家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜

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3章

黒い森の叫び

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森の奥へ駆けるにつれ、
空気が変わった。
湿り気を帯びた冷たい風。
耳の奥にまとわりつくような低い唸り声。
明らかに、ただのスライムがいる場所とは違う。
「フェンリル……なにかいるの……?」
アイラが息を切らしながら問うと、
銀髪の青年はアイラの手を軽く握った。
「心配するな。だが油断はするなよ」
「……あぶない、におい」
シャドーベアが影の中から低く呟く。
「ほんとにイヤな気配だね……」
ウィングキャットも眉を寄せ、ふわりと肩に乗った。
そのとき──
「誰かっ! 助けてぇぇぇ!!」
はっきりと聞こえた少女の悲鳴。
アイラは反射的に走り出そうとしたが、
「待て、アイラ! お前は俺の側を離れるな」
フェンリルがしっかり腕を掴んだ。
「で、でも……助けなきゃ……っ!」
「助けるのは我らだ。お前を危険に晒すわけにはいかん」
その声は厳しいのに、優しさがにじむ。
「……フェンリル……」
アイラが頷くと、フェンリルは少しだけ微笑んだ。
「よし。安心しろ。
 お前の家族は、誰ひとり死なせない」
その瞬間──風が裂ける音がした。
森の奥から、
“黒い腕”のようなものが少女の身体をつかみ、
地面をずるずる引きずっていた。
「た、助けて……! 誰か……!!」
小柄な町娘。
焦ったように手を伸ばし続けている。
「よくも……!」
アイラが叫ぼうとした瞬間、
「任せて!」
白髪の少年──ウィングキャットが弾丸のように飛んだ。
翼が光を放ち、数秒で黒い腕に追いつく。
「はなせっ!」
彼の小さな体からは想像できない力が放たれ、
黒い腕はメリッと音を立ててねじ切られた。
「きゃっ……!」
落下する少女を、
影から飛び出したシャドーベアが抱きとめた。
「……だいじょうぶ」
低い声なのに、不思議な安心感がある。
フェンリルは少女を背に庇いながら、
森の闇を鋭い目でにらんだ。
「姿を現せ。
 人を襲うなら──相応の覚悟はあるのだろうな?」
すると、木々の間から“それ”は現れた。
ぐにゃりと人型を模した黒い肉塊。
腐敗したような匂い。
空洞の目穴からは絶えず黒い煙を吐き出している。
「なに……これ……?」
アイラの声は震える。
「……名前は知らぬが、
 魔物というより“呪詛”に近いな」
フェンリルは忌々しげに目を細める。
ウィングキャットがアイラの肩に戻り、小声で言った。
「だいじょうぶ。これくらいなら、僕たちで倒せるよ」
シャドーベアも静かに武器を構えた。
「……アイラ、見てて。まもる」
三体の従魔が一歩前に出た瞬間──
黒い異形は、耳を劈くような咆哮を上げた。
「■■■■■■──!」
風が逆巻き、木の葉が舞い散る。
だがフェンリルは
アイラの前に立ち、軽く手を広げただけだった。
「騒ぐな。──お前ごときが、我が愛し子を脅かすな」
銀の瞳が、蒼に光り輝く。
森の空気が、一瞬で凍りついた。
──アイラの初めての戦闘が、今始まろうとしていた。
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みんなの感想(1件)

ひつじ
2025.12.09 ひつじ

どうかアイラちゃんとその家族にも 守ってあげて下さいヽ(д`ヽ)

解除

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