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第4章 リュート君誘拐事件!?
11話 友好を深めましょう
しおりを挟む1週間程が経ち、今日からリオナやスールが住み込みで働くことになった。
2人には離れの一室がそれぞれ宛がわれ、荷物が運び込まれた。
少ない荷物だ。
荷運びに時間はかからなかった。
「「本日よりお世話になります」」
リオナとスールは同時に頭を下げる。
緊張や興奮からか、少し硬い。
「いいのよ。今日からよろしくね!リオナちゃんにスール君!」
「よろしくお願いします」
父様は仕事に行っているので、迎えたのは俺と母様だけだった。
お祖父様達は、今日王都にいる古い友人を訪ねている。
何でも5年ぶりの再会らしい。
俺を残して出掛けることをかなり渋っていたが、セルバさんに馬車に詰め込まれていた。
長い付き合いなだけに、セルバさんは容赦ない。
有無を言わせない笑顔だった。
まぁ、仕方ないけどね……1時間以上渋りに渋っていたし。
「後で兄様が来ますので、その時にまた紹介しますね」
兄様は今此処にいない。
今日は午前中は家庭教師が来るので、午後から離れを訪れると兄様から連絡を貰っていた。
「「はい」」
「ふふっ! レイ君とも仲良くしてね?」
母様は今日もご機嫌で楽しそうだ。
「こちらこそ、是非お願いします」
「お願いします」
スールに続いて、リオナも頭を下げた。
兄様か……この2人と仲良く出来んのかな?
兄様、腹黒いしな……少し不安だ。
「じゃあお昼の用意が出来たら呼びに行かせますので、それまで自由時間ですね。荷物の整理もあるでしょうし、人が必要なら使用人を頼ってください」
荷物の整理は先に終わらせた方が良いだろう。
俺はそう思って、2人にそう言った。
「はい、お気遣いありがとうございます」
「ありがとうございます、リュート様」
2人は頭を下げると部屋から出ていった。
「リオナちゃん達、レイ君と仲良く出来るといいねっ!」
「……ですね」
せめて、せめて、いがみあったりはしないでくれ……ドロドロは嫌だ。
俺の精神衛生上、よろしくないのだ。
俺は心の底から願った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
朝食が消化され小腹が空いた頃、時刻は丁度昼を指していた。
昼飯の準備が出来たので、使用人達にスール達を呼んできて貰った。
「片付けは出来ましたか?」
「はい、大方終わりました」
俺の質問にスールが答える。
「リオナさんは?」
「あと少しで終わるので、大丈夫です」
2人共、大方は片付いたようだ。
これなら予定通り、午後に兄様を紹介しても問題ないだろう。
「よかったです。手が必要になったら、何時でも言ってくださいね?」
「「はい」」
2人は頷く。
「よしっ! それじゃあ、お昼ご飯にしようか!!」
母様の言葉で、昼食が運ばれた。
昼食は和やかに進んだ。
ただ俺とスール達が話すというよりは、母様がスールやリオナに質問してり親バカ発言したりしていた。
俺との仲よりも、母様との仲の方が先に深まりそうで複雑だ。
「――それで、リュー君ったらねぇ」
「母様それくらいにしてください……恥ずかしいです」
まだまだ話続けようとする母様を、俺は苦笑いで止める。
……もう、慣れてきたけどね。
会う人、会う人にしてるし…………。
段々、お決まりのパターンと化している。
初めは抵抗があったのに、近頃慣れてきている自分がいる。
「えー! まだまだ一杯あるのよ?」
「……母様」
母様は話足りないらしく、不満そうだ。
「ふふっ、カミラ様はリュート様の事を、大変可愛がっていらっしゃるのですね」
そんな俺達のやり取りを見ていたスールが、微笑んで言った。
お? 本当に笑ってる。
ここに来て初めてじゃないか?
俺が見る限りスールはいつもの下手くそな愛想笑いでなく、本当に笑みを浮かべているように見える。
「……母様、笑われてますよ?」
俺もつられて笑顔になる。
「むぅ。スール君もすぐに分かるわ! リュー君は可愛いもの!!」
母様は自信満々に告げる。
「そうですね」
スールは、更に笑みを深めて頷いた。
リオナも隣で、コクコクと頷いて同意を示す。
へ、返答に困る!!
このいい雰囲気の中、否定も肯定もしにくい!?
俺は兄様が来るまで、赤くなった顔を隠しながら、ひたすら昼食を黙々と食べた。
慣れたと思ったがまだまだのようだった。
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