家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜

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2章

最奥

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星降りの森の奥は、昼間でも薄暗い。
空気が重く、光が届かないほど濃密な魔力が漂っている。
アイラは胸に手を当てながら歩いていた。
(わたしの魔力……なんでこんなに強いの……?
怖い……でも知りたい……)
フェンリルはゆっくり歩幅を合わせる。
『心配するな。
我らがついている』
ウィングキャットが羽を震わせ、
『アイラに“危ない目”なんて、絶対させないもん』
シャドーベアは影の中からひょこっと顔を出した。
『……怖かったら、手……握る……?』
アイラはふっと笑った。
「ありがと……みんな」
三体に囲まれながら進むその場所は、
どんな危険地帯よりも安心できた。

やがて、森の最奥へたどり着く。
古代文字が刻まれた巨大な石門。
その中心には、星の紋章が淡く光を放っていた。
『……これが、アイラの魔力の“根”だ』
フェンリルが低く唸るように言った。
アイラが手を伸ばすと──石門が反応し、
星の光が一気に広がった。
眩い光。
魂を震わせるような響き。
そして聞こえた。
──ようやく、来たのですね。
アイラ以外の誰にも聞こえない声。
(……誰?)
──あなたの中に眠る“星の血”です。
あなたは本来、王家より古い系譜。
星を司る一族の末裔。
(わたし……そんなの知らない……!)
──知らなかったでしょう。
その力が恐れられるからこそ、
生まれた瞬間に封印され、記憶からも隠されたのです。
アイラの心臓が強く脈打った。
(……わたし……捨てられたんじゃなくて……
最初から“隠されていた”の……?)
声は続く。
──あなたの力は“災厄”ではありません。
本当は……世界を救う力。
目覚めを恐れた者たちが、歪めていただけ。
光がアイラの胸へ吸い込まれていく。
フェンリルが身構える。
『アイラ!! 離れろ!!』
「だいじょうぶ……怖くない……
これは……わたしの一部……!」
光がふっと消え、
アイラはよろめきながらも立っていた。
その瞳は、今までより強い輝きを宿していた。

『……アイラ。
いずれ、お前は森を出たいと思うだろう』
突然のフェンリルの言葉に、アイラは目を瞬く。
「……森を?」
『ああ。
世界を知りたい。
人と関わりたい。
もっと強くなりたい。
そう思う日が来る』
ウィングキャットが尾を立てる。
『アイラが行くなら、わたしたちも行くよ!』
シャドーベアも手をあげる。
『人の町……行ってみたかった……』
しかしアイラは俯いた。
「……でも、みんな魔獣だよ?
町に入れないよ……」
フェンリルはふっと笑う。
『それなら問題ない。
我らは“人型”になれる』
「えっ!!?」
三体はそれぞれ一歩前へ出た。
フェンリルの身体が光に包まれ、
長身の銀髪の青年へと姿を変えた。
蒼い瞳はそのまま、息をのむほど美しい。
『人の姿など、容易い』
ウィングキャットは白髪の可愛い少年に変わる。
背中には小さな羽が残っていて愛らしい。
『にゃは これなら町でもばれないでしょ?』
シャドーベアは黒髪の寡黙な青年の姿に変わる。
瞳だけが金色に光っていて、影を揺らしていた。
『……アイラと一緒……行きたい……』
アイラは口元を押さえた。
「……みんな……
本当に……一緒に来てくれるの……?」
フェンリルは迷いなく答える。
『当然だ。
お前の望む道を、共に歩む。
冒険者になりたいなら、我らが横に立つ。
──どんな世界でも、お前を守る』
涙があふれた。
「……わたし、いつか……冒険者になりたい。
誰にも怯えないで、胸を張って生きたい……!」
フェンリルはアイラの手を包んだ。
『ならば、町へ行こう。
お前の新しい人生を、そこで始めよう』
こうして、
アイラと三体の従魔の“人間としての旅”が
静かに動き出そうとしていた。
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