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第二章 光の子と闇の子
最後の町
しおりを挟む大きな声で家に入って来たシエルを、「ちょっとシエル! ごめんなさいね」と言って追いかけているラム。
「いいえ~、もういいですよ~!」
満面な笑みで灰の子を眺めているサイキは、のんきな声を出した。
「ねぇ! ご飯、いっぱい取って来た」
彼女の下へ駆け寄るシエルは、取って来たきのこをサイキに見せてほほ笑んだ。どうやらサイキへの警戒心は分かれたようだ。
「おや! いっぱいだねぇ~。もう人見知りは治ったのかい?」
サイキは、先ほどまで自分に警戒心を抱いていたシエルが笑顔で話しかけて来た事に驚いているようだった。
「サイキさんよかったら泊まってってくださいな」
ほほ笑んで話すラムとシエルが帰って来た事で、家の中の雰囲気は暖かいものになった。
彼女らを目にして、満足そうにほほ笑んだカイムは、料理の支度のため、水を汲もうと一人で出て行った。
カミナリもカイムに着いて行き、家の前の井戸から水を汲むカイムの横でゆらゆらと漂う。
「しかし、さすが光って呼ばれる女だ。闇を救い出そうとはね」
カミナリは大きくなった体をくねらせ、カイムに言った。
「あぁ。うわさ通りだ」
水を汲みながら、口にしたカイムは、どこかうれしそうだった。
木でできたバケツに水を汲み、家の中へ入って行くと、ラムとサイキ、シエルは台所で料理を作っていた。
「みてみてぱぱ! キラキラがご飯をくれたよ!」
シエルはカイムとカミナリに駆け寄り、うれしそうにもらった魚を持ち上げる。
「魚だ! うまそうだな!」
大きな声を上げたカミナリは、魚の周りをぐるぐると周り、シエルは、きゃっきゃとはしゃいで見せた。
「お土産にって魚を取って来てくれたんですって。シエル! キラキラじゃなくてサイキさんだよ?」
ラムが食材を刻みながら明るい声を上げた。
「だってキラキラしているんだもん」
シエルは首をかしげて言うと「灰の子は”光”が見えるんだな」とカミナリが口を開いた。
「サイキさん魚、ありがとうございます」
笑ったカイムは、水を手渡すと「シエルと座ってて?」とラムに言われ、魚を持ち上げてカミナリと遊ぶシエルを抱っこした。
持っていた魚をラムに渡したシエルは「カミナリと遊ぶー!」とカイムの腕の中で駄々を捏《こ》ねる。
「わかったわかった」
カイムは笑いながら言い、銀色の竜の背中にシエルを跨らせた。
「うわー! すごい! 高いー!」
シエルは大声で騒ぎ、カミナリの頭から生えている小さな角を掴んでバランスを取る。
「シエル! 重くなったな」
カミナリは頭の上ではしゃぐシエルに小言を言った。
闇の子を外に出す許可を得るためサイキは、各町を周っていた時、全てから許しを得たら、最後は灰の子の下を訪れようと決めていた。
妻のラムの隣で料理を手伝うサイキは、久々に訪れた心温まる癒やしの空間を味わっていた。
料理をテーブルに並べ、感激の声を上げる灰の子やカイム、それを見てうれしそうに席に座るラム、そして一番に魚を食べ始める黄金の竜。
サイキは眩しいほどの幸せな家庭に、目を細めてほほ笑む。最後に訪れたのが、彼らの元でよかったと、サイキは身に染みて思ったのだ。
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