つもるちとせのそのさきに

弥生

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エイプリルフール小話

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※4/1にエイプリルフールネタとして書いたSSを加筆修正しました。

「ライ! 今日はどうやら公然と嘘がつける日のようだ!」
「え? 昨日、もう描かれることはないでしょう……さらば……エターナル……的(※)な事言ってませんでした?」
「そんなことよりも! 私がお前を騙してやろう!」
「はいはい」
(※ 3/31にムーンで最終話投稿した時、つもるに関してすべて書いたのでもう書くことはありません! と後書きで書いた翌日、舌の根も乾かぬうちにこれを書くという……。なお、現在あれから2万字程度加筆しています。エターナルとは?)



 騙してやろうと、ジーンが得意そうに胸を張る。
「昨日とうとうズッキーニ君375号が完成した!」
「まだあれつくってたの!?」
「実は早朝、お前のズッキーニに尿道ブジーを刺したら抜けなくなった!」
「まっ!? 待って!?!? 何してるの!!? 目覚めたら息子が痛くて尿結石できたかと思ってたんだけど!? 結石、痛い、治療で情報端末検索しちまったんだが!?」
「お前の新しい性癖を開拓しようかとしたら失敗したな!」
「うわ、まっまじで……と、取れないっ(涙目)」
「じゃーん! お詫びに今日は透け透けのいやらしい下着を着けているぞ!」
「すぐにひん剥く!」
「実はここにお前の子が!」
「………………………まじで?」
「(╹◡╹)」
「本当に………?」



『\コンニチハ/ズッキーニクン375ゴウダヨ//』
「しゃべる機能を搭載させてみた!」
「そんなオチだと思ったぜ……」
「ふふふ、騙されたな!」
「いや坊っちゃんならできそうとか思ってないですよまじで……」
「なんだ? ずいぶんとがっかりしているな」
「いや何でもないですよ……はは」
「まぁ、私なら遺伝子操作で作れるが」
「作れるんかい!!」
「なんだ欲しいのか?」
「その……………坊っちゃん似のかわいい子なら蜜月落ち着いたらいつかは……」
「任せろ! 追加オプションは目から破壊光線と尻から巨大化と口から溶解液、どれがいい?」
「お願いしますからオプション全部撤去で」




「いや本当に変なオプションつけられなくてよかった」
「全力で止めたからな。感謝しろよ」
「ははー、下僕カーストさいかそう様、性奴隷ズッキーニ様、雷様おとうさま
「てめぇこの野郎感謝してねーだろ」

 白い長髪に深紅の瞳、そして儚げにも見える美貌の青年を軽く小突く。
 にはっとまったく懲りてない笑みを浮かべた青年は、ジーンよりも長身で、俺よりは小柄に見える……二人の息子だ。
 見た目は儚げな美貌の青年なのに、中身は大層ふてぶてしく育った。
 ……誰に似たんだか。
「しかしジーンは聞けば聞くほど残念だな」
「まぁ、子どものお前には言われたくないだろうが、まぁ、類い稀なるアレだよ」
「残念可愛い?」
「………………まぁ、生涯を連れ添いたいと願うほどには」
「子どもの前で惚気ないでくんない? 引くんだけど」
「お前が最初に聞いたんじゃねーか!」
「あーあ、私もライたちみたいにイチャイチャできる相手が欲しいなぁ」
「まぁ、お前も俺たちみたいに死の概念からは逸脱しているしな。探したらどうだ。つがいはいいぞ~あいつと連れ添って途方もないほどの時を過ごしたが、今でもジーンのやらかしにわりと悲鳴をあげるからな。毎日が新鮮だ」
「直近だと昨日だよね、どうしたの?」
「俺の後ろにズッキーニ君3586号を突っ込もうとしたから返り討ちにした」
「にははっ安定だね。あーあ、どこかに『くっ、殺せ! お前みたいな下衆に身体を奪われるぐらいなら死んだ方がマシだ!』みたいに蹂躙されても涙目で抗う金髪姫騎士いないかな」
「ごふぉっっ、げほ、ごほっ」
「うーわ、汚っ」
「ちょ、待て、待て」
「『凌辱姫騎士マリアンヌの淫夢?』」
「待て! あの端末内の記録はジーンから取り上げた後にすべて粉々にバラしてノイズ加工して意味不明なところまでシャッフルして原型とどめないように数万のBit単位まで解体処置したはずなのになぜそれを!!」
「Bitレベルまで解体処置してあったノイズ混じりの記録の残骸って相当に知られたくないのかなって解読しただけだけど」
「無駄に天才! おいやめろそんな所はジーンに似なくていい!」
 やめろ! くっころ性癖のアーカイブ解読するなよ!! お父ちゃん泣くぞおら!!
 
