【完結】銀鳴鳥の囀る朝に。

弥生

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金鳴鳥の囀る朝に。

登場人物紹介&        。

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【人物紹介】
アイル・ラスター
26才。細身の騎士。
その背丈や体格からヴィリアム王子の身代わりを務めていた。
七年前、『銀鳴鳥の惨劇』と称される品評会で第三王子が亡くなり、その責任を問われ降格した。
また、災いの残滓の残る銅鳴鳥の遺骸を片付けた。
現在グラディウスと同じ隊に配属され、彼の方がひとつ階級が上だが、良き友人として過ごしている。
魔術の才能は無いが剣技に長けており、現在騎士団最強と言われるグラディウスと対等に渡り合えるのは彼しかいないと言われている。
グラディウスとの勝負は公式戦では158勝225負。鋭い突きと冷静な剣筋が容赦がないと恐れられている。
グラディウスに連れられて色んな店に出入りしている為、他の騎士たちからは彼の世話役扱いされている。
趣味は読書と愛馬のブラッシング。数年前から家族と文通を始め、末の弟も騎士を目指していると便りが来た。
普段は質素な生活をしていて、最低限の物しか買わない。
酒は強く、どれだけ飲んでも酔うことはない。
浮いた話はないが、ずっと好きな人がいる。
だが、彼に吐かせようと多くの者が酒瓶を片手に突撃したが、全員寝かせられた。
部屋が綺麗に片付いているので、友人が頻繁に訪れる。その為、専用のグラスにボトル、その他雑多な物も気づいたら部屋に増えていた。
 
グラディウス・レイジ
26才。大柄の魔導騎士。
美貌の持ち主。恋多く、女も男もいける両刀だが必ず抱く方。
だが、どの恋人も長くは続かず、数年前から娼館を利用することが多い。
十代前半の騎士見習いの頃からアイルと友人で、全く性格も性質も異なるのに仲が良かった。
同室だった従騎士時代は部屋の掃除などはアイルがしてくれていたので、そこそこ綺麗な部屋だった。
現在、部屋はなかなかの腐海となっており、入れる者は誰もいない。
宿舎の大掃除の前には数名がアイルに、あの腐海をどうにかしてくれと泣き付いている。
近年、友人の部屋が居心地が良すぎて、俺ここに住んだ方が幸せでは? と思っている。
夜には部屋を追い返されるので、今度寝袋を持参しようと思っている。
最近友人の部屋に自分の物が増えてきている。
魔導に長けており、特に炎魔法に長けている。
固有魔法は無く、炎をつるぎに纏わせて戦うことが多い。
純粋な剣技も強く、騎士団最強を名乗る程だが、実際には友人のアイルが普通に強いので、彼と研鑽しているうちに腕が磨かれていった。
親友の恋愛対象が女性だと思い込んでいたので、いつかは彼が婚姻するだろうとぼんやりと思っていたが、なんとなくやだなぁと気が付けばアイルの部屋に入り浸っている。
酒は弱くはないが量を飲むと記憶が飛ぶ。アイルと飲むと大抵気が緩んで深酒をしてしまう。
ある時を境に、どうやら彼との関係を変えたようだった。

【あとがき】
物語をお読みいただきありがとうございました。

昨年ムーンライトノベルズにてこの物語を公開したところ、大変光栄な事に、たくさんの感想やレビューを頂くことができました。

本当に嬉しいことに、多くの方に読んでいただくことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
 
中でも感想を寄せて頂いたのが、『一番最初のグラディウスは彼のアイルとはもう会えないのだろうか』というご感想でした。

その言葉に、どうしたら一番最初のグラディウスを救う事が出来るのかと構想しはじめたのがこの『金鳴鳥の囀る朝に。』です。

金銀銅のそれぞれの鳥の名称は、最初は金と銀だけでは言葉の座りが悪いと、では人の願いを叶えるのが金ならば、逆に人に災いをもたらすのを銅としよう。と、文章を綴っていて良い塩梅と、そのぐらいの軽い気持ちで書いていたのですが、グラディウスを救うためにその何気なく置いていた言葉たちが生き始めて、これなら、彼らを救うことができると再びこの物語を綴り始めました。

