家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜

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3章

初めての街

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街道の向こうに見えたのは、まるで城壁のようにそびえ立つ巨大な大門だった。
「……これが、“大きな街”……」
 アイラは思わず歩みを止め、息を呑む。
 公爵家の敷地以外はほとんど知らない彼女にとって、
人の声、荷台の音、行商人の呼び声……
すべてが眩しく、新鮮で、少し怖かった。
 そんなアイラの不安を察したように、
銀髪の青年──フェンリルがそっと背中に手を添える。
「心配するな、アイラ。
 この街で何があろうとも、我らがすべて守る」
 低く穏やかな声は、胸の奥にあった不安を少しずつ溶かしていく。
「大丈夫! ぼくらがいるよ!」
 白髪の少年──ウィングキャットは無邪気に笑いながら、
アイラの手をぎゅっと握った。
「……迷ったら、すぐ呼べ」
 黒髪の青年──シャドーベアは短く言いながら、
アイラの肩を軽くとん、と押して歩みを促す。
 三人に囲まれる安心感は、涙が出てしまいそうなほどだった。

 大門の前では、門兵が通行者を順に確認していた。
「初めて見る顔だな。確認を──」
 門兵がフェンリルたちを一瞥し、固まった。
 銀髪の美丈夫、白髪の天使のような少年、黒髪の寡黙な青年。
明らかにただ者ではない美貌と雰囲気。
「あ、あー……え、護衛の方々ですか?」
 門兵は完全に気圧されていた。
 フェンリルは微笑んで答える。
「アイラの旅の護衛だ。問題あるか?」
「い、いえ! どうぞご入城ください!!」
 あまりの美貌と威圧感に、門兵はほぼ反射的に道を開けた。
 アイラは「こんな簡単に……?」と戸惑ったが、
周囲は彼らを“特別な護衛を雇ったお嬢様”だと認識していた。
『……アイラはただ立ってるだけで人が道を開けるな』
『当然。アイラは可愛い』
『……おれも、そう思う』
 三人が普通の会話のように甘やかすので、
アイラは耳まで真っ赤になった。

 街へ足を踏み入れた瞬間──
強い香辛料の匂い、焼き菓子の甘い香り、色とりどりの商人の声。
屋敷とはまるで違う、“生きた世界”が押し寄せてくる。
(すごい……本当に、外の世界ってこんなに大きいんだ……)
 だが、その最初の目的地は決まっていた。
「まずは冒険者ギルドだな」
 フェンリルが言う。
「登録しないと街の外に出られないしね!」
ウィングキャットが元気に続けた。
「……ギルド、あそこ」
シャドーベアが遠くの建物を指差した。
 アイラは三人に囲まれながら大通りを歩く。
その姿は、まるで貴族の護衛隊のように見え、
誰も近づこうとはしない。

 やがて、大きな看板が視界に入った。
──《冒険者ギルド・ルーミア支部》──
 重厚な扉の前でアイラはごくりと喉を鳴らした。
「緊張してるのか?」
フェンリルが優しく覗き込んだ。
「……う、うん……でも、頑張る」
「偉いね、アイラ!」
「……いこう」
 三人に背中を押され、
アイラはついに冒険者ギルドの扉を開いたのだった。
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