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episode.05
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「ついに僕のところにまで話が来るくらいにね」
「……………」
「…………どうかした?」
顔を覗き込まれ、シュナは我に返った。
「ああ、えっと…すみません」
「大丈夫?やっぱり少し疲れているんじゃない?連れ出したりしてごめんね」
「いえ、大丈夫です」
痛いほどに鼓動する心臓を誤魔化すように、シュナが笑みを浮かべると、ロウェルもいつもの穏やかな表情に戻る。
「さっきの話だけど、僕が選ばれる事はないよ」
「………そうでしょうか?中々良い縁だと思いますけど」
ロウェルの生家は王都からは離れているが爵位のある家柄だ。武人としての実力もあるし頭も回る。何より、側近としてセレネとは良い信頼関係を築いている。
いくらか歳の差があるのはあるが、反対する者は相手が誰であれ反対するものである。
考え込んでいるシュナを見て、ロウェルは困ったように眉尻を下げた。
「僕には好きな子がいるし、それはセレネも知っているから」
「……………」
「君にも、伝えているはずなんだけどね」
「………えーっとー…」
タラリ、と汗が背中を伝う。
分かっている。彼が自分に対して言葉や態度に表すそれが、『人たらし』のそれでは無いかもしれないという事には気づいている。
だがここで、自分も好きだと伝えるわけにはいかない。なぜなら伝えたら【両思いになってしまう】のだから。伝えなければセーフだろう。
シュナは千年恋焦がれてきた。ずっと片思いを募らせていた。それしか知らないのだ。
好きな人から同じ気持ちを返されるのは、千年前の1度しか知らないし、あの時も結局は離れ離れになり、共に人生を歩む事は出来なかった。
記憶する者、輪廻の魔女の恋は叶わないものだ。叶えてはいけないとすら思える。
輪廻の魔女と共にならない事が、彼の幸せに繋がる。
何より、両思いという状況にシュナが耐えられない。
話題を間違えたなぁ、と思いつつ「はは…」と乾いた笑いしか返せないシュナを、ロウェルは余裕そうな笑みを浮かべながら見下ろす。
「着いたよ」
「!?」
ふと足を止めたロウェルにつられて、シュナも顔を上げた。新しく出来た人気店なだけあって、夕方だと言うのに数人の列が出来ている。
シュナとロウェルはその最後尾に並んだ。
「本当は立場とかコネを使って予約をしようかと思ったんだけどね」
「い、いえ…。それは、不公平なので」
「そう言うかなと思ってね。それに、並んだ方が君と長く一緒にいられる」
「…………」
勘弁してくれ、と心の中で叫ぶが誰にも届く事は無いだろう。何を話しても、シュナにとって都合の悪い方に話しが進む気がしてならない。
それでも沈黙に耐えられず、シュナはスッと息を吸った。
「あ、甘い物、お好きなんですか?」
「うーん。普段は食べない事も無いけど、特別好きって訳でもないかな」
「そう、ですよね」
自分は甘いものが好きで、彼はそれほどでも無い。それは千年前から何度恋に落ちても変わらない。
自分のものでは無い、けれども自分が持つ過去の記憶の懐かしさに思わず笑みを浮かべていると、ロウェルは少し屈みながらシュナの顔を覗き込んだ。
「前に言ったことがあったっけ?それとも誰かに聞いた?」
「………え?」
「そうですよね、って。僕の好みを知ってるみたいだったから」
「………………あ」
ドキンと心臓が大きく大きく鼓動する。前世の記憶だと言って変に思われたくもないし、かと言って自分で調べた変態だとも思われたくはない。
シュナは両想いになるのは耐えられないが、かと言って嫌われるのも耐えられない。
だから遠くから見守っているくらいがちょうど良い距離感なのに!!と誰にも訴えられない思いが込み上げてくる。
が、そんな事を考えている場合では無いと、シュナは混乱する頭をフル回転させた。
「お、男の人はあまり甘い物が好きではないのかと…」
「人によるんじゃない?」
「そ、そうですよね……あはは」
そんな苦し紛れの言い訳では逃しては貰えない。
「過去の男がそうだった、とか?」
「!?!?!?」
シュナにとって過去の男とはつまり、千年前に恋が始まった時から今に至るまで、その魂が宿った男たちの事を指している。
それを指摘されたのかと驚いて反射的に目を見開いてしまったシュナの変化をロウェルは見逃さない。
小さくため息を吐きながら、ロウェルはようやくシュナから視線を逸らした。
「なるほどね」
「……………あの…?」
「何でもないよ」
「………………」
何でもないと言われたら、それ以上踏み込むことは出来ない。