「さすがにジーンみたいに全部繋ぎ合わせたりはしなかったよ。タイトルで候補絞って元をデータの海からサルベージしただけで。でも良かった……あれは正直いい趣味してるなって思った……」
「息子よ、頼むからそこを似ないでくれ」
「私のゴーヤが火を吹いたな」
「息子とシモの話したくないんだけど? やめてくれない?」
「にははっ息子と息子の話をするなって?」
 べちんと頭をわしゃわしゃする。おい、無駄にジーン似の儚い美青年なのに発言が残念すぎる。

「まぁ、あんたのズッキーニと私のゴーヤは置いておくとして」
「お前以外は話題にしてねーよ」
「なぁ、私はずーっと考えてきたんだけどさ。肉体を持たず精神だけの生命体で、このあまねくすべての世界は自分達の餌場だって思って油断している彼らにさ、絶望を与えてあげたらどんな声をあげるのかなって。ぞくぞくしないか? この星々の“管理者”ってやつの首を押さえて組敷いたらどんな良い声で泣くかなって。両親たちが勝ち得たこの星の未来は結局のところ、あいつらとの均衡を保つこと。勝ち負けで言えば負けていないってだけだろう? 自分達は神だってさ、思い込んでいる存在を地面に這いずり回してやったら、どんな気持ちだろうなって」
 ……赤い瞳がにんまりと笑む。

 ……あぁ、本当に。
 ジーンのような永遠に打ち込むことができる根性と、本物の化け物と呼べるほどの知性、俺と一対一さしで勝負してもとんとんなぐらいの天武の才さえ持ち合わせている。
 おまけに、性格はクソほどネジ曲がっているとくれば、どれほど厄介な相手かは親の俺がよく知っている。

 俺たちに成し得なかったことすらもできるだろうと思うほどには、厄介な人物に育った。
 ……相手にとっては、最悪なことに。

「敵は強いぞ? 途方もないほどに」
「永遠に近いほど、『支配できないものはない』って思い込んでいるのだろう? 無様に服従させるのが楽しみだなぁ~。なぁに、ちょいと遊びで時空転移装置とそれに耐えうる器は造った。ひとりでも行けるけど、せっかくなら玩具が欲しいかな」
 ……あいつらが文明を壊すのも、“それ”を作らせないためにだ。遊びでできる代物じゃないっていうのに。
「ね、あの二人を貸してよ。ジーンに似ている私に弱いんだよね~。すーぐ言うこと聞いてくれる」
尻穴提供者マイク狂信者リュウはどうぞどうぞ、好きに連れてけ」
 にははっと嗤う。
「ついでに、精神だけの生命体を器に閉じ込める装置も開発したんだ~。直に触れてなぶれるなんて、今までそんな刺激に触れたことのない生き物に、シナプス焼き切れるぐらいの刺激を与えたらどんな声で喘ぐかな?」
「…………」
 うわー、我が息子ながら本当にイイ性格してる。父さんドン引きだよ。
 でも存分に、くっ殺してくれ。
「……黒雷くろいかずちを持っていけ。お前なら使いこなせるだろ」
「お、ありがとう父さんライ
 俺たちの物語は終わった。
 ……次の物語は後世に手渡しても良いだろう。

「風は、自由に吹いて世界に満ちるものだ。大いに宇宙そらに羽ばたいてこい、風花かざはな
「ジーンは寂しがると思うから、任せたよライ」
「ま、いつまでも待っているから、存分に暴れてこいよ」
 風の戻る場所として、俺たちはここから見守ろう。
 狂人きぼうをこの星から送り出す。

 風花と呼ばれた青年は、風に舞い上がる白い雪の儚さとは裏腹に、強い意思をもった赤い瞳でにぃっと嗤う。

「神を克する下克上なる物語のはじまりはじまり、なんてね」


  ─完─
 



 此にて下克上なる物語、「つもるちとせのそのさきに」終幕にございます。
 最後までご覧いただき、ありがとうございました!
 



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