべきタスクは「ここは何処か」だ。上手くエウェやシーフから聞き出せないだろうか。
「本当にあの蔓人なの。では、三魔官さんまかんのレフトを倒したってこと。もしかして、そのマスクって異能力マジカルを与えるマスクなの」
 エウェは内心はしゃいでいるようだった。
 ここでは僕は有名なのだろうか。三魔官はもしかすると僕らの呼んでいる悪魔か。悪魔は相当な力があり、この世界でも上位の強さを誇ると考えられる。それを倒したことがこの世界に知れ渡っているのなら、ここで有名なのは頷ける。
「蔓人かどうかは知らないけど、もしかしたらその悪魔のレフトを倒したかも知れない。マスクはそうだけど、エウェもマスク持ってないの」
「やっぱり純人だったんだ。それもホーレって王族よりも上の位なはず。おみそれしました」
 彼の態度は次々と変わっていくせいでどう接すればいいか分からなくなってくる。高校生の僕にとって王様のように持ち上げられるのは慣れていないため、対等な態度をお願いした。
 それよりも分からないことばかりだ。パズルピースだけは増えていくのに全く完成する気配がしない。
「シーフさん。この世界について教えて下さい。ここは何処なんですか」
 ヒラリと葉っぱが落ちていく。
「あなたはここにいることが不思議な存在。教える前に一つ教えて頂けませんか。あなたは何故ここにいるのですか」
「分からない。ただ、悪魔─君達の言う三魔官─を倒した時に出てきた穴に吸い込まれて、目を覚ましたらここにいたんです」
「穴。マジか、伝説通りだ」
「ええ。そういうことですか。吸い込まれた結果、あなたはここへと飛ばされたのですね。モンスターの蔓延るようになった約二百年後の地球へと──」
 異世界転生やゲームなどでよくあるような世界にも思えるがこの世界は地球。未来の地球。戻ることもできないその現実に打ちひしがれていく。開いた口にこがらしの風が入っていった。
「ごめん。状況が読み込めない。ここは未来の地球でモンスターが蔓延っている。駄目だ。意味が分からない」
「あなたの知る世界は消滅した。つまり、ここはあなたにとってはここは異世界と言っても違いない」
 何処からともなく響くシーフの声を聞きながら、浮き沈みする地面に腰を下ろした。
 穴に吸い込まれる前にもモンスターは度々我々の世界へと降り立っていた。ついにその世界とこの世界が一つとなり存在する。スケールの大きい話の中でただ風に身を任し漂う。
「変わり果てた世界の真実を直接触れて明かしていく方がよろしいでしょう。旅に出ることをおすすめします。百聞は一見に如かずですから」
 謎に満ちたこの世界を解き明かしていくには旅に出るしかなさそうだった。
 まだまだ動揺は残っていて覚悟は決められてはいないが、気持ちは段々と冒険の気持ちに傾倒し始めていた。

 何やら風が騒がしい。
 木々が細々に揺れ小刻みな音を鳴らせ気持ちを焦らせる。不穏な風が吹き抜ける。
「モンスターが現れた見たいですね。それも無作為に傷つける下等なモンスターです。御二方、戦闘の準備なさい」
「よっし。お師匠さんに強くなったエウェを見せてやるぞ」
 慌てて立ち上がり敵の襲来に向けて気を張っていく。
 木の隙間から現れたのは豚に似た大きなモンスター。しかし、紫色の体には無数の棘がついている。見るからに凶暴で僕達を狙って突進してきている。
 蔓を出してそれに絡ませた。動きを止めている間に思考を回復させる算段だ。
 いきなりのモンスターに戸惑いつつも、凶暴な野生動物とそのモンスターのイメージが重なり戸惑いは消えていった。傷つかないために殺されないためにそれを狩る必要がある。それは熊や鬣犬はいえなが人間を襲う時、人間を救うために殺すのと同じだろう。このモンスターもまた野生の動物だ。
 蔓が破かれた。それはそのままエウェ狙って進んでいく。
 脳内にトラウマの残像が現れていく。姿形がぼやけている一人の女の子。彼女の残像がエウェと重なっていく。身体を貫かれ赤い鮮血を吹き散らす。そんな光景が見えた気がした。
「もう目の前で失いたくない──」
 無意識的に不思議と力が漲っていく。何処からともなく出ていく蔓がさらに体から生え出ていく。無数の蔓がモンスターに絡んでいき拘束する。
 何とか抑え込むことはできたがそれ以上のことはできなかった。それに攻撃する気になれなかった。きっとフラッシュバックのせいだった。
「俺、そんな弱くねぇのにな。折角、カウンター見舞うつもりだったんだけど」
