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episode.01
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シュナにとって、自分の恋が叶うことが無いと言うとこは千年前から変わらないデフォルトである。
自分の代でそれが突然覆ることなど考えられるはずも無い。
のだが………。
「やっぱりここにいた」
「っ……」
ため息混じりの呆れたような声がシュナとセレネの耳に届く。シュナはドキッと肩を竦め、セレネはもう来たのかとため息を吐いた。
「陛下が探しているよ。戻ろう?」
「あの話しをしないと言うなら戻るわ」
「う~ん………」
フンっと子供のようにそっぽを向くセレネに困り顔のロウェルは、その困り顔を今度はシュナに向け、「説得してくれない?」と目で訴えかけてくる。
そんな視線を感じたシュナは、期待には応えられない、とぎこちなく目線を逸らした。セレネがシュナの言う事を聞くわけがないのだ。
そんな様子を知ってか知らずか、セレネは強気な笑みを浮かべた。
「お前だって本当は私が逃げ出して美味しいと思っているんでしょう?シュナに会えるかもしれない口実が出来るんだから」
「…………」
ロウェルは表情こそ笑みを浮かべているが言葉は何も出てこない。時に無言は肯定を表すと言うのに。
そんな反応をされるとシュナの心臓はドキンドキンと大きく警鐘を鳴らす。ダラダラと冷や汗を流すシュナをチラリと盗み見たロウェルは、再びため息をついた。
「僕に気を使う必要はないよ。僕が彼女に会いに来る理由なんて、どうにでもなるからね」
「折角そのうちの一つを作ってあげたのだから、もう少しゆっくりしても良いんじゃない?」
「なら、僕は君が迷惑をかけた謝罪と言う名目でゆっくりして行くよ。だから君は戻るべきだ」
「あなたは私の側近なのに、お父様の肩を持つのね」
「そう言うわけじゃないけど、女性を口説き落とそうと言うのに他人がいては邪魔でしょ?」
「他人!?引き合わせたのはこの私なのよ!?」
「偶然でしょ」
やいのやいのやいの。
ダラダラダラダラ。
下着が肌に張り付くほど、冷や汗をかいているシュナだが、その会話に割って入ることも、この場から逃げ出す事も出来ずにいた。
この際なんでも良いからこの居心地の悪い時間が早く終わってくれと願っていると、ロウェルの視線がシュナをとらえた。
「こ・の・お・方・が・仕事の邪魔をしたよね。ごめんね」
「い、いえ、それ程でも……」
「ちょっと!私が全部悪いみたいに言わないでよ!」
なおも、ぎゃいぎゃいとセレネは騒がしくしていたが、そんな事は気にならない程に心臓の音がうるさかった。嬉々たる感情が顔に出ないように気をつけてはいるが、熱が集まってきているのはどうにも出来ない。
セレネとロウェル、この場にいてどちらが仕事の邪魔になるかと言えばまず間違いなくロウェルだ。同じ空間にいて、彼がもしこちらを見ていたらと思うと体が思うように動かない。
どれだけ良く繕っても、所詮はただの魔導士に過ぎないのに、少しでも良い印象でありたいなどともがいてしまう。
「後ほど改めて謝罪をさせて欲しいんだけど」
「お、お気遣いなく………」
改めて来られても困る、とシュナがジリっと一歩身を引いたのを見て、ロウェルは困ったように笑みを浮かべた。
「甘いものは好きだったよね?新しく出来た店で人気のパネットーネがあるらしいんだけど、もう食べた?」
「……パネットーネ…」
涎こそ垂らさなかったが、ポツリと漏れ出た声は涎を垂らしたも同然である。ハッとして口元を抑えても後の祭りだ。ロウェルは満足そうに微笑みをこちらに向けていた。
「じゃあ、それを約束しよう」
「っ!?!?」
だらんと垂れ下げていたシュナの小指がロウェルの小指に絡め取られ、キュッと結ばれる。顔に集まっていた体の熱は今度は小指にドッと集まり、思わずギャーと叫びそうになった。
ユビキリゲンマンと言う魔法にも満たない呪文で制約した事に満足した様子のロウェルは、屈めていた腰をスッと立てた。
「さあ、戻ろう。陛下が待ってる」
セレネは未だ不満そうにむくれているが、自分の立場もきちんとわきまえている。大袈裟にため息を吐きながらもロウェルの後に続いた。
「下心しかないけれど、あなたもその気なら別に良いんじゃないの?」
去り際に耳元で囁いたセレネの言葉に、シュナはブンブンと全力で首を振った。
輪廻の魔女の恋は叶わない。千年変わらなかった事実だ。
好きな人に言い寄られる事など、想定外も想定外だし、どうしたら良いかなんてこれっぽっちもわからない。