ただ、この結末にするにはムーンライトノベルズ版と明確に変える必要がありました。
アルファポリスで公開する際に、タグを一つ変更しております。
人には容赦はないけれど、動物にだけは優しかった物語ですが、その部分だけ本当に申し訳ございません。

この物語はハピエン(ただし作者の概念による)と思って書いておりましたが、いかがでしたでしょうか。
読んでくださった方へ、この物語を心に留めてくださった方へ御恩を少しでもお返し出来たら幸いです。

願わくば、皆様のお心にそっと届くような物語であったらと望むばかりです。

銀鳴鳥をお読みくださった方、そして初めて銀鳴鳥をお読みくださった方。
本当にありがとうございました。
沢山の応援の言葉にここまで書ききる事が出来て幸いです。
 
それでは、最後にもうひとつだけ人物(鳥?)紹介のおまけを付けて、物語を閉じたいと思います。

願わくば、最後までこの物語を見届けていただきますようお願い申し上げます。


【魔鳥紹介】
金鳴鳥
金鳴鳥は人の願いを叶え、銀鳴鳥は人に希望を授け、銅鳴鳥は人に絶望を与える。
そう伝承に残る、魔石を餌とする魔鳥。
人の言葉を流暢に話す事が出来る。
狂おしい程に強く願う人間を人の理から外させ、業を背負わせることにより煮詰めた魔力を消費して願いを叶える魔鳥である。
『時を操る』固有魔法を有す男の力を増幅して、何度も彼の想い人を救うために時空を超えた。
ただ人の願いを叶えるに至った金鳴鳥は、最後には愛情を注いでくれた主と、主を救いたいと願った男の為に時空を超えて飛翔した。
金鳴鳥は願いを叶える存在の為、自身の願いを叶えることは出来ない。
けれども、男の願いを叶える為に、過去の自分に干渉し『身代わりとなって処刑される騎士』の本来ならば変える事の出来ない運命を変えた。
金と銀と銅、この三種の魔鳥はいずれも一つの鳥であることは知られていない。
銅鳴鳥は愛情を注げば銀鳴鳥に転ずるとの文献が残っているが、現在は一級害魔鳥指定として見つけ次第討伐対象となっている。
銀鳴鳥が人から蔑ろにされ傷つけられると羽の色が汚い銅色となり、人に害をもたらす魔鳥となる。
大切に大切に育てられた銀鳴鳥は金鳴鳥となり、人の願いを増幅して叶える魔鳥となる。
ただし、銅糸の羽を銀糸に変えるほど強く愛情を注いだ例は、未だ観測されていない。








 








 















『   の囀る朝に。』


 
 返事は、本当に小さな答えだった。
 
 赤くなったアイルを強く抱きしめると、うなじまでも赤く染まっていた。
 グラディウスはそれすら愛おしく感じる。
 ――あぁ、本当に俺が求めていた物は最初からここにあったのに。
 
 夢みたいだ、と。瞳が揺らいでいるアイルに口付けを落とそうとしたとき――


「ぶえええぇぇ」

 おっさんを絞めたような耳障りな鳴き声が部屋に響いた。
「へ?」
 
「ぶぇぇぇぇ!!」
「ひゃっ」
 鳴き声に、アイルが挙動不審になる。
「え、何の声?」
「ぶえええええ!!」
「ちが、違うんだ、これは、その……!!」
 
 声の鳴る部屋の隅に目を向けると、道具が置かれていた。
 そこから、響くのは濁声の酷く耳障りな音。

 アイルは素早く動くと、その道具の前に立って後ろを隠そうとする。
「何でもない! 何でもないんだ、少し喉の調子がおかしくて!!」
 嘘が下手にも程がある。生真面目か?
 なんてグラディウスは思いながら、寝台から降りてアイルの抵抗をぺりっと剥がして道具に被せられた布を少しだけ捲る。
 銅色に鈍くお世辞にも綺麗とは言えない尾羽が見える。
「その! この子は、違うんだ、その、違うんだ! 人を襲ったりは……」
 グラディウスが布をばさりと外すと鳥籠の中にぶくぶくと太った醜い銅色の鳥がいた。
「ぶええええ」