困ったシュナが前を確認すると、入店まであと1組に迫っていた。
「……………」
「…………どうかした?」
顔を覗き込まれ、シュナは我に返った。
「ああ、えっと…すみません」
「大丈夫?やっぱり少し疲れているんじゃない?連れ出したりしてごめんね」
「いえ、大丈夫です」
痛いほどに鼓動する心臓を誤魔化すように、シュナが笑みを浮かべると、ロウェルもいつもの穏やかな表情に戻る。
「さっきの話だけど、僕が選ばれる事はないよ」
「………そうでしょうか?中々良い縁だと思いますけど」
ロウェルの生家は王都からは離れているが爵位のある家柄だ。武人としての実力もあるし頭も回る。何より、側近としてセレネとは良い信頼関係を築いている。
いくらか歳の差があるのはあるが、反対する者は相手が誰であれ反対するものである。
考え込んでいるシュナを見て、ロウェルは困ったように眉尻を下げた。
「僕には好きな子がいるし、それはセレネも知っているから」
「……………」
「君にも、伝えているはずなんだけどね」
「………えーっとー…」
タラリ、と汗が背中を伝う。
分かっている。彼が自分に対して言葉や態度に表すそれが、『人たらし』のそれでは無いかもしれないという事には気づいている。
だがここで、自分も好きだと伝えるわけにはいかない。なぜなら伝えたら【両思いになってしまう】のだから。伝えなければセーフだろう。
シュナは千年恋焦がれてきた。ずっと片思いを募らせていた。それしか知らないのだ。
好きな人から同じ気持ちを返されるのは、千年前の1度しか知らないし、あの時も結局は離れ離れになり、共に人生を歩む事は出来なかった。
記憶する者、輪廻の魔女の恋は叶わないものだ。叶えてはいけないとすら思える。
輪廻の魔女と共にならない事が、彼の幸せに繋がる。
何より、両思いという状況にシュナが耐えられない。
話題を間違えたなぁ、と思いつつ「はは…」と乾いた笑いしか返せないシュナを、ロウェルは余裕そうな笑みを浮かべながら見下ろす。
「着いたよ」
「!?」
ふと足を止めたロウェルにつられて、シュナも顔を上げた。新しく出来た人気店なだけあって、夕方だと言うのに数人の列が出来ている。
シュナとロウェルはその最後尾に並んだ。
「本当は立場とかコネを使って予約をしようかと思ったんだけどね」
「い、いえ…。それは、不公平なので」
「そう言うかなと思ってね。それに、並んだ方が君と長く一緒にいられる」
「…………」
勘弁してくれ、と心の中で叫ぶが誰にも届く事は無いだろう。何を話しても、シュナにとって都合の悪い方に話しが進む気がしてならない。
それでも沈黙に耐えられず、シュナはスッと息を吸った。
「あ、甘い物、お好きなんですか?」
「うーん。普段は食べない事も無いけど、特別好きって訳でもないかな」
「そう、ですよね」
自分は甘いものが好きで、彼はそれほどでも無い。それは千年前から何度恋に落ちても変わらない。
自分のものでは無い、けれども自分が持つ過去の記憶の懐かしさに思わず笑みを浮かべていると、ロウェルは少し屈みながらシュナの顔を覗き込んだ。
「前に言ったことがあったっけ?それとも誰かに聞いた?」
「………え?」
「そうですよね、って。僕の好みを知ってるみたいだったから」
「………………あ」
ドキンと心臓が大きく大きく鼓動する。前世の記憶だと言って変に思われたくもないし、かと言って自分で調べた変態だとも思われたくはない。
シュナは両想いになるのは耐えられないが、かと言って嫌われるのも耐えられない。
だから遠くから見守っているくらいがちょうど良い距離感なのに!!と誰にも訴えられない思いが込み上げてくる。
が、そんな事を考えている場合では無いと、シュナは混乱する頭をフル回転させた。
「お、男の人はあまり甘い物が好きではないのかと…」
「人によるんじゃない?」
「そ、そうですよね……あはは」
そんな苦し紛れの言い訳では逃しては貰えない。
「過去の男がそうだった、とか?」
「!?!?!?」
シュナにとって過去の男とはつまり、千年前に恋が始まった時から今に至るまで、その魂が宿った男たちの事を指している。
それを指摘されたのかと驚いて反射的に目を見開いてしまったシュナの変化をロウェルは見逃さない。
小さくため息を吐きながら、ロウェルはようやくシュナから視線を逸らした。
「なるほどね」
「……………あの…?」
「何でもないよ」
「………………」
何でもないと言われたら、それ以上踏み込むことは出来ない。
困ったシュナが前を確認すると、入店まであと1組に迫っていた。
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