好きな人と結ばれない胸の痛みには耐えられるが、それ以外は耐えられない。死んでしまう。
シュナの顔は真っ赤だった。
自分の代でそれが突然覆ることなど考えられるはずも無い。
のだが………。
「やっぱりここにいた」
「っ……」
ため息混じりの呆れたような声がシュナとセレネの耳に届く。シュナはドキッと肩を竦め、セレネはもう来たのかとため息を吐いた。
「陛下が探しているよ。戻ろう?」
「あの話しをしないと言うなら戻るわ」
「う~ん………」
フンっと子供のようにそっぽを向くセレネに困り顔のロウェルは、その困り顔を今度はシュナに向け、「説得してくれない?」と目で訴えかけてくる。
そんな視線を感じたシュナは、期待には応えられない、とぎこちなく目線を逸らした。セレネがシュナの言う事を聞くわけがないのだ。
そんな様子を知ってか知らずか、セレネは強気な笑みを浮かべた。
「お前だって本当は私が逃げ出して美味しいと思っているんでしょう?シュナに会えるかもしれない口実が出来るんだから」
「…………」
ロウェルは表情こそ笑みを浮かべているが言葉は何も出てこない。時に無言は肯定を表すと言うのに。
そんな反応をされるとシュナの心臓はドキンドキンと大きく警鐘を鳴らす。ダラダラと冷や汗を流すシュナをチラリと盗み見たロウェルは、再びため息をついた。
「僕に気を使う必要はないよ。僕が彼女に会いに来る理由なんて、どうにでもなるからね」
「折角そのうちの一つを作ってあげたのだから、もう少しゆっくりしても良いんじゃない?」
「なら、僕は君が迷惑をかけた謝罪と言う名目でゆっくりして行くよ。だから君は戻るべきだ」
「あなたは私の側近なのに、お父様の肩を持つのね」
「そう言うわけじゃないけど、女性を口説き落とそうと言うのに他人がいては邪魔でしょ?」
「他人!?引き合わせたのはこの私なのよ!?」
「偶然でしょ」
やいのやいのやいの。
ダラダラダラダラ。
下着が肌に張り付くほど、冷や汗をかいているシュナだが、その会話に割って入ることも、この場から逃げ出す事も出来ずにいた。
この際なんでも良いからこの居心地の悪い時間が早く終わってくれと願っていると、ロウェルの視線がシュナをとらえた。
「こ・の・お・方・が・仕事の邪魔をしたよね。ごめんね」
「い、いえ、それ程でも……」
「ちょっと!私が全部悪いみたいに言わないでよ!」
なおも、ぎゃいぎゃいとセレネは騒がしくしていたが、そんな事は気にならない程に心臓の音がうるさかった。嬉々たる感情が顔に出ないように気をつけてはいるが、熱が集まってきているのはどうにも出来ない。
セレネとロウェル、この場にいてどちらが仕事の邪魔になるかと言えばまず間違いなくロウェルだ。同じ空間にいて、彼がもしこちらを見ていたらと思うと体が思うように動かない。
どれだけ良く繕っても、所詮はただの魔導士に過ぎないのに、少しでも良い印象でありたいなどともがいてしまう。
「後ほど改めて謝罪をさせて欲しいんだけど」
「お、お気遣いなく………」
改めて来られても困る、とシュナがジリっと一歩身を引いたのを見て、ロウェルは困ったように笑みを浮かべた。
「甘いものは好きだったよね?新しく出来た店で人気のパネットーネがあるらしいんだけど、もう食べた?」
「……パネットーネ…」
涎こそ垂らさなかったが、ポツリと漏れ出た声は涎を垂らしたも同然である。ハッとして口元を抑えても後の祭りだ。ロウェルは満足そうに微笑みをこちらに向けていた。
「じゃあ、それを約束しよう」
「っ!?!?」
だらんと垂れ下げていたシュナの小指がロウェルの小指に絡め取られ、キュッと結ばれる。顔に集まっていた体の熱は今度は小指にドッと集まり、思わずギャーと叫びそうになった。
ユビキリゲンマンと言う魔法にも満たない呪文で制約した事に満足した様子のロウェルは、屈めていた腰をスッと立てた。
「さあ、戻ろう。陛下が待ってる」
セレネは未だ不満そうにむくれているが、自分の立場もきちんとわきまえている。大袈裟にため息を吐きながらもロウェルの後に続いた。
「下心しかないけれど、あなたもその気なら別に良いんじゃないの?」
去り際に耳元で囁いたセレネの言葉に、シュナはブンブンと全力で首を振った。
輪廻の魔女の恋は叶わない。千年変わらなかった事実だ。
好きな人に言い寄られる事など、想定外も想定外だし、どうしたら良いかなんてこれっぽっちもわからない。
好きな人と結ばれない胸の痛みには耐えられるが、それ以外は耐えられない。死んでしまう。
シュナの顔は真っ赤だった。
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