「銅……鳴鳥……?」
「あの、グラディウス、銅鳴鳥は一級害魔鳥指定されているのは、そのわかっている。もしこの子が人を襲うようなら僕が責任をもって……でも、この子は、人が怖くて、人に害されてこんな姿になってしまっただけで、その……」
「もしかして、七年前の……」
「その……あの品評会の日、遺骸を埋葬しようとしたら……微かに息があって……それで……。僕には、王子に……人に酷いことをされて、羽が濁ってしまったこの子が不憫に思えて……」
 魔鳥は大変ふてぶてしい顔で、ぶえぶえと鳴いている。
 
「俺が……毎回酒を飲んでも夜には部屋を追い出されるのは……朝にはこいつが鳴くからか……」
「ああ。昨日は、その……君が大変酔っていて、仕方なく……」
「ぶえええぇぇ」
 
 銅鳴鳥は腹が減ったのかアイルに餌を要求した。
「ふっ……ふっ……は……ははっ」
 グラディウスは何故か涙が零れ落ちた。
 泣きながら、笑っていた。
 
「おま、お前……本当にブサイクだな……美しい羽が自慢だったんじゃねーのかよ。美しいわたくしこそが正義なのですとか、ブラッシング強要してた……じゃねぇか……」
 遠い微かな記憶で、銀か金の美しい鳥が自身の羽を自慢していた様子が脳裏にぼんやりと浮かび上がる。
「こんな姿になってまで……」
「ぶええ」
 銅鳴鳥は不服そうに囀り、鳥籠に指を掛けて涙を流すグラディウスを軽く威嚇する。
「お前……こんな姿になっても……生きてくれていたのか。アイルの傍に居てくれたのかよ……」
「ぶえっ」
 当然だとばかりにぷっくりとした鳩胸を張る。
 
 美しい羽を失っても、あの願いを叶える魔鳥あいぼうは愛しい人の傍に居てくれたのだ。

「あの、頼む。グラディウス。後生だ。この子は僕が責任を持って……飼うから。その、通報しないでくれ……」
「ああ、わかっているよ」
 アイルがきゅっと銅鳴鳥を守るように鳥籠を抱きしめる。
 グラディウスに見せつけるように、銅鳴鳥はぎゅるぎゅるとアイルに擦り寄るように甘える。
 
 こいつは本当に“あの”魔鳥あいぼうに間違いないと、グラディウスは愛しい人をひっぺかす。
 これは俺のだと睨みつけると銅鳴鳥がせせら笑った。くそ、ムカつく。
「なぁ、こいつ、何食べるの?」
「え? 魔鳥図鑑に載っていた、魔物肉とか、銅塊とかを砕いて……」
「たっぷり魔石を喰わせてやるよ。きっと、愛情は足りているから、あとは転ずる為の魔力が必要なぐらいだろう」
「ぶえ!」
 
 アイルはグラディウスが銅鳴鳥に寛大な様子にほっと胸を撫でおろした。
 餌を催促するので、アイルは餌を匙にのせて銅鳴鳥に与えると、ぎゅるるっと甘えたように鳴いた。
「なぁ、こいつの名前なんていうの?」
「あの、銀の雫って意味なんだけど……」
 
 美しい響きの名前に、グラディウスはこのブサイクには勿体ねぇ、なんて笑うと銅鳴鳥が怒った鳴き声を上げた。
 アイルは愛しい者が二人もいる事に、目を細めて幸せそうに微笑んだ。
 
 銀鳴鳥の囀る朝は、きっとそう遠くない。
 
 
 男の願いは叶えられた。




『銅鳴鳥の囀る朝に。』

 ―完―
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