 足に鉤爪が見えた。人間のものでは無いのは一目瞭然だ。沈む床が普通の床のように走り、そして高く跳ぶ。近くの幹を爪で刺して飛躍していき、空高くへと跳びいった。
「翔さん。そのまま抑えていて下さいよ。俺が仕留めますから」
 見上げるがエウェは眩しい光に隠れてしまっていた。彼は無数の斬撃とともに降りていく。斬撃の雨がモンスターを襲い、トドメとして全身を振り回して起こした斬撃でモンスターを真っ二つに切り去った。
 モンスターは黒い粉に変わっていき、粉は自然に消えていく。やがてそのモンスターは消滅した。
 勝利の余韻に浸りながら木にもたれかかった。
 唐突な展開のせいで心の準備をしていなかったから余計に疲れていた。
「ありがとうございます。ナイスアシストです」
 元気が有り余っているように見える。疲れ果てている僕とは大違いだった。
 シーフがそんな僕を見て呆れていたようだ。
「もしかしてあなたは弱いのでしょうか」
 図星だった。名声のきっかけとなった三魔官レフトの打破も仲間との協力があったからこそで一人だったらすぐに死んでいたと断言できる。
「私、旅に出るべきと言いましたが前言撤回します。このまま旅に出ればすぐに死んでしまいます。あなたはまずは強くなるべきです」
「強くなるって言っても具体的にどうすればいいのか分からないんですけど」
 姿形は見えないが少し笑ったように感じた。エウェもまた笑っている。
「安心なさい。私とエウェが直々に、あなたにこの変わり果てた世界を生き抜くための処世術を叩き込みますので。よろしいでしょうか」
 答えはイエスだった。結局旅に出ても死ぬだけであり、ここからは出られない。それなら彼らの提案を受け入れた方が得策であった。
「では、明日から開始しましょう。あなたの実力を知りたいですし。今日は疲れたと思いますのでお開きに致しましょう。エウェさん、翔さんを住まわせてあげなさい」
「分かりました」
 この日はここで解散となった。エウェに連れられ僕はこれから住む家へと辿り着いた。
 何故か高くにある玄関口。エウェは木に爪を絡ませて昇っていた。僕は蔓を伸ばして嫌がりながらもようやく家の中へと入れた。
「何でわざわざこんな高い所に入口があるの」
「下等なモンスターが来るかも知れないから。一階に入口があったら四六時中狙われるからね。こうするしかないのさ」
 草で作られた座布団の上に座った。
 彼はキッチンにいき黙々と何かを作り始めた。
「今日からはシェアハウス。できるだけはやく翔さんの家を作るから楽しみにしてて下さい。後、家事は俺がするのでゆっくりしてください。流石に位が違いすぎますから」
 そう言われたが「いや、俺もやるよ」と言い切り、家事を折半することにした。
 日が落ちて辺りが真っ暗になった。
 木の中には電球が光を放っている。この世界では自力で発電しそれを使う技術が発展していた。他にも元の地球よりも発展した技術があるらしいが彼はそれを使うことができないらしい。
 僕はふんわりとしたソファの上で一夜を明かした。

 まだ朝日が昇りきっていない頃に無理やり起こされ外へと出される。三階から降りることにより睡魔は醒めた。
 まだ五時か六時頃ぐらいだろうか。エウェに連れられて森の中を歩いていく。
 一時間ぐらいかけて着いた先は海岸だった。
 そこの海岸には巨大な岩が一つある。とても不思議な形の岩だった。下は太く上は短くなっていく。岩は真っ直ぐ伸びてはおらず曲がりくねっている。エウェは身軽なフットワークでその岩へと座った。
「今日ははやく起こしてごめんね。けど、これを見せたくて」
 水平線から登っていく朝日。日の出だった。
 黄色と明るい橙色の混じった色が広がっている。明るいその色が上にある淡い紺色を退けていくみたいだ。昇っていく太陽の下には明るい黄色が広がっていた。
 透き通る空気の中で木々の揺らす音が気持ち良い。
 都会で生きてきた僕にとってこの景色はとても新鮮で温かく感じた。
「綺麗だね」
 そんな一言しか出なかった。
「ああ。綺麗なんだよ。どう、俺のお気に入りは」
 昇る朝日がここは地球だと実感させていく。希望と絶望が混じる中、変わらず太陽は上へと進む。現実の味を噛み締めながら水平線に広がる光を眺め続けていった